見出し画像

M&Aと競業避止【M&A日記】

競業避止という発音しにくい言葉がある。
競業を禁止する意味で、競争が前提の市場経済においてそんなことがまかり通るのかと思うかもしれないが、M&Aではむしろ不可欠だ。

売主は譲渡する対象事業について当然ながら、よく知っている。
よく知っているというのはノウハウなどのポジティブな面もあれば、当然問題や課題などのネガティブな面も含む。
そんな売主が、対象事業を譲渡した途端に、ノウハウを活かして同じ事業をまた立ち上げて、そして譲渡した事業の問題・課題を突くような戦略をとってきたとすれば、買い手からすればたまったもんじゃない。

そういう特異な立場にいる売主には、競業避止条項を譲渡契約の中で定めて、競業を禁止する。

M&Aは、株式譲渡と事業譲渡に大きく分けられる。
前者は譲渡対象となっている会社の株式を取得すること。
後者は、例えば飲食業と建設業を営む会社が、飲食業だけを切り離して譲渡する(譲渡対象が株式ではなく事業だけ)ことを言う。

後者の事業譲渡については、会社法で競業避止が定められているので、譲渡契約への記載云々ではなく、法律で売主による競業が厳密に禁止されている。

「事業を譲渡した会社は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その事業を譲渡した日から20年間は、同一の事業を行ってはならない。」
というものだ。

株式譲渡については、譲渡契約の中で競業避止が基本的には定められる。

競業避止は前提ながらも、私の考えとしては、譲渡後も売主と買主は良好な関係でいることが望ましい。
売主は競業をすることで、それが協業にもなり、場合によっては買主への貢献となることもありうる。
あるいは、双方の競業の範囲の捉え方も大事だ。
例えば居酒屋を譲渡した売主が、カフェを立ち上げたとして、これは競業になるのかどうか?
こういうのを法律の解釈で争うのではなく、良好な関係を築きつつ、お互いに相談しながら判断していくのが理想的だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?