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意志力の節約

社会人になって2週間が過ぎようとしている。肉体と精神の強さには自信がある僕だが、それでも新しい生活に馴染むまで時間がかかり、かなり疲れる。まだ社会人の生活リズムに完璧になれたわけではないが、一つポイントして挙げられるのは「意志力の節約」だと思う。

この2週間弱で、僕は既に出社と在宅の両方を経験した。割合としては出社の方が多く、最初の1週間は全て会社に行って研修を受けた。当然研修だから終わる時間は早い。18時には終わって家に帰っていた。が、しかし。帰宅してシャワーを浴びると、グッと疲労が押し寄せてきてまぶたが重くなる。ベッドに入ったら最後、もう出られない。これはどうしたものか、と悩んでいるうちに今度は在宅に切り替わった。

すると不思議なことに、研修が終わってもそれほど疲れていない。1日中パソコンの前にいるから若干の疲労はたしかにある。しかしそれでも本を読む力や執筆をする元気はまだまだ残っていた。

この違いは何だろう。その答えが「意志力の節約」だ。

社会人になって一番最初に面食らったのが、出社の面倒臭さだった。朝早く起きて、ごはんを食べる。歯を磨いて、スーツに着替え、忘れ物がないか確認する。靴を履いて鍵を閉め、駅まで歩く。出社時間に間に合うように電車に乗り、最寄駅に着いたら再び歩く。そして到着。

文字にすればたったこれだけだが、よくよく考えてみると途方もない意志力を消費している。例えばスーツを着るとき、どのワイシャツを着て、どんな色のネクタイを巻き、どんな色の靴下を履くかを考える必要がある。10秒で済む作業かも知れないが、これが毎日積み重なるととんでもない消費量になる。平日5日間で50秒、1年だと約43分間にもなる。たった10秒の時間でも、1年間積み重なると40分を超える膨大な時間になるのだ。

他にも朝7時に起きるために前日の夜に目覚ましをセットして電車を調べたり、細かな雑作業が昼夜を問わず襲いかかる。その度に少しずつ意志力が削られていく。

さらにもっと恐ろしいものがある。通勤時間だ。僕は今、会社の最寄りまで電車で15分のところに住んでいる。往復で1日30分電車に乗っている計算だ。これが平日5日間で150分=2時間30分、1年だと130時間にもなる。

130時間......丸5日以上もの時間を電車で過ごしているとは、何と恐ろしいことだろう。混んでて不快な車内にそれだけの長時間いたら、当然意志力も消費してしまう。どの位置に立とうか、お腹痛くならないだろうか、遅延してるけど間に合うだろうか。電車には不確定要素が多すぎる。自分ではコントロール不可能な事象に毎日少しずつ意志力を削られていては、帰る頃には疲労困憊だ。

一方、在宅だと意志力の消費は最低限に抑えられる。朝ごはんを食べるにしても始業30分前に起きれば余裕で間に合う。着るものも下はジャージで上だけシャツを着ればいい。電車も調べなくていいし、遅延を気にする必要もない。往復30分という貴重な時間を奪われなくて済む。さっきの計算だと、出社しないだけで130時間も得をするから、年間休日が5日間増えたのと同じことになる。主観的にも客観的にも、在宅の方が遥かに健全なのだ。

正直な話、在宅も出社も肉体的な消費エネルギーには大した差はない。確かに出社は駅まで歩いて電車に乗るが、帰りも同じことをするくらいで、結局会社では座っているだけだ。成人男性が疲弊するほど運動はしていない。このことからも肉体的な疲労よりも意志力の消費が残りのエネルギーに影響することが分かるだろう。

事実、出社すると通勤以外でも変数が増える。友達と話すことも変数だ。もちろん話すのは楽しいけど、一人でいるよりも意志力を消費する。どんな話をするのかとか、どんな反応をしてるのか観察したりとか。こういう細かい意志力の消費の積み重ねが、後に疲れとなって押し寄せてくる。僕は一人でいることが全く苦にならない。一人でご飯を食べることも、一人で帰ることも苦じゃないし、むしろその方が性に合っているとさえ思う。

事実、電車で友達を見かけても、自分から話しかけることはないし、何なら話しかけられないように離れることが多い。それは意志力の節約のためだ。仮に話したとしても、いつもと同じ会話の場合がほとんどだろう。疲れたとか、面倒くさいとか言ったところで、何も解決しないし、生産的なことは一つもない。だったら一人で本を読んだり音楽を聴いて自分の世界に浸り、意志力を温存した方がいい。つまらない人間だと思うかも知れないけど、合理的に考えると自然とこの結論に至る。自分の時間とエネルギーを守るために最適な行動を取っているのだ。

意志力を削ってくる要因は至る所に潜んでいる。細かいものでも、一つ一つ取り除かなくてはならない。例えば毎日着る服を時間をかけて選んでいる人なら、日替わりで着る服を決めたり、逆に毎日同じ服しか着ないとルールを儲ければ、意志力の消費を抑えることができる。毎日鏡の前で髭を剃っている人は、永久脱毛することで意志力の消費を抑えることができる。工夫やお金次第で上手に意志力の残量をコントロールすることができるのだ。

慣れない生活に疲れが溜まっている人は、ぜひこの機会に意志力の消費ポイントを見直してみてほしい。きっとどこかにヒントがあると思う。自分の意志力をうまく節約して、ここぞという時まで取っておこう。

それでは素敵な1日を。


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