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美容室は数あれど

このところ美容室が定まらなくて、思い悩んでいました。
会社を辞めてから、ヘヤーカラーにいそしんだ私は、赤のメッシュ、半分グリーン、ブルーと、4ヶ月に一回位のペースで、まるでカメレオンのように色を変えていました。
退職する前およそ15年間私はセルフカットだったんです。
そこに至るにはいろいろとあったのですが、ベリィショートのオンザ眉毛だったので、すきばさみ一本でなんとかなります。
15年もやってると慣れたもので、後ろなんか見なくても手ざわりでわかりました。  カラーをはじめてからは、近くのショッピングモールの美容室にいっていました。
最初の担当は20代後半の女性で、聞き上手でちょっとしたニュアンスも、サッとわかってくれる子でした。
とにかく話やすくて、時間のかかるカラーも楽しく過ごせるので、いい担当者に巡り合えてよかったなと、思っていました。

ところが去年の秋頃、妊娠したと言うのです。
おめでたいことですが、二人目だから暫く復帰は、無理でしょう。
12月を最後に彼女は産休に入りました。
引き継いだのは同期だという男の子でした。
よく喋る子で、話しやすいのですが、人の話はあんまりちゃんと聞いていない感じで、どうもニュアンスが伝わりません。
3月にはじめてお願いした時も、ちょっとアニメのフィギュアみたいに、両サイドが張り出して、思った以上にブルーが広範囲でした。
両サイドの張り出しは自分ではさみを入れて直しました。
でもどうしても広範囲のコバルトブルーが気になって仕方ないので、初めて修正をお願いしました。
彼は快く手直ししてくれて「また気になったらいつでもきて下さい」って言われたけど、まあまあの所におさまりました。

そして今月、そろそろカットしたいなと思うのですが、まだブルーもキレイに残ってるしと、考えあぐねていました。
それでも、ショッピングモールにいった時、予約だけしておこうかなと、立ち寄ってみたんです。
彼の姿は見当たらず、スタッフが少ないのか、忙しそうです。
そこで私は見つけてしまいました。
かなりのワガママボディを派手なアロハシャツにつつんで、汗拭きタオルをもって、忙しく動いている人です。
あれは新人じゃあない。  年の頃なら店長クラス?
ちょっと気持ちがひるんで、その日は予約しないで帰りました。

そして昨日友人とお茶をしたので、美容院予約したいからと、ちょっと付き合ってもらいました。
この間よりは抑え目の色のアロハシャツをはちきれそうにして、彼がやっぱり忙しそうにしていました。  担当の彼は今日も見当たりません。
私は友人の袖をひっぱって、店の前を通り抜けました。
ちょっと無理です。
美容師さんはやっぱり清潔感は必須です。
願わくばスッとして、ほどよくスタイリッシュであってほしいと思うのは贅沢でしょうか。

こうして、この町は駅まで歩く間に、10件程、メイン道り以外もいれたら美容室だらけなのに、またもや美容室難民となりました。
技術もさることながら、料金、担当者、センスとちょうどいい感じのところに出会うのは大変です。

ここで思い出したんです。  セルフカットになる前に行っていた美容院です。
かれこれ20年位行ってないから、担当の人はいないだろうと思いました。
とりあえずTELして、指名はなしで夕方5時にカットのみで、その日のうちに予約がとれました。
店に着くと、スタッフは40代位の男性二人と、20代と思しきスタイリッシュな女性との3人で、以前のお店の雰囲気よりも、落ち着いた感じでした。
40代の男性が笑顔で迎えてくれました。
名前とか書いていると、ふっと出迎えてくれた彼は、もしかしてと思って
「違ってたらごめんなさい。20年位前の・・・・」って聞いてみたら、18年前の担当者でした。
予約のとき、メンバーカードあるか聞かれて、随分前だからないです。
と言ったので、名前で調べたみたいです。
2006年の6月にいったのが最後みたいでした。
現在は48才になられて、大人になられていました。
18年前でした。  しかも移動を経て、今月この店に舞い戻ったみたいです。   不思議なご縁です。
彼はそのころ、超がつくほど売れっ子でした。
彼の方は私が突然来なくなった経緯も想像したのか、自分が担当していいのかと思ったみたいでしたが、そんなことは昔のことです。
「あの頃凄くお客さんついてたから、ブイブイ言わせてたよね。それがいやで私はこなくなったんだよ」というと本人も自覚していたみたいです。
「調子くれてるなって」「はっきり言うお客さんだな  だから今日自分が担当でいいのかなと思ったんです」というので「カットのセンスいいからラッキーって思ってるよ」と久々の会話ははずみ、18年を経ても彼のカットのセンスは流石でした。 『BANANA FISH』のアッシュ・リンクスのスクリーンショットみせてこんな感じでとお願いしました。   家に帰っても鏡みてはニヤニヤしちゃいます。

彼は美容師として、年をとっていくことを恐れていました。
そういう年齢になったのですね。
道ゆく人もカラーとかステキだと、さりげなく隠し撮りして、後で確認するって言っていました。
ヘヤーメイクが好きなんですよね。  その探求心を忘れずにステキに年を重ねていただきたい。  私はブイブイ言わせてた頃より好きですよ。
今だから言えるんだけど、年をとることは、そんなに悪くないですよ。
18年前私は、今の彼と同じ48才でした。
身体の変化する頃だし、老いてゆくことに不安を感じるお年頃です。
でも、そういう不安も感じて、人の不安にも寄り添えます。
帰りのお見送り、深々と頭さげられて、また今度は指名で来なきゃと思いました。  名詞にはマネージャーとなってたので、指名料高そうですね。

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