根回しは、ずるくない

 NPO法人Grow Up で行なっている「ミドル教員のマネージメント(仮)」の活動の一つである「Twitterのspace機能を用いたミドル教員との対談」で話題に出た内容について解説します。

 これまでに2回の対談を行った中で、特に印象に残った「教員の正義感」について書きました。それは、タイトルにあるように「根回しはずるい」「裏でコソコソせずに正面からぶつかる」等の、ある種の正しさが軸になっているように感じたからです。組織としてではなく、個人としての正義を振りかざすのは、マネージメントではありませんからね。

 マネージメントの定義は色々とありますが、ここでは「組織で成果を上げるために、今あるリソースをより効果的効率的に活用する手法」と定義しています。今後対談を繰り返す事で、私自身の感じ方が変わっていくと思いますので、今の考えを記録に残す意味も込めています。

1.昭和と平成のマネージメントの軸は「個人の正義」

 対談して感じたのは「学校現場に後進育成を行うしくみが無い」と言う事です。だからこそこの活動があるので驚きはしませんでしたが、やっぱりか、と悲しく思いました。これは現状を批判したいのではなく、スタートラインを確認するためです。批判は簡単ですが、それで子ども達の環境が改善される事はありません。まず現状を把握しなければ、目的へ向かうための目標や具体的な行動が明確にはできませんから。

 後進育成だけでなく、そもそもその学校をマネージメントするしくみが構築されていません。文科省を筆頭に県教委や市教委と管理組織はありますが、多くは各学校の校長に権限が与えられています。ですが、人事異動により職員移動が毎年ありますし、移動先の学校や自治体によってルールも暗黙知も異なり、コロナ禍やGIGAでやる事はどんどん増えて、チームビルディングする時間的余裕がありません。にも関わらず、子ども達へ向けた指導の研修はあれど、マネージメントやチームビルディングの研修がほとんど無いのが実情です。

 ここからは私の推論になりますが、その時間の無さ故に、個人任せになってしまったと思います。本来であれば、対話して共通理解を深め、合意された目標に向かい行動して修正を繰り返して、組織として成果を上げていく。でも、時間がなければ、できません。対話しなければ、個人は組織になれないのですから。

 でも、それが継続してきた事で、今の「個人の正義主体のマネージメント」になってしまった、と思いました。マネージメント=対話、と言って良いほどコミュニケーションは不可欠ですが、それを否定しているのがタイトルにもある

「根回しはずるい」

 です。これは、対話を全否定しているようにすら私は感じています。今の50代60代が若い頃から先輩職員から対話を求められる事がなかったから、自分よりも若い職員に対話する事ができないのだろうと思います。なので、マネージメントだけでなく様々な仕事でのアドバイスも、OJT的な指導をされてこなかったから、自分の価値観を押し付ける指導ばかりなんでしょう。

 他にも、儒教的な年長者を敬う、が過度に行き渡っている事も理由の一つと考えられます。自分の発言に対して若者が反論する事を喜ばない人は多いですからね。残念ながら、自分の指示内容について深く理解し具体的に提示したり例え話ができない人にとっては、年長者マウントを取ればそれらを隠せますからね。

 色々と書きましたが、個人の正義を押し付けるやり方でやって来られたのは、先輩上司の意見を下は黙っていく、といった価値観を持っている人達が多かったからだと言えます。

2.令和のマネージメントの軸は「対話」

 ですが、時代は変わりました。昭和から平成へと変わった公教育の変化は、30代以降の若者達を変えました。多くの若者達が自分の意見や考えを持ち、一方的な価値観の押し付けに対して、平然と反論するようになったのです。

 先輩上司やその場の雰囲気よりも、自分の価値観を優先する。今までは変わり者や協調性がない等の理由で弾けば良かったのですが、今は若者多くがそうなって来ました。先輩上司の意見に対しても、納得いかなければ反論したり行動しなかったりと、正義の押し付けではコントロールできないようになって来ています。

 問題は、その価値観を持った若者ではなく、その若者をマネージメントする能力がない管理職にあります。仕事に対して真面目な若者達を動かすには、自分の正義を押し付けるのではなく、対話して若者をチームに迎え入れる必要があります。

 仕事の真面目さで言えば、若者の方が上かもしれません。若者達には自分達の価値観を押し付けるのではなく、対話してこちらから歩み寄る事が大切です。

 そもそも、本来のマネージメントは、対話ですから。

3.職場で活用するために

 もっと対話しよう!!

 と言うのは簡単ですが、実際に行うのは難しい。なぜなら、今までやって来なかったからです。担任として授業実践や学級経営が素晴らしく経験豊富でも、職員室内での職員との対話やマネージメントは、初心者です。

 まずは自分の正義感を言語化して、例えば若者の言動にイラッとした時の感情をメモしたり、して自分を知りましょう。人と関わる事よりは、自分を知る方がまだハードルが低いですからね。

 自分を知れば、相手の考えも受け入れやすくなるでしょう。お互いの価値観をぶつけ合うのではなく、自他境界線を引き直すから、対話ができるようになるんです。

 さて、これからの対談が楽しみです。対談をすればするほど、また新しい気付きがあるでしょうから。


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