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外資系翻訳あるある・原文にはない言葉が現れることがある

前回は全体像が見えない状態でパーツパーツの言葉を訳すのは一苦労、という話をしました。

コンテキストがわからないせいで訳を間違ってしまった具体的な例として、以前どこかで見かけた航空会社のバナー広告の話。(実際のバナーを切り取った写真もあるのですが、勝手に使用して怒られたりすると嫌なのでこういう形での説明になりごめんなさい。)

ペナン
往復ーエコノミー
差出人 JPY
40000

という文字が入ったバナー広告。さらっと見ると、ああペナン行きの航空券が4万円なんだなぁ、と見えるかもしれませんが、違和感のある言葉「差出人」が入っていますね。

はい、そうです、これは「From」の誤訳です。でも、これを「誤訳」と呼ぶのはあまりにも訳者に申し訳なくなります。なぜならおそらくこれは「From」の訳であって、単体で見れば間違っていないから…。こういう風に使われるということがわかっていれば、間違うはずのなかった訳です。

上記の広告でもう一つ気になるところはありませんか?

私は気になって気になって仕方ありません…、それは値段の表記です。「JPY 40000」というのは、できれば「40,000 円」と表記したいところです。

これも全体が見えていないときちんとした訳が行えない好例です。最終的な仕上がりが見られるのであれば、これは JPY を削除して、40000 の後に「円」を入れる、と言えますが、訳者にそうした確認ができない場合も多々あります。

ところで、この場合は JPY の場所を移動させればよいわけですが、場合によっては、原文にない言葉を追加しなければいけない場合もあります。古巣を例にあげるのは若干心苦しいですが、アップルの Newsroom に気になるところがあります。ぜひ、発見してほしいのですが、いかがでしょうか。

回答は以下。(2020 年 6 月 11 日現在。もしかすると将来的には修正されているかもしれません。)







そう、日付の表記です。リリースの日付が「5月12」などと表記されています。これはちょっと気持ち悪いです…。より自然な日本語にするなら、5月12の後に「日」を追加したほうがよいと思います。

ただ、これはコードに新たな文字列を(しかも日本語のみで)追加してもらうという、まあ、なかなか面倒な作業です。日付の表示などに関しては、翻訳者の手をわずらわせることのないよう OS レベルで国ごとの日付表記方法が変更できるような方法で管理できないものか、と思うのですが…。

ところで、L10n ってなに?と聞かれ、そうか、関わっていない人にとっては「?」だなと。これ、ソフトウェアエンジニアリングの世界でよく使われるようで、L10n とは「localization」のことです。長めの単語なので最初の L と最後の n の間の10文字を縮めて L10n と表記するんですね…。この他似た言葉として、globalization を g11n、internationalization を i18n などとする表記があります。なお、なぜ L10n だけはじめの文字が大文字なのか?と思ったら、大文字のアイ(I)と小文字のエル(l)で見間違いしないように、ということらしいです…。なるほど。

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