見出し画像

外資系翻訳あるある・フォントを侮ってはいけない

これまでの外資系翻訳あるある
直訳は万能ではない
言語が違うと語順が違う(ことがままある)
原文にはない言葉が現れることがある
訳すと長い言葉になってしまう

フォントに関しては、翻訳とは関係なく、世の中のフォントを気にしない人たち全員に喝をいれたいところですが(笑)、まあそんなことを言っても仕方ないので、またローカリに関係する流れで書いていきたいと思います…。

文字の大きさ問題

これは前回、改行問題の解決方法 2 つ目「2. 文字サイズを変える」としてあげた中で触れました。

日本語と英語では、同じポイント数でも日本語のほうが大きめに表示されるので、スタイルシートで日本語のポイント数は小さめに指定するべきではないか、という件。

そして個人的見解として「日本語ってあまりに大きい文字で表示されるとマヌケな見た目になるような気がする」と書きました。この「マヌケな見た目になる」というのは感覚的なものであって、人によって感じ方も違いますし、デザインの流行もあったりします。

一方、複雑な漢字を使わなくてはいけないケースも多い日本語では、文字が小さすぎると読めない、読みにくいという問題も起こります。小さい文字で注釈を入れる場合などは、英語と同じポイント数だとかなり読みにくくなるケースもあります。

イタリック体問題

これはもう「日本語では基本使いません」としかいいようがないので困る(笑)。もちろん斜体があるじゃん、という話なのですが、イタリック体を使う意味(語句を強調する、など)が、そのまま日本語で斜体を使う意味とイコールではない、というのが問題。強調だったら太字のほうが一般的ですし。

こだわりフォント問題

オリジナル言語でWeb フォントを使ったり、あるいは、製品やキャンペーンに合わせたイメージの特別なフォントを使う場合、日本語はどうするか?というのは、日本側としては気になるところです。

統一感を出す、会社として何らかのメッセージを示す、といった点で、「より望ましい」フォントを使うことは重要です。もちろん、それは、英語であっても、日本語であっても、です。LogitechLogicool のトップページカルーセルにある同一内容の文字を見比べた時、やっぱりちょっと印象が違いませんか?

オリジナル言語のフォントの雰囲気に近い日本語フォントを探すのもなかなか大変な作業ですし、使うには当然コストがかかります。というわけで、残念ながらローカリされた日本語ではジェネリックなフォントが使われることが多いと思います。そしてその結果は、先ほどの Logitech / Logicool の例で見ていただいたとおりです。

中華フォント問題

ちょっと違和感のあるフォントを「中華フォント」と揶揄する人もいるようなのですが、ここでいう問題は「日本語が中国語のフォントで表示されてしまい、特定の漢字が日本では使われていない字体になってしまう」という問題です。

以下は特徴的な文字例のほんの一部です。左が私たちが日本で使う漢字、右が中国語フォントの字体です。

スクリーンショット 2020-06-13 0.54.49

この問題、Evernote でも長年悩まされました。ソフトウェアのバージョンが上がった時に、いきなり昨日まできちんと表示されていた文字が中華フォントになってしまう、なんていうことがよくありました。上に挙げたような特徴的な文字だけを入れたノートを作って、確認用として使っていたくらいです。坑道に入るときのカナリアみたいな役目(笑)。

これ、長年説明してもその重要性についてどうも理解されていない印象でした。

確かに字体は違うのですが、全く意味が通らなくなるわけではない、というのが問題をさらに難しいものにしていると思います。中国語フォントにひらがなやカタカナが含まれていなければ、ひらがな・カタカナが正しく表示されなくなってしまうので、絶対に日本語フォントを使って!と非常に強く言えるのですが…。

そもそも中国語フォントになぜひらがな・かいるのか、というのは若干謎ですが、中国語圏でもひらがなの「の」ってなぜか使われてますもんね。昔から気になる「優の良品」とか…。

改めて考えると「フォントが間違っている」という説明は確かにミスリーディングだな、って思うわけです。だって、例えば「Helvetica で表示されるべきものが Times になっちゃってます」って言ったって、そりゃ見た目全然違うから印象は変わりますけど、同じアルファベットといえば同じアルファベットですから意味は変わらないですもんね。

でも中華フォントになっちゃうと「なんか日本語じゃない言語が表示されてる!」っていう印象なので、それはもう、Helvetica が Wingdings になっちゃってます、くらいのイメージかな。(全く意味が通らないわけではないので、それも例えとしてはちょっと違いますけれども…。)

それにしてもこの問題はある特定の会社、プラットフォームだけで起こる問題でもないので、OS レベルで対応できないものなのか、と思うのですが、フォントの優先順位を作り手側に委ねている以上、そう簡単には解決できないのでしょう…。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?