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物書きどもが夢のあと~「落下の解剖学」

「悪は存在しない」を観終わったあと、続けて、この映画も観てきました。
「落下の解剖学」です。

けれど、この映画、やたらと賞を取りまくっておりますが、果たして、意味分かる人、いるのかな・・・?と思ってしまいました。(;´∀`)

※ネタバレ注意です。

正直に言うと、この映画、観終わった後に、一体、何を言っているのか、
さっぱり意味が分かりませんでした・・・。(;´∀`)

「これは、事故か、自殺か、殺人か―」とあるので、
単なる犯人捜しかとも思ったですが、どうやらそんな事もなくて・・・。

けれど、一晩経って見ると、「ああ、そういう事か・・・」と分かってきて・・・。

一言で言うと、この映画、
「物書きどもが夢のあと」というものだったのです。

ここのサイトには、作家が多数集っているので、主人公の気持ちが
分るのではないかと思うのですが、

この主人公(妻)は、名のある作家です。
執筆で忙しくて、家事や子育ても夫に任せきりです。

片や夫の方も、作家志望です。
夫は、作家になるべくして、執筆活動もしていたのですが、
生活のために教師をしており、忙しい妻の代わりに、子どもの世話も、
家事も引き受けている形です。

そんな時、執筆が乗っていたために、代わりにベビーシッターに息子のお迎えを頼んだ時に、事故に遭い、息子は失明してしまうのです。まだ、二歳の時でした。

その頃から、夫婦仲もぎくしゃくし始めて、ついに、夫は仕事を辞め、
自身も作家活動を再開するべく、フランスに山荘を買って、一家で移住してきます。

夫はここで、民宿をしながら作家を目指そうとしていたのですが、
その最中に三階から落ちて、亡くなってしまいます。

裁判で、事故か自殺か殺人かと審議している間に、
夫婦の本当の仲が分かってくるのです。

裁判の中で、夫婦の赤裸々な関係が紐解かれ、
衆人の目にさらされていきます。

私が驚いたのは、息子の事故の事で自分を責めた夫が、
書きかけの小説の案を妻にあげたということ。
それも、単なる案ではなくて、20ページ!?も
貰ったというのが、驚きました。

(え~っ・・・そっくりそのまま使ったんかい~!?とね)

普通しないよな~・・・と唖然としてしまいました。

そして、皆さん、作家の方が多いと思うので、分かると思うのですが、
作家業は孤独です。
いつも一人で黙々とやる作業です。
なので、人としゃべる事もないし、しかも、今、こんな山の頂上に住んでいるので、更に孤独を募らせていたと思うのですが、そんな中、たまたま取材に来た女子大生にも懸想していたというのが、裁判で分かってしまうのです。

つまり、妻側の不逞です。
それも同性愛!? しかも、何人も・・・!?

ということで、そこら辺で、もう私などは、「もうお腹いっぱい、めまいがする~・・・!」と思ってしまいました。

けれど、私にはこの妻の気持ちが痛いほどわかるのです。

私も、作家になりたいがために、「書く」ことを何よりも優先させてきました。
「書く」ことは、孤独で、いつでも気持ちに余裕がなく、切羽詰まった感覚でいます。

締め切り間際には、家事や育児も当然ながら出来なくなってしまうのです。

そういう状況の中で、私の夫も不満を募らせていきました。

夫の場合は、収入を得るのが、自分ばかりと文句を言うようになりました。

最初は応援していても、いつまで経っても収入が伴わないと、
嫌みや当て擦りを言うようになりました。

そんな中、少しでも状況を改善しようと、ますます私は、自分を追い詰め、
「書く」ことにのめり込むように・・・。

そうして、どんどん溝が深くなり、
とうとう私たちは離婚したのでした。

そういった昔の事が甦り、途中で観るのが辛くなってしまいました。

今なら、このご主人の気持ちが分るかも・・・と。
なんか夫に悪かったなぁ・・・と思ってしまいました。

結局、私から見れば、このご夫婦は、どちらも自分の夢を
完遂させようと努力をしていたけれど、一方だけが成功し、
もう一方が、損をさせられていると、
思っていたのではないかと。

そう言ったストレスの中で、起きた事件だったのではなかったかと思いました。

けれど、作家になった妻側だって、決して幸せだったとは
言い難いのです。

前にも言ったように、作家業は孤独で厳しい仕事です。

私なども何度ノイローゼに陥ったか分かりません。
一日中誰とも話さない、なんてことはザラにあるのです。
そんな中で、精神を保ちながら、やりつづけていくのは、
至難の業です。

おそらく、妻は、知り合いも誰もいない、外国の山荘へ
引っ越したことにより、気鬱になっていたことでしょう。

たまに取材に来てくれる外部の人にまで、色目を使わなければならないくらい・・・。

夫との関係は、もちろん、悪かったでしょうし、心も通い合わなくなっていたでしょう。

それでも、家族の誰かがいてくれた方がいいのです。

裁判が終わり、家へ戻って来た妻は、1人ベッドで身体を伸ばします。
しばらくすると飼い犬がやってきて、慰めるようにベッドに寝そべり、
妻はその犬を抱きしめながら眠りに落ちるのです。

この一人ぼっちさ・・・。
これから彼女はどうやって、やり過ごしていくのでしょう。

例え仲が悪かったとしても、まだ夫がいてくれた方がマシだったのではないでしょうか。

亡くなった夫とは、同じ物書きとして、競い合ったかもしれませんが、
それでも、居なくなると、寂しいものです。

そんな彼女の姿は、そっくりそのまま、現在の自分の姿に重なってしまいました。

私も離婚した後の孤独さは、筆舌に尽くしがたいものでした。
自分の精神も保てない程に。

病気にもなり、今現在も治療中です。
それほど家族というのは有難い存在なのです。

裁判で、丸裸にされてしまい、
これまでの自分と否応なく向き合わざる負えなかった彼女は、
これからどうやって生きていくのでしょう。

ズタズタになった自尊心をまた一から構築して、
この事をバネに、また書いていくのでしょうか。

そうであって欲しい。

否、そうなるでしょう。
それでこそ、作家魂というもの。

作家って、怖い人たちなんですよ。
どんなに、ズタボロになっても、必ずやそれを糧に
また立ち上がってくる人たちなんです。

ゾンビのように・・・。

きっと彼女もそうなると信じて―。

そして、自分もそうありたいと思いつつ、
筆をおきたいと思います。



☆それでは今日もよい一日を。


※そう思うと、いい映画でした。(*´ω`*)