友情のために命を懸けられるか?太宰治の『走れメロス』①
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9月第2作目には、太宰治の小説、『走れメロス』を取り上げます。
『走れメロス』―友を信じ、命を懸けられるか?男たちの友情物語
太宰治(1909~1948)
【書き出し】
メロスは激怒した。
必ず、かの邪智暴虐の王を除かねばならぬと決意した。
メロスには政治がわからぬ。
メロスは、村の牧人である。
笛を吹き、羊と遊んで暮らして来た。
けれども邪悪に関しては、人一倍に敏感であった。
【名言】
人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。
一番きらいなものは、人を疑う事と、それから、嘘をつく事だ。
私は生れた時から正直な男であった。正直な男のままにして死なせて下さい。
【あらすじ】
メロスは村の牧人で、政治はわからないが、邪悪に対しては人一倍敏感な男であった。
結婚を控えた十六歳の妹と二人で暮らしており、この日、妹の結婚式の準備のために、村から十里離れたシラクスの街にやって来た。
街の様子がやけに寂しいので、通りかかった老人に理由を問いただすと、暴君ディオニスが、王族や家臣が悪心を抱いていると思い込み、息子や皇后、賢臣らを次々に殺しているのだという。
それを聞いたメロスは激怒し、そのまま王城に入って行ったが、たちまち警吏に拘束された。
王の前に引き出され、問いつめられると、「市を暴君の手から救うのだ。人の心を疑うのは、もっとも恥ずべき悪徳だ」と王に言う。
王は、「人間は、もともと私慾のかたまりさ。信じてはならぬ。おまえだって、いまに、磔になってから泣いて詫びたって聞かぬぞ」と返した。
メロスは命など惜しくなかったが、妹のことだけが気がかりだった。
そこで、「村で妹に結婚式をあげさせたいので、処刑までに三日の猶予を与えてほしい。無二の友人セリヌンティウスを人質に置いて行こう。私が三日目の日暮れまでに帰って来なければ、彼を殺してもよい」と申し出る。
王は、「メロスを放免し、身代わりの男を三日後に殺してやるのも気味がいい。これだから人は信じられないと、世の中の正直者と称する輩に見せつけてやろう」と考え、メロスを解放した。
「いのちが大事だったら、おくれて来い。そうしたら、お前の罪は許してやろう」と言う王に、メロスは悔しさのあまり地団駄を踏んだ。
メロスはセリヌンティウスに事情を語り、抱き合うと、その夜、一睡もせずに村へ走り帰った。
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