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友情のために命を懸けられるか?太宰治の『走れメロス』①

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9月第2作目には、太宰治の小説、『走れメロス』を取り上げます。


『走れメロス』―友を信じ、命を懸けられるか?男たちの友情物語


太宰治(1909~1948)

青森県生まれ。
本名、津島修治。
小説家。
高校時代に芥川龍之介や泉鏡花に傾倒。
芥川の自殺にショックを受け、高校三年生の冬、自らも自殺未遂をする。
東京帝国大学(現東京大学)文学部仏文学科入学後、井伏鱒二に師事。
一時期、左翼運動にも参加する。
『走れメロス』などの優れた短編小説を発表し、1947年の『斜陽』で作家としての地位を確立するが、翌年、山崎富栄と玉川上水にて入水心中。

代表作品:『走れメロス』『ヴィヨンの妻』『斜陽』『人間失格』など


【書き出し】


メロスは激怒した。

必ず、かの邪智暴虐の王を除かねばならぬと決意した。

メロスには政治がわからぬ。

メロスは、村の牧人である。

笛を吹き、羊と遊んで暮らして来た。

けれども邪悪に関しては、人一倍に敏感であった。



【名言】


人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。

一番きらいなものは、人を疑う事と、それから、嘘をつく事だ。

私は生れた時から正直な男であった。正直な男のままにして死なせて下さい。



【あらすじ】


メロスは村の牧人で、政治はわからないが、邪悪に対しては人一倍敏感な男であった。

結婚を控えた十六歳の妹と二人で暮らしており、この日、妹の結婚式の準備のために、村から十里離れたシラクスの街にやって来た。


街の様子がやけに寂しいので、通りかかった老人に理由を問いただすと、暴君ディオニスが、王族や家臣が悪心を抱いていると思い込み、息子や皇后、賢臣らを次々に殺しているのだという。

それを聞いたメロスは激怒し、そのまま王城に入って行ったが、たちまち警吏に拘束された。



王の前に引き出され、問いつめられると、「市を暴君の手から救うのだ。人の心を疑うのは、もっとも恥ずべき悪徳だ」と王に言う。

王は、「人間は、もともと私慾のかたまりさ。信じてはならぬ。おまえだって、いまに、磔になってから泣いて詫びたって聞かぬぞ」と返した。


メロスは命など惜しくなかったが、妹のことだけが気がかりだった。

そこで、「村で妹に結婚式をあげさせたいので、処刑までに三日の猶予を与えてほしい。無二の友人セリヌンティウスを人質に置いて行こう。私が三日目の日暮れまでに帰って来なければ、彼を殺してもよい」と申し出る。

王は、「メロスを放免し、身代わりの男を三日後に殺してやるのも気味がいい。これだから人は信じられないと、世の中の正直者と称する輩に見せつけてやろう」と考え、メロスを解放した。

「いのちが大事だったら、おくれて来い。そうしたら、お前の罪は許してやろう」と言う王に、メロスは悔しさのあまり地団駄を踏んだ。


メロスはセリヌンティウスに事情を語り、抱き合うと、その夜、一睡もせずに村へ走り帰った。


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