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「貨幣空間」に生きてることを自覚すればバイトも仕事も簡単に辞められる

寄せられる質問の中で特に多いのがバイトや仕事を辞めたいのに辞められないという相談だ。これに対して今までは「あなたが辞めたところで迷惑はかからないし、君の代わりはいくらでもいる」とアドバイスしてきたが、今日散歩をしながら新しいアドバイスを思いついたのでシェアしようと思う。

「貨幣空間」という言葉をご存知だろうか。貨幣空間とはお金を介してあらゆる取引が行われる世界のことで、この空間で生きる人はいかに自分のお金を増やせるかだけを考えている。これと対を成すのが「政治空間」だ。政治空間ではお金ではなく愛情や友情などで結びついた人たちが共同体を構成し、みんなで幸せを目指す。この二つの空間については橘玲の説明が分かりやすい。

私たちが生きる空間を「政治空間」と「貨幣空間」に分けて考えるところから始めましょう。「政治空間」とは、家族(愛情空間)や学校(友情空間)、会社、地域社会など、社会におけるさまざまな“共同体”を指します。そこでは周りから慕われ、支持される人が権力をもち、人々は愛情や友情によって結ばれたり、嫉妬や憎悪によって対立したりします。愛情や友情のよろこびも、人間関係の悩みも、こうした「政治空間」で生まれます。一方、「貨幣空間」はグローバルなマーケットで、お金を介してフラットなやり取りが行われます。「貨幣空間」では損得勘定がすべての基準で、感情が入る余地はありません。(橘玲 日興フロッギーより)

この貨幣空間は資本主義社会の現代のかなりの部分を占めている。そして貨幣空間では資本主義という文字の通り、参加するプレイヤーは誰もが自分の「資本」を使って、お金をどれだけ増やせるか競い合うゲームをプレイしている。どこかで聞いたことがあるように資本をたくさん持っているいわゆる「お金持ち」は、工場を建てたり人を雇ったりしてモノを作って売り、さらに富を得ることができる。文字通り資本を投げて投資をすることでリターンを得るわけだ。ここまで聞くとお金持ちじゃない人は資本を持っていないのかと感じるかもしれないが、それは違う。お金はなくとも「時間」だったり「労働力」といった立派な資本を僕たちは持っている。こうした資本を上手に使って得られるお金を最大限増やすのが貨幣空間のシンプルなルールだ。

さて、そんな貨幣空間の話がどうバイトや仕事を辞めるのに関係するのだろうか。僕に「辞めたい」と相談してくる人の多くは仕事の大変さではなく人間関係で悩んでいる。「君がいないとシフトが回らないからお願いだから残ってて言われて......」「お世話になった上司のお願いなので逆らえなくて......」とか。はたまた酷いものだと「暴言を吐かれる」「パワハラしてくる」といったのもある。こういった悩みを貨幣空間という視点から解消してみよう。

先ほど説明した通り、貨幣空間のルールは至ってシンプルだ。僕たちはお金をできるだけ増やすために、最も効率がいい選択肢を選ばなくてはならない。労働する人は自分の時間や労働力を資本として投下して、それに対するお金を給料としてもらっている。これは完全な貨幣空間の世界だ。一方で「人間関係で悩む」というのは貨幣空間と対を成す「政治空間」の概念で、本来であればこの2つが交わることはない。なぜなら政治空間では同じ空間で生きる人々が愛情や友情で結びつき、共同体としての幸せを目指すからだ。つまり政治空間では特定の個人がお金をドカンと増やして一人勝ちすることは許されない。そんなことをすれば他のメンバーから嫉妬されてしまい、その共同体で生きることが難しくなるからだ。

ここで皆さんに問いたいのだが、職場は貨幣空間だろうか、それとも政治空間だろうか。お分かりのように職場は貨幣空間である。バイト先で働く仲間や会社で働く同期は皆、自分のお金をできるだけ増やすために働いている。「いやいや、僕は会社が大好きで、みんな熱く仕事をするために頑張ってるんです」と反論してくる人がいたら、それは嘘だ。なら仮に給料が0円でも働くというのだろうか。答えは絶対にNOだ。なぜなら職場は貨幣空間だからだ。

会社で働く人々は、この会社で働くことで振り込まれる給料が現時点では自分にとっての最適解だ、と思って仕事をしている。理論上は。もし職場が政治空間なら給料0円でも会社の幸せのために頑張ろうとみんなが一致団結するはずだが、決してそうはならない。それは職場が完全なる貨幣空間だからなのだ。

一方で政治空間はお金が入ってきた瞬間に崩壊してしまう。皆さんは母親が作ってくれた晩ご飯のカレーに毎回お金を払っていただろうか。恋人にデートの度に時給を払っていただろうか。あり得ないだろう。それは家族や恋人や友人は、愛情で結ばれた政治空間に生きる人たちだからだ。政治空間にお金が入り込んだ瞬間、愛情に溢れた世界は崩壊してしまう。故にこの2つの空間は決して交わることはない。

話を戻そう。以上のように、バイトや仕事の職場は完全な貨幣空間である。そこではあなたは自分の利益を最大にするために行動しなければならない。さもなくば周りの人にいいように利用されてしまう。例えば「君がいなくなるとシフトが回らないから辞めないでほしい」とお願いしてくる居酒屋の店長は、本当にお店のことを考えて君に頭を下げているのだろうか。僕はそうは思わない。なぜなら居酒屋も貨幣空間だから、店長はお店の利益ではなく自分の利益のために行動しているはずなのだ。バイトなんていくらでも見つかるんだから、君が辞めてもすぐに代わりを探すことはできる。しかしそれは職場に大きな負担がかかる。なぜなら新しく入ってきた人に一から仕事を教えるのは非常に手間がかかる作業で、世話役として誰かを余分にシフトに入れて、その分多くの時給を払う必要が出てくるかもしれない。そうすれば店長の負担が増える。つまり店長はあなたが辞めないことで得をするから残ってもらうようにお願いしているのだ。

仕事だってそうだ。規模の小さな会社ならまだしも、大手企業なら誰か辞めても代わりはいくらでも採用できる。なんなら中途で他社から採用する人の方が優秀かもしれない。しかしパワハラ上司は「お前が辞めたら俺たちどうなるか分かってんのかよ。どんだけ会社に迷惑かけるつもりなんだ」と怒鳴って引き留めようとしてくる。こちらも先ほどと同様、会社は貨幣空間なのでそのパワハラ上司は別に会社の利益なんか1ミリも考えちゃいない。もちろん会社的には他社から優秀な人材が入ってきた方が最初に研修費がかかるにしても、それを十分ペイできるくらいの利益をもたらす見込みがあれば採用するだろう。しかし、パワハラ上司はそうは思わない。自分を恐れて都合良く言うことを聞いてくれるあなたの方が、彼にとっては都合がいいのだ。優秀な人がやってきたら、自分に反抗してくるかもしれない。圧倒的にいい成果を出したら自分の役職を奪われてしまうかもしれない。このまま行けば順調に昇進するはずだったのに計画が崩れるかもしれない。そう恐れている。

つまり貨幣空間において、パワハラ上司はずっとパワハラしてあなたに居残ってもらうのが最適解なのだ。特に日系大手企業においては給料はみんな横並びで、頑張っても頑張らなくても貰える額は変わらない。だったらできるだけサボった方が効率がいい。こうしてWindows2000と呼ばれるろくに働かないまま給料泥棒するおっさんが生まれるのだ。もちろん意識して考えてる人は少ないかもしれないけど、無意識のうちに自分の利益を最大化させる方向に思考が向かっているのだ。なぜならここは貨幣空間の世界だから。

結論、貨幣空間では「お金をどれだけ増やせるか」が全てである。あなたは自分の利益の最大化にだけ集中すれば良く、それ以外の人間関係の悩みは感じるだけ無駄なのだ。なぜなら店長や上司など全員が貨幣空間の住人なんだから、みんな根っこの部分では自分の利益の最大化のために生きている。「周りに迷惑が〜」とか「会社のために〜」と政治空間の話題を出しても全部嘘で、あなたを引き留めた方が得をするからそうしているだけなのだ。つまり、あなたはもっと自由に、もっとわがままに生きてもいい。自分が不利益だと感じるなら、さっさと辞めて利益が大きい方に移ればいい。それは不義理でも何でもなく、貨幣空間においては当然の権利なのだ。

「そんな冷淡な世界、僕は嫌だ」と思うかもしれないけど、僕としてはこの世界の方がずっと楽だと思う。なぜなら「お金」というたった一つの指標しかないのだから、判断がずっと楽になる。喜怒哀楽が複雑に絡み合う方が変数が多くてよっぽど大変だ。なので、職場など貨幣空間での人間関係に悩んだときは、ぜひこの原理原則を思い出して欲しい。あなたの悩みも軽くなるはずだ。

このブログをきっかけに貨幣空間とか政治空間に興味を持った方はぜひ橘玲の「残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法 」を読んでみて欲しい。500円ちょっとで買えて内容も豊富なのでさらに理解が深まると思う。

それでは素敵な1日を。

最強になるために生きています。大学4年生です。年間400万PVのブログからnoteに移行しました。InstagramもTwitterも毎日更新中!