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ショート・ストーリー「AIでLINE自動返信」

LINEで女性とのやり取りをうまく続けることが苦手な俺は、自分に代わって、女性とやりしてくれるスマホアプリをインストールした。その昔、手紙の代筆という職業があったらしい。このアプリは、LINEの代筆、送信をAIがやってくれるのだ。

予め俺の趣味、好きな音楽、海外で行った場所などの情報を登録しておく。すると、ガツガツしない、いい感じのやりとりを進めてくれる。自分の性格は「誠実さ」「ユーモア」「開放性」などをパラメータとして最大100%で設定できるので、ユーザーによって、違う個性を作る事ができる。ゲームのキャラ・メイキングの要領だ。相手の女性が発したLINEの内容はデータベース化され、相手の好みを学習して、段々とうまく返すようになってくれるのだ。

更にこのアプリのすごいところは、全ユーザーのアプリが個人情報を排除した状態で「成功事例」の交換を行っており、AI同士で、「どうすれば早く食事に誘えるか」などのノウハウに磨きをかけているのだ。猫が集会を開くように、AIも集会を開くのである。

婚活アプリ等で相手を見つけ、LINEのIDを交換するところまでは、さすがにAIには頼めない。そこが一番大変なのだが、そこは人力、手作業だ。

でも、相手の女性とLINEでやり取りが始まってからは「AI将棋」の要領で、AIに任せる。「AI将棋」がどんどん強くなっていったように、この分野のAIも日進月歩なのだ。

AIが判断に迷った時は、通知機能で知らせてくれる。「どう答えればいいか、判断を仰ぐ」のだ。でも通知は頻繁には来ない。AIは洗練されたノウハウを持っていて、それは俺なんかより全然レベルが高いのだ。

一般的にネットで相手を探している男女比は、「男性7」に対して「女性3」。したがって、男性は、同時に複数の女性とやり取りしないと、相手を見つけることは難しいのだ。

マッチングや婚活においては、女性から連絡が来なくなることはよくある。来なくなるのが普通だ。たいていの場合は、もっといい男性とのやり取りが始まったからだから、追いかけても無駄だ。このLINEのAIも、相手からの返事が来なくなったら、そこで自動的にCloseする。去る者は追わず。

同時にやり取りする相手は30人まで設定できる。俺の場合は、現在、4人とやりとしている。これくらいで十分だ。

1回食事に行った後も、やりとりはAIに任せる。もちろん、そこから先は手動にする方法もあるのだが、俺がやり取りしている女性は、LINEのやり取りが何日か続けば、大抵1回目は食事に行ってくれる。2回目からは連絡が来なくなる場合がほとんどなので、そこから先もAIに任せた方が効率的だ。

女性の側もAIアプリを使っている。「男性7」に対して「女性3」。とはいえ、イケメンで高身長、細マッチョで気前がよくて性格がいい男性は、数としては少ない。女性は女性で、効率よく「数」をこなす必要がある。

「AI将棋」と同じように「LINE返答アプリ」もどんどん賢くなっている。あと3年位でどこまで賢くなるのだろう。一方の俺は。全く賢くなっていない。

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