【月刊お気楽フリーランス論 sidestory#6】「男女2人」は大体何か言われる件について
株式会社ケロジャパンの吉河です。中川の作った会社に雇われることになった私ですが、「男女2人」ということで、最初の頃はうぇぇぇぇめんどくせぇぇぇぇ!といったことがよくありました。
個人的な経験でいえば、確かに男女2人でいると、大体オッサンに何か言われてきました。もはや慣れっこと言ってもいい。前勤めていた会社は当時完全な男社会というか男だらけで、普通に先輩と営業に行ったり、ランチに出かけたりするだけで「おっ、あいつらデキてるのか?」とヒソヒソ言われたりしたものです。
いや、同僚が全員男なだけなんだよ!! お前らヒマか!!! 人の恋愛(違うけど)に耳をそばだてるって、中学生か!!!! 話題に事欠き過ぎだろ! 本でも読んでろ!
まあ厳然たる事実として、そういう人たちもいるよね、バンド内恋愛とか、めちゃくちゃ少人数のグループ内でくっついちゃうの、よくある話だし。知ってる。一体どういう話からいきなり付き合うことになるんだろうな~、鉄板は悩みを相談しているうちにズルズルと…とか? 一緒にいる時間が長いと情がうつる、とか? さもありなんではあります。
でも、そう考えるとドリカムも面倒だっただろうなあ……。と吉田美和の気持ちを勝手に想像したりして(さらに当初男性2人いたわけだし)、私は自分が女であるという自覚が極端に薄い人間らしいことを改めて知るのでした。たまたま女、なだけ。
「中川さんと吉河さんは付き合ってるんでしょ」
最初に、「おっと俺たちどうやら付き合ってる風に見られてるらしいぜ」と中川と私が話をしたのは、飲みの席で、取引先のS広報部長の言葉を聞いてからでした。
「違います」(中川)
「またまた~。隠さなくていいからさ」
「あの、本当に違うんです」(私)
「嘘つかなくていいから! ほら、手出して」
そう言うと、S部長は、中川の手をとり、抵抗する私の手を強引に重ねたのです。
いや本当マジでそこにあるビール、顔面に注いじゃうよ? バカなの? アホなの? 最低なの? 「そういうことにしておきます♡」なんて男を手のひらに乗せるのがいい女だ的な返し、してあげないからね?
私と中川はヤレヤレと嘆息し、帰りがけに「俺らもそう見えるんだな~」と変に感心したんです。あまりにお互い、そういうつもりがなさすぎて。
私は、そして多分中川も、最初の印象で「この人に恋愛感情は抱かない」と感じたら、それは絶対そう。きょうだいに恋愛感情を抱かないようなもの、といったらいいでしょうか。なのに、はたから見たら、中川と私は「男と女」なのでした。
その後もいろいろなところで「中川さんと吉河さんは…」という質問は繰り返されましたが、あ、そうか。と、その質問がなされる一つの可能性に気がついたことがありました。恋愛感情がないのに、中川が誰かを雇うわけないと思われているのかな。私が不甲斐ないからダメなんだ。
なるほど頑張らねば…いやいや、ちょっと待て。それは中川に失礼だし、とはいっても、恋愛に結びつけたがる人多過ぎじゃん? なんで? 恋愛がないと人間関係は成り立たないの? 仕事もできないの?
男女の友情は成り立つのか、成り立たないのかという議論があるくらいだもんな。自分たちでいくら「違います」と言ったって、「男」と「女」に見えている以上、勘違いさせているのはコチラ側なのでしょう。釈然としないけど、多分そういうことだ。
また私も悪いのが、「中川“くん”」と、くん付けがなおらない。社長なんだから、本来は「中川“さん”」であるはずなのに、「くん」。どう見たって(事実的にも)立場が下な私が、上の人を「くん」呼ばわりしていたら、そりゃ訝しがられるというものです。中川「さん」って練習してみたことはあるんだけど、どうもなじまなくて……反省しています。
そして、「中川さんと吉河さんは…」と勘ぐってきたり、関係を確認したがってきたりするのは100発100中、はいあなたバブルかじりましたよねオッサンでした。偶然なの? バブルに何かあるの? なんなの?
人のことをそういうふうに見るってことは、自分が会社の女性を性的な目で見まくって、恋愛沙汰にもちこんできたんだなって思っちゃうぞ。そういうご経験がおありになるということですよね? 知らんけどなフフフン。
そんなわけで、そういった面倒な質問や邪推を早い段階で回避するため、私は「中川の学生時代の同級生」であることを最初の自己紹介で言うようになりました。同級生です。それ以上でも以下でもありません。
世の中に男女コンビがいて、独身同士なら、関係性は自己紹介で言い切ったほうが後々ラクなのは間違いない。付き合ってるなら付き合ってるで、どこかで「俺ら付き合ってる」ことを言ってしまったほうがラク。ま、いろんな考え方がありますが。
なんでいちいち言わなあかんねんと思いますが、あそこって付き合ってるんだって~などと、後から好奇の目で見られるのは避けたいところです(仕事に支障が出かねない)。あ、もちろん匂わせたい人たちはそんなことしなくていいのですが、私も中川も匂わせたくない人種に属するのでした。
で、中川がその後結婚するわけなんだけど、これがまた、「吉河さんは(お相手のことを)どう思ってるの?」って訊かれたことがあってです。え? どうってどういうこと? 何を聞き出したいの?
中川がモテるのはさておき、それ、あなたにどういう関係が? …って言いたいのをぐっとこらえつつ、仕事ができる人とか可愛い人とか、そういう客観的なことを聞き出したいんじゃないことだけはわかるぞ。
「(中川にとって)良かったなと思います」って、結局中川を主体にしてごまかしたけど(本当にそう思ってるから言ったんだけど)、これを聞いてきたのもオッサンだったなあ。
飲みを強要したり、女子は”落とす”ものだったりした時代がもう終わっていることを考えると、今後オッサンになっていく世代には、そういっためんどくさい人の割合は減っていくのかもしれないけれど、バブル世代はまだまだ元気。どうしたって、めげないで生きていくしかないんだ下の世代は。めんどくせぇなぁとつぶやきながら、凪のように。
(ーー#7は11月23日更新ですーー)
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フリーになってから19年、ネットニュース編集を始めてから14年、本が売れてから11年、そして会社をY嬢こと吉河と始めてから10年。一旦の総…
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