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初めての休日【第6話】

4月6日、入社して初めての休日がやってきた。
銀行員の休みは土日祝で、年間休日約120日。平均有給取得日数も15日を超えており実質135日と表面上はホワイトに見えるのかも知れない。無能も入社前はそう思っていた。
しかし......
入社初日に資格試験の話をされて絶望した。
1年目に受ける試験は以下の通り。
・会員制証券外務員一種
・内部管理責任者資格
・生命保険(一般・専門・変額・火災)
・銀行業務限定3級(財務・税務・法務)
・簿記3級
・ファイナンシャルプランナー3級
実に全11種類。
もちろん平日の仕事中に勉強出来る訳では無いので実質休みに勉強しないといけない。これはもはや休みとは言えない。知っていれば銀行員になんか絶対にならなかった。もう後悔しても遅い。
外務員試験は第一話のとおり無能以外は入行前に取得しているので既に危機に直面している。
やりたく無いけどやらないといけない。休日なのに遊ぶことを我慢して、勉強するためファミレス(ガスト)へ足を運んだ。
俺はもう学生では無い、社会人、しかも銀行員なんだ。豪遊したっていいだろう。一番高い牛のステーキと山盛りポテトを注文した。
さあ、勉強しよう!とスイッチを切り替えた時に隣の席におばちゃん4人組がやってきた。
そして最悪な事にこの4人組ババアがとんでもなくうるさい。これでは勉強なんかできない。一旦料理が来るのを待つ事にした。
10分ほど待っていると配膳ロボットに乗って料理が近づいてきた。タブレットが鳴る。
タブレット:「間も無くご注文の品が到着します」
お、きたきた。
すると隣の4人組ババア達が騒ぎ始める。
ババア:「ご飯きたで、きたきた!」
これはババアの飯ではない、無能の飯だ。
無能とババア4人組の間で配膳ロボットが止まる。もちろんこれは、無能の飯なんだから普通に手を伸ばして商品を取った。

すると隣のババア達が小言で何か言い始めた。
ババア1:「あれ、私らのご飯ちゃうの?」
ババア2:「ほんまになあ、何でとらはったんや」
文句があるなら直接言えばいいのに小言で言うから余計に腹が立つ。
無能が食べ初めて少しするとババア4人組の飯が配膳ロボットに乗って運ばれてきた。
よく見るとババアが注文したのは"ちょい盛りポテト"と"チキンステーキ"だった。
俺は銀行員!お前ら年金暮らしとは違って金には余裕があるんだ、舐めんな。
イライラした無能はこんなセリフを言いたかったが我慢して心の中に沈めた。
結局その後もババア4人組のマシンガントークが終わる事はなく、無能は1ミリも勉強できないままファミレスを後にした。
家に帰ると案の定、ゴロゴロして勉強なんてやらなかった。
同期は必死に勉強しているんだろうな、どんどん遅れていなぁ。
そんなネガティブな気持ちのまま、初めての休日が終わった。
-つづく-

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