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ギター・ソロもイントロも聴かなくても満足できる曲(Part.1)

はじめに


かつてDJクール・ハークはドラム・ブレイクの部分が一番クラウドが喜ぶことに気づき、2台のターンテーブルを使ってブレイク部をつなぎ合わせ、ヒップ・ホップを誕生させたと言われている。(因みに上の画像はグランドマスター・フラッシュ)

時は流れネットやSNSの発展により時間に追われる現代人は、1曲はおろか、ギター・ソロやイントロもすっ飛ばして最も盛り上がる部分、すなわち「サビ」だけを求め音楽を聴くようになり、それに合わせミュージシャンたちもイントロを削ったりBPMを上げたり転調を多用して曲を作り、アレンジを行うようになったと言われている。

そんな現代に迎合するべく「この曲が好き」「このアルバムが好き」ではなく

「ある曲のこの部分が好き」
「ここのギターが最高!」

という刹那を集めたポスト。

やべっちがいう所の「サブいぼ」
ワッキーがいう所の「ワッキーチョイス」
堂島孝平がいう所の「き、ぜ、つ、し、ちゃ、う」

っていうポイント。

順不同だが、まずは自分が生涯の1枚として挙げても問題ないアルバムの中の曲から選んでみた。
「好き」の基準は極私的なものです。
表記のタイムは下部に貼り付けたspotifyのプレイリストに準じています。


選曲


James Brown / Give It Up Or Turnit A Loose(4:58〜)


何ならこの企画、全部JBでもいいんだけどとりあえずこの1曲から。
ジョニー・グリフィスのコンガ独奏から御大の「クライド!」のコールでクライド・スタブルフィールドのドラムが被さり、「ブーツィ!」のコールでベースが入ってくる瞬間が悶絶。
JBお得意の「メンバーの名前呼び」だが、それがそのまま歌詞になるのはこの人だけ。


Parliament / Do That Stuff(0:01〜)


JBを入れたらP-Funkも入れるのが礼儀というもの。超名ライヴ盤(一部スタジオ曲あり)「Earth Tour」より。
いかにもP-Funkな長ったらしいイントロダクションが終わったところに飛び込んでくるジェロームのドラム・ブレイクに悶絶。


Grant Green / Let The Music Take Your Mind(0:04〜)


1970年のライヴ「Alive!」よりクールの1曲を。
ド頭のテーマの合間合間のドラムに悶絶。
バーナード・’プリティ’・パーディやレス・デマール等と並ぶレア・グルーヴ界の鬼ドラマー、イドリス・ムハマッド(aka.レオ・モリス。「アイドリス」表記もあり)と言えばラスティ・ブライアントの「Fire Eater」のドラム・ブレイクも最高だがここではこのドラムにしてみた。お得意のミッド・テンポのズンドコ・ドラムが心地よすぎ。



Jimmy Smith / Root Down(0:01〜)


こちらも名ライヴより表題曲を。
イントロのベースの音出し~リフからドラムに被さり、ワウギターが続く瞬間が悶絶。
ドラムはポール・ハンフリー、ベースはウェルトン・フェルダー(クルセイダースのサックス奏者と同一人物)、ギターはアーサー・アダムスという西海岸の名うてのメンバー。


Art Blakey & The Jazz Messengers / A Night In Tunisia(2:23〜)


ブレイキーの「チュニジア」はいくつかあるが、ここでは「4049」を。
全員でパーカスを鳴らした後にスタートする「高速チュニジア」はいかにも1960年のショーターと言った感じの新主流派ソロが素晴らしいが、バッキングで狂ったようにピアノを打楽器の叩くボビー・ティモンズのプレイに悶絶。
ブレイキーももちろん最初っからうるさくて最高。


Art Blakey / Buhaina Chant(2:43〜)

もいっちょブレイキー。「リズム探求シリーズ」の始まりを告げる「Orgy In Rhythm」のオープナー。サブーのチャントからなだれ込むパーカス、リズムの洪水の瞬間が悶絶。


Donald Byrd/ Dominos(0:56〜)

これも超名盤「Places And Spaces」より。ド頭のチャック・レイニーのベースとハーヴィ・メイソンのドラムからして鳥肌モノだがテーマ(サビ)で控えめに入ってくるストリングスに悶絶。さわやかな海風のような、寄せては返すさざ波のような。これこそミゼル・ブラザーズ・ワーク!


King Curtis / Menphis Soul Stew(2:50〜)

フィルモア・ウエストでのライヴ盤より。実質メンバー紹介の曲ではあるがまたパーディかよ…。と思いきやジェリー・ジェモットのベース…。でもなくパンチョ・モラレスのコンガに悶絶。もちろんごく一部の界隈で瞬間的に話題になったパーディの「ダチーチーチーチー」も聴ける。まあ曲全て最高ですわ。


Tower Of Power / Squib Cakes(0:01〜)

タワーの代表曲を発掘ライヴ「HIpper Than Hip」より。(サブスクだとタイトルが異なる)デヴィッド・ガルバルディのハイハット・ワーク、いやロッコとの鉄壁で複雑なリズム・ワークに悶絶。最早この辺になるとピンポイントでもなんでもなくなってきた。


Little Feat / Dixie Chickin(0:07〜)

リトル・フィートの再始動アルバムより表題曲。イントロから通してズレまくるビル・ペインのピアノに悶絶。リズム・セクションは割とファンキーなのにライヴ盤とかだとシンセをプログレみたいに鳴らしていたり、冷静に聴くと結構変なロック・バンドである。すみません、知ったかぶりましたけどプログレの事ほとんどわからないです…。


おまけ


James Brown / People Get Up And Drive Your That Funky Soul(0:01〜)

JBに始まりJBに終わる。サントラ「Slaughter's Big Rip-Off」収録ではなく、編集盤「Motherlorde」の長尺ヴァージョンがお勧め。とはいえポイントはイントロにおける御大の「ダラララッタラッタタラ~」に悶絶。この人は音楽だけでなく、言葉、いや存在そのものがリズムであり、グルーヴである。



まとめ

簡単に選べると思ったけど意外と難しい。
どの曲もピックアップした部分だけじゃなくて曲そのものも素晴らしいのでやっぱり通して聴くのがいいと思うけど。後はジャンル分けすればよかったかな。
タイトルに「Part.1」とつけたのは第2弾がある…わけではなくファンク好きならつけたくなるから。わかるでしょう?(わからん)

でもこの企画めっちゃ自己肯定感上がる。
「こんなマニアックな視点で音楽聴いてる俺カッケー!」
「私音楽オタクなんで普通の人が聴いている音楽わかんないっすね、テヘ。えっ?何が好きかって?ジャンルにとらわれずいいものは何でも聴いてます」
って思える。

サーセン。調子に乗りました。
でも「何でも聴く」って自分で言う輩ほど限られたものしか聴いてないよね。

余談はともかく。
冒頭で記したように、冷静に考えてみれば音楽の「おいしい所」だけ切り取って聴く行為は何も近年のことではなく、ずっと以前から発想としてはあったわけであり、そんな目くじら立てて「ギター・ソロも聴けや」とか「音楽の本当の楽しみが分かってない」みたいに言わなくてもええやん、ってことよね。



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