【月刊お気楽フリーランス論 sidestory#10】伝説の「D通事件」
株式会社ケロジャパンの吉河です。寝転んで、スマホで延々アニメを見る日を続けていたら、手首にガングリオンなるものができました。強そうな名前ですがなんの助けにもなりません。
整形外科のお医者さんによれば、ガングリオンは、関節液や滑液が溜まったものとのこと。見た目小さなコブで、私の場合カッチカチ。あくまでも「原因不明」という位置づけで、手首の使いすぎでなる、というものではないそうです。が、明らかに寝転びスマホが悪さをした気が……。スマホが重たいのが悪いんや!(違います。)…腱鞘炎には気をつけたんだけどなぁ。ぽんこつ手首だなぁぁ。
しかも治療法は「注射器みたいなもので吸い取る」「手術」のどちらかとのことですが、私の場合「小さすぎて吸えもしない」と言われました。しかも「取ったとしても再発しやすいからね~」とめちゃくちゃ様子見を促されます。
気になることはすぐに解決したいタイプ。いややー!そんなんゆうたかて手首のこんなん、気になりすぎるわァ!! どうしても取りたいんやーーーー!と暴れた(盛り気味)ところ、渋々大病院への紹介状を書いてくれました。渋々かよ。わかったよ様子見て、治らなかったら大病院行くことにするよ。
で、どのくらい様子見たらいいのかという私の質問に、医者は「まぁ~年始とか?」と言いました。そうか、それくらいなら待てるかな…と思って帰ってきましたが、先ほど「3年かかった」というブログを発見してしまいました。ぎょ、3年は長いなぁ。なんとか、コブを取りに来てくれる鬼はいないものか……。
そんなわけで、しばしガングリオンと共生する生活になりそうです。
本題です。前回、中川が「失敗」について書いていたので、私も「失敗」について。
数え切れない失敗、失態のなかで、失敗と言っていいのかどうかわかりませんが、中川の“上司”としての姿勢を象徴する「D通事件」というものがあります。
私がケロジャパンに入って9ヶ月ほど経ち、ぼちぼちライティングや編集の仕事をするようになった2010年冬。私たちはとあるオウンドメディアに掲載する記事づくりの仕事を請け負っていました。
打ち合わせに参加しているのは、オウンドメディアを作ることになった大元のクライアント・K社、私たちとコンテンツ作りを一緒にやることになった出版社・S社、代理店のD通さんです。
中川が指揮をとり、私は原稿を書いたり書いてもらったりしてとりまとめ、それをD通さんに納品。修正があればD通さんから指示をもらうことになっていました。(あとから思い返せば、D通の担当者さんは、有名企業の窓口担当者としては「ん?」と思うほどオッサンな世代の人でした。)
THE大手会社員経験があるので、THE“大手”な会社に限り、「この年齢の人でこの立ち位置は、昇進できなかったヒト」的なのが透けて見え……あ、なんでもないです、以下自粛。
原稿には、細かくD通さんから修正が入ります。その都度沿うようになおして、再提出していました。
「こことここ、こういうふうに修正お願いします」と指示がきたものに対して、「修正しました。ビフォーアフターは、ここをこう~~、です。履歴つけたWordを添付にてお送りします」とメールします。
私が複数の原稿の、右往左往な修正に追われていたある日、そのD通の担当オッサンは突然激昂しました。修正に右往左往ではありません。修正が右往左往。なんと言われたか、細かい言葉尻は覚えていませんが、ニュアンスとしては、
お前らみたいな小さい下請け、いつでもクビにして、路頭に迷わせることができるんだからな? ハハァン?
みたいな感じです。
私はビビリました。マジでチビるかと思いました(盛ってません)。何故このオッサンは怒っているのか、心当たりは一つだけです。「出し戻しをたくさんさせやがって、この能無し!」ということではないか、と。
いやぁ、でも、結構言うとおりになおしたんだけどなぁ………。大体、打ち合わせで話していたK社さんの感じでは、そこはこだわるポイントじゃない気がするけどなぁ。
これ、案件あるあるなのが、「クライアントは気にしないのに、間の代理店がソンタクして修正指示を出す」。修正が右往左往している場合は、これ疑惑があります(俺様が直させてクライアント確認とったら、直さなくて良かった的な)。
この時も、もしかしたら、私の「K社さんがそう言われたんですか? あなたの私見で、勝手に言ってません?」という心の声が聞こえたのかもしれません。ともあれ、天下のD通様に怒鳴られた。駆け出しの私は震え上がり、中川に泣きつきました。
「うぇーん怒鳴られたぁー」
…とは言ってないものの、ほぼそんな感じです。細かいやり取りが続いていて、たぶん怒鳴られた原因は出し戻しの多さで、仕事できない認定されてしまったのではないか、ごめん私が会社に傷をつけたかもしれない、対処法思いつかない--という話を一通り聞いた中川は、その場でそのオッサンに電話をかけました。
%&#$`*+=””?>★!@&%$XCW=F~*!!!!!!!!
こちらも中川が具体的になんと言ったのか覚えていないのですが、意訳すれば、
「オメー、うちのか弱い社員にエラい物言いしてくれたらしーじゃん? で、原稿は何が問題なんですか? 俺も確認していますが、吉河はちゃんとやってますよ。もし漏れている部分があれば、それは別途メールでくださいね? 立場弱いヤツに八つ当たりしてんじゃねーよw 言っとくが俺らはDだろうがなんだろうが全ッ然怖くないからな! 覚えとけ!」
といった内容でした(言葉遣いは、だいぶ盛り盛りです念のため)。
失敗こいた社員(私)に対してこんな姿勢見せられて、「かっけぇ~」って思っちゃったよね~。というわけで、私なりのまとめです。失敗した側は全然普通の話だけど、一緒に仕事をしている人が失敗した時の姿勢、っていうのは学びたいと思ってます。
【失敗したら】
・失敗して、自分では処理できないと思ったら、すぐに報告。
・その時、上司を怖がらない。隠し事をしない。また、何故、どの部分で自分が失敗した(と思った)かも併せ話す。
・自分で考えうる対処法があれば、それも話してみる。そのうえで、指示を仰ぐ。
【社員が(対外的に)失敗した、という報告を受け取ったら】
・経緯をつかむ。
・いったん、目の前の社員を責めない。
・自分は味方であるという姿勢を示す。
・経緯から、明らかにこちら側に不備があれば相手に素直に謝罪。監督不行き届きであったことを含め、今後どうしたらいいか相談する。修正する意思を示す。
・その際、相手や、相手の所属する企業に臆さない。
結局その後、D通さんのその上のエラい人が出てきて中川に謝罪する、という流れになった俺的伝説「D通事件」。なんでもそのオッサンは、社内でもちょっとアレな人のようだった、のでした。
そういえばさ、今10年越しに気がついたけど、このオッサン、メールの使い方もWordの使い方も、よくわかってなかった気がするんだよねー。だって、指示が全部電話だったもの。なんで思い出したかって、過去のメール掘り起こしたらさ、私が修正原稿送ってるメールしか出てこなかったんだよ。
言った言わないが怖いから、いちいち修正指示を私が書き起こしてる形跡もあるんだけど、向こうからの指示メールは、さっぱりないの。電話で修正のやり取りしてたら、そりゃあ右往左往になるよねえ……。
あと、下請けを怒鳴ることで、しがない優位性を得ようとしたんだろうか、このオッサン。まぁ全部憶測でしかないけどさ。失敗っていうか、私が失敗したのは「オッサンの操縦方法」だったのかもしれません。
自分が”ちゃんと”やっているという自負があれば、ビビることはない。それだけのことなのでした。
とはいえ、社内でこの「失敗報告」と「報告に対する対処」ができるのは、常日頃から、少なくとも「その時その時で、自分が判断したことに説明がつけられる」行動をとっていることが肝要です。人に言えない行動をとっていると、失敗した時も隠したくなるものです。
あともう一つ、お互いになんでも言い合える信頼関係、相手がどのような仕事ぶりをするかの信頼関係があるからこそ、失敗は失敗として言える。社長とヒラという立場であれど、ここは同級生ゆえのざっくばらんな会話ができる関係性が功奏しているかもしれません。
さて、ガングリオンを飼っている身としては、手首を固定位置で長時間キープするのは一応やめようと思います(寝ながらスマホ良くない説)。というわけで、Amazonでコレ↓ 買いました。今年は例年以上に、布団から出られない冬になりそうです。
(-次回sidestory#11は、12月21日(月)更新予定です-)
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フリーになってから19年、ネットニュース編集を始めてから14年、本が売れてから11年、そして会社をY嬢こと吉河と始めてから10年。一旦の総…
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