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【なぜ細胞培養コーヒー?】コーヒーの世界は変わるのか❗❗

(1) コーヒーを取り巻く環境

我が国でも多くの人達に日頃から愛好されているコーヒーはどこで作られているのか、皆さんご存知でしょうか?

世界のコーヒー豆の生産量国別ランキングは以下の通りです。

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引用:media.drip-pod.jp

1位はブラジルですね。

世界市場ではコーヒーの年間売上高は800億ドルを超えていて、石油に次ぐ巨大な国際的貿易商品で、年間で世界で消費されている量は約20億杯と言われています。

こんなにも世界中の人々に愛好され、大量に消費されているコーヒーですが、生産面で問題が生じています。

気候の世界的温暖化現象でコーヒー農園の生産性が低下して、農家は栽培面積を増やす必要に迫られていて、これまで以上に広大な熱帯雨林の伐採による土地開墾が求められています。

これらの熱帯雨林の木を伐採することにより、植物による二酸化炭素 (CO2) の吸収が減少し、温室効果ガスの増加に歯止めがかからない状況を招いています。

1885年以降世界の気温は右肩上がりに上昇し続けています。

このまま地球温暖化が進行すると21世紀末の日本では1年のうち約100日が日中の気温が30℃以上の真夏日となり、海面上昇により沿岸地域や小さい島々は水没すると危惧されています。

あのSF作家小松左京氏の著書「日本沈没」もあながち夢物語でなくなる恐れすら感じます。

さらに、降水量の分布が不安定になり、世界各地で洪水と干ばつのリスクが高まり、農作物の生産にも影響が出て、食料不足になる危険性も指摘されています。

世界中で愛飲されているコーヒーが世界の気候変動や食料事情に大きな影響を与えかねない大きな要因となって来ているのです。

(2) 培養コーヒーがペトリ皿 (シャーレ) の中で出来る時代⁉

時事ドットコムの2021年11月15日記事によるとフィンランドでコーヒーが細胞培養で出来るとの紹介がありました。

上述のように多くの人々の嗜好品であるコーヒーがまかり間違えば環境破壊、地球温暖化を引き起こす一要因となっていることから、環境破壊を回避できる方法が模索されました。

フィンランド技術研究センターで植物バイオ技術チーム (VTT研究チーム) を率いているヘイコ・リッシャ―氏はバイオリアクター (生化学反応装置) の中で温度や光と酸素の量を綿密に管理された上でコーヒーノキの細胞から培養されたものからコーヒーを作製することに成功したと発表しました。

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foodtech-japan.comの2021年10月14日記事 (投稿者:佐藤あゆみ) によると、コーヒーノキの細胞を培養し、栄養成分を含んだバイオリアクターで増殖させたところ、白色のバイオマスが出来上がり、これを乾燥させ焙煎するとコーヒー粉末のような焦げ茶色になったとしています。

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この培養方法は基本的には動物細胞から培養肉を作る方法を用いていますが、動物細胞を表面に付着させる必要があるのに対して、植物細胞では培地で浮遊して自由に成長するためスケールアップも簡単です。

この培養コーヒーを焙煎した粉からは通常のコーヒーと全く同じ方法でコーヒーを入れることが出来、苦みはやや少ないものの味も香りも本物のコーヒーのようだったとのことです。

このフィンランドのVTT研究チームから遡るところ40年以上前の1974年に植物細胞の懸濁培養によるコーヒー生産に関する研究論文をP.M.Townsley氏が発表していますが、より商業化に近づけたと言う意味で、今回のフィンランドのVTTチームの成果は特筆すべきものと言えます。

ヨーロッパで細胞培養によるコーヒーを販売するためにはEUで新規食品として承認される必要があります。

リッシャ―博士は更に生産を拡大し、許認可を得るまでには4年かかるとみています。

環境問題を克服するために検討された今回の培養コーヒーの商業化が実現すると、コーヒー愛好者にとっても新たな選択肢となるに違いありません。

(3) コーヒーの主成分 カフェインにまつわる話

コーヒーのもう一つのリスク:カフェイン中毒

コーヒーの成分 カフェイン (Caffeine)カフェインはコーヒーの最も有名な成分で、ドイツ語のコーヒーにあたるカッフェ (Kaffe) を語源としています。

コーヒーの苦みはカフェインに由来していて、私も30年以上前に国際学会参加のためブラジルを訪問したことがあり、サンパウロの空港に降り立った時、空港喫茶でエスプレッソを飲んだことを覚えていますが、とにかくその苦さに閉口しました。

カフェインには中枢神経を興奮させる作用を有していて、世界で最も広く使用されている精神刺激剤です。

カフェインにはアデノシン受容体に拮抗することで覚醒作用、解熱鎮痛作用、強心作用、利尿作用を示します。

人体は日中活動することでエネルギー源であるATPが消費され、睡眠誘導作用のあるアデノシンが夜になると蓄積して眠たくなるわけですが、カフェインはアデノシン受容体に結合し、アデノシンの働きを抑えることで脳を覚醒させる作用を示します。

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カナダ保健省発表では健康に影響のない1日あたりのカフェイン摂取量は健康成人で400mg、妊婦で300mgとされています。

コーヒー200mLには80~100mgのカフェインが含まれていますので、健康成人でも1日3~4杯までとすることが推奨されます。

カフェインの覚醒作用は疲労などの原因を除去しているわけでないため、カフェインの作用が切れると頭痛、集中力の低下、疲労感などが現われて来ます。

推奨量を超える量のカフェインを漫然と摂取し続けると依存に陥りやすくなり、一定量を超えると急性中毒症状を呈します。

急性中毒は体重60kgの人を例に取ると、1時間以内に390mgで半数が、1020mgで全数が急性中毒になります。

致死量は一般的に5000mg~10000mgと言われていて、1杯200mLのコーヒーを飲む場合、9杯でほぼ確実に急性中毒となり、40杯飲むとかなり致死量に近くなります。

カフェインの中毒症状は、吐き気、手足のしびれ、動悸、悪寒、意識消失、心肺停止などで、救急搬送しないと非常に危険な状態に陥ります。

(引用:ココカラクラブより)

この他、第3類医薬品として取り扱われているカフェイン含有錠剤は安易にサプリメント感覚で服用すると急性中毒量に達する危険性もあり、用法用量をきちんと守るように薬剤師から適切な指導を行う必要があります。

また、最近はエナージードリンクを飲む人が増えていますが、製品によっては1本160mgのカフェインを含有するものもあり、過剰に飲まないよう注意が必要です。

エナージードリンクの過剰摂取によるカフェイン中毒が話題となっていますが、最近は欧米でアルコールをエナージードリンクで割ったエナージードリンク割りが人気を集めていて、非常に危険であると警告されています。

アルコールとエナージードリンクを同時に摂ると、アルコールの吸収率が上がり、更にカフェインの覚醒作用が酔いの感覚を麻痺させるため自分の酔いの程度が自覚できなくなり、急性アルコール中毒となることも多発しているようで極めて危険な状態となるため避けなければいけません。

カフェインは合法的な薬であるがゆえに大きな危険性を伴っていることをよく理解しておくことが必要です。



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