マガジンのカバー画像

旅の記憶(エッセイ)

28
これまでの一人海外旅のエッセイです。実際の旅の順とは関係なく、基本的に一話読み切り。今は2005年のオーストラリア一周の旅を時系列で書いています。(古い情報も含まれますので実際に…
運営しているクリエイター

#ヴェネツィア

【旅の記憶】夕暮れのザッテレ(旅のなかの旅 ブラーノ島③)

ブラーノ島には結局4時間ほど滞在しただろうか、このユニークな島との別れを惜しみつつヴァポレット(水上バス)へ。 暖かい船内で少しうとうとしながらフォンダメンタ・ヌオーヴェに戻る。 空がまだまだくっきりと美しく、座ってちょっと休憩したいと思いつつ、結局てくてくと本島を縦断する形でサン・マルコ広場へ向かう。 この辺りは初めて歩く場所であり、名も知らぬ教会のファサードが綺麗だったり、やはりヴェネツィアはどの路地を通っても興味深い。 通ったことのない道を珍しがっているうちに、本島の

【旅の記憶】島の散策とにぎやか有料トイレ(旅のなかの旅 ブラーノ島②)

いよいよブラーノ島へ上陸。のっけから鮮やかな建物たちがお出迎えしてくれる。 少し歩くと湾曲した水路のあるメインストリートと思われるところへ出た。 この水路に沿って可愛らしい家が軒を連ねている。 まるでレゴブロックを積んだような建物は、外壁とはまた別の色で窓枠やドア、鎧戸が塗られている。 訪れた日は年末だったが、クリスマスの飾りを残している家も多い。 更には二階の窓にロープを渡し、洗濯物をずらりと干している家も沢山ある。 下着などもお構いなしで最初はどぎまぎしたが(だって青い家

【旅の記憶】ヴェネツィアの裏側を抜けて(旅のなかの旅 ブラーノ島①)

ヴェネツィア旅行時に泊まっていたリド島のヴァポレット(水上バス)乗り場から、 いつもとは違う路線のヴァポレットに乗船した日があった。 目的地へ向かうため、まず目指したのは本島北側のヴァポレット・ターミナルとでも言うべきフォンダメンタ・ヌオーヴェ(新しい河岸)駅。 本島といってもそんなに大きな島ではないので、 いつも本島へ観光へ向かう時に使う路線に乗り、サン・マルコ広場辺りから徒歩で北上しても到着するのだが、 時間節約のため別の路線を使ってみることにしたのだった。 心配なので

【旅の記憶】鍵トラブルのスペシャリスト

鍵トラブルのスペシャリストを自認している。 と言っても対応のスペシャリストではなく、トラブルに見舞われやすい、という情けない方の意味だ。 いたる所でやらかしてきたし、不可抗力で困った目にもあった。 部屋に鍵を置いたまま安宿の部屋を出てしまい、己を締め出したことは数知れず。 これは、学生の時に初めて海外へ行ったロンドンですでにやっていて、 この時は留学している友人を訪ね、彼女と二人で泊まったB&Bだったのだが 私が宿の奥様に言いに行く役目を仰せつかり、泣きそうになった記憶があ

【旅の記憶】リド島発、本島行きのヴァポレット

ヴェネツィアにいる間、頻繁にヴァポレット(水上バス)に乗った。 ヴェネツィア本島は、そもそもがそんなに広くない島だ。 そして基本的に車は入れず、移動手段と言えば運河をゆく船がメイン・・・ なんて理由を差し置いて、ヴァポレットに乗るのはなにより楽しいのだ。 ともかく船から眺める景色が美しい。大運河沿いに建つ歴史ある建物、教会、 そして行き交うゴンドラやボート。乗っているだけで移動を兼ねた観光ができてしまう。 私はヴェネツィアに着いてすぐに7日券50ユーロを買ったので、後は使

【旅の記憶】エクスリブリスを探して

ヴェネツィアには紙製品を扱うお店が多いと聞き、紙もの好きの私はそういったショップを訪れるのを楽しみにしていた。 その中でも、事前に調べていて一番気になっていたのは、エクスリブリスを扱うお店だった。 エクスリブリス(Exlibris)とは、日本語では蔵書票と言い、自分用に好みのデザインで作成した紙片のことで、それを自分の蔵書の見返し部分に、しるしとして貼り付けるものである。 歴史あるアイテムであり、ネットで紹介されているエクスリブリスは、どれも古来の紋章や古くからある職業を表す

【旅の記憶】アクアアルタとBrekの晩ごはん

フィレンツェから列車でヴェネツィアのサンタルチア駅へ着いたのは、 年も暮れかけた12月26日だった。小雨が降っていた。 雨と関係があるのか、時期的なものかわからなかったが、 街にはアクアアルタ(高潮で街が一部浸水する)のなごりがあった。 簡易的な桟橋が組み立てられ、もう水がある程度引いた今は、それらが積み上げられていたのだ。 街の人も観光客も、特に注意を払っていない風であるところを見ると、 日常茶飯事になっているのだろう。 私はその、アクアアルタのなごりの桟橋を物珍しく眺めな