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なぜ疲労が高まると傷害発生率があがるのか?(若年選手が疲労状態に陥ると床反力に耐える能力が低下、筋活動が低下することで、骨に加わる負荷が増大することを示唆している)

疲労

短時間の運動によって疲労が高まった結果、受傷リスクの既知の指標が上昇し、その結果、動的な関節安定性が低下することが報告されています。

サッカーにおいては、疲労が高まると傷害発生率が上昇することが、プロ成人男性選手、およびエリート若年男子選手の両方で報告されており、前者は試合前半、後者は試合後半の終わりが近づくほど傷害の発生頻度が高まります。

この時間枠において、神経筋の機能とコントロールが低下している可能性が考えられ、それを裏付ける近年の研究データは、短時間のサッカー関連の疲労プロトコルを実施後、女子選手では、電気力学的遅延が増加し、また男子選手ではフィードフォワードに基づく反射活動が低下したことを示しています。

疲労耐性

疲労耐性に対する効果と手法に関する最新のエビデンスを前提とすると、全発達段階を通じて、成熟と技能的スキルの両方を考慮しながら、有酸素性能力を発達させる必要があります。

最新の研究レビューから、初心者アスリートの疲労耐性の向上を目的に実施する課題は、楽しくできること、またゲームプレイを含む有酸素性でインターバルに基づく課題を行なう間に技術的スキルを身につけることに焦点をあわせるべきとされています。

アスリートが発達段階の後半に入って成熟するにつれて、有酸素性能力と技術的スキルを高めるために、高強度のSSGにより大きな重点を置くことができます。

疲労に伴う動作の変化

若年男子サッカー選手の集団にドロップジャンプ課題を実施させた研究においても、疲労に伴う変化が生じたと報告しています。

具体的には、被験者の着地衝撃力が増加するとともに、前脛骨筋と、膝関節屈曲筋群および伸展筋群の筋活動が低下しました。

反対に、ヒラメ筋の平均EMGは増加しており、このことは、若年選手が疲労状態に陥ると床反力に耐える能力が低下し、また筋活動が低下することで、骨に加わる負荷が増大することを示唆しています。

さらに、若年選手は膝関節周辺の神経筋コントロールが低下した際に、より足関節優位の着地方法を採用している可能性が考えられています。

また疲労状態における着地動作の運動力学的要素と運動学的要素を測定した研究では、男女の被験者ともに、脛骨近位の前方剪断力のピーク値の増加、外反モーメントの増加、および膝関節の屈曲角度の減少が優位に認められました。

以上を総合すると、これらの疲労に伴う神経筋コントロールの変化は、接地時の動的安定性を全体的に低下させ、その結果、下肢の受傷リスクを上昇させます。

これらリスクの高い着地の運動学的要素は、ACL(前十字靭帯)とMCL(内側側副靱帯)の両方の受傷リスクを上昇させます。

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