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【AI最新NEWS】Chat-GPT最新版と[ゾルトラークの法則] -OpenAI DevDay

 11月6日(現地時間)、OpenAI DevDayという、OpenAI社主催のイベントが開催されました。


Chat-GPTアップデートが多数発表

 会場にて、Chat-GPTの最新版、Chat-GPT4 Turbo含めた、機能のアップデートが多数発表され、一部は当日から利用開始となりました。

 「X」も終日、このニュースでもちきりでしたね。

 今回のアップデートは、Chat-GPTでシステムを開発している人、そして僕も含むChat-GPTのヘビーユーザーが、欲しいと思っていた機能が多数リリースされました。

神アップデートだが…

 まさに「神アップデート」な内容でしたが、不思議と、僕は心が躍りませんでした。

 なぜだろう? と思って考えていました。考えていくうちに、とある「アニメ」を思い出したのです。アニメ? ええ、アニメ、です。

 まずは、今日発表された、Chat-GPTの新機能について簡単に説明します。そして、なぜ心躍らなかったのか、その理由も書いてみたいと思います。

アップデートは有料版のみ

 説明の前提としての注意点ですが、今回の最新版は、月額20ドルの有料版であるChat-GPT Plusユーザのみが対象で、無料版のユーザは、その恩恵をほぼ、受けません。

 Plusは月額20ドルです。有料版と無料版に機能面でこれだけ差が付いた。今後は、無料版ユーザーを有料版のPlusに移行してもらいたい、という、OpenAI社の意図がうかがえますね。

 OpenAI社の収益が芳しくないことからも、無料版のユーザよりも、有料版と契約する個人や企業に向けてアップデートしていく、という路線変更はやむなしでしょうね。

一般利用者向けのアップデート

 今回のアップデートは技術的なこと中心ですので、通常使う上で、便利になった機能をあげます。

①2023年4月までの情報を新たに学習

 今まで、2022年3月までの知識しかなかったのが、2023年4月までの情報に基づいて回答できるようになりました。ブラウジング機能でBing検索も使えてましたが、予め学習してくれてるので、最近のことも、より流ちょうに回答できます。

②Chat-GPT Plusの全追加機能が同時に利用可能

 有料版には、ブラウジング機能、プラグイン機能、Advanced Data Analysis、画像生成機能、と、便利な機能があったのですが、同時使用はできず、都度切り替ええないと使えませんでした。今回、すべてを同時に使えるようになりました。

 例えば、インターネットで調べた情報と、手持ちの資料を読み込ませて、画像付きの要約資料を作成、といったことが同時にできるようになります。

 1つ1つ作業した結果を積み上げて作業していたのが、Chat-GPTに1つの指示をするだけで作業が完結する。これは便利です。

③特定分野に強いChat-GPTが使える「GTPs」

 Chat-GPTのキャラクターをカスタマイズができるようになりました。例えば、神話に詳しいChat-GPT、慰めるのが得意なChat-GPT、とかです。

 何かの分野に特化したChat-GPTを、ある程度学習させることで、オリジナルChat-GPTが作れます

 ソクラテスやイーロン・マスクなど、さまざまなキャラクターとチャットできる「Character.AI」と同じようなことがChat-GPTでもできるようになりました。

 僕も「AI中山」を開発しましたが、この機能を使えば、もっと簡単に「AI中山」を誕生させることができていたでしょうね。

 これらキャラクターを模したChat-GPTは、「GPTs」といい、今月末にオープンになる「GPT Store」から利用できるようになります。


開発者向けのアップデート

 今回は開発者向けカンファレンスということもあり、Chat-GPTのアプリを開発する人にとっては、嬉しい機能が多数発表されました。

 かなり技術的なお話しになるので、ここでは簡単な説明に留めます。詳細は以下のOpenAIの発表をご覧ください。

①Chat-GPTで読み込めるトークン数が128Kに拡大

 今回、GPT4からGPT4-Turboにアップデートされ、従来は4Kだったのに、32倍に拡大。これにより、本1を冊読み込んで要約もできます。

 開発者はこれまで、長いデータを切り分けてChat-GPTに渡していましたが、この作業が不要になります。これにより、本当に開発が楽になります。

②利用料金の値引き

 GPT-4と比較して、入力トークンは3倍安く、出力トークンは2倍安く提供。GPT4が高いため、GTP3を使っていた企業アプリは、これでGTP4が使いやすくなります。これも開発者にとっては朗報です。

③その他の開発者向けアップデート

 まだまだ便利になった機能はありますが、ここでは箇条書きに留めておきます。

・Assistants APIが利用可能
 ー Code Interpreterアップデート
 ー Function Callingアップデート
 ー Retrieval機能の追加
・JSONモードを実装
・DALL-E3のAPIを実装
・音声合成(TTS:Text To Speech)実装
・GPTストアでGPT販売が可能
・GPT4のファインチューニング解禁
・著作権シールドの実装
・ステートフルスレッド機能(過去会話保持)

 すごいアップデートの数ですね。

 僕は、「AI中山」を開発してることもあって、ユーザというよりも、開発者側にいます。今回のアップデートは、開発者としては、待ってました!という機能がかなりありました。

僕自身の感想は

 でも、この発表をYuoTubeで見ていて、僕は不思議と、まったくといっていいほど、心躍らなかったのです。

 「なるほどね、そうきたか。これは大変便利になったものだ」とは思いましたが、不思議と高揚感はありません。

 なぜ心躍らないのだろう?予想の範囲だったから?としばらく考えていたところ、最近、はまっているあるアニメの光景を思い出しました。

 「葬送のフリーレン」。今、ヒットしているアニメです。

葬送のフリーレンより

葬送のフリーレン

 今秋から、放映が始まった話題のアニメーション『葬送のフリーレン』。主人公のフリーレンはエルフという生き物で、人間でありながら千年以上生きる、伝説の魔法使い。

 彼女が、人間である勇者ヒンメルや仲間と10年間旅をして、魔族を滅ぼした後の世界を描くアニメです。

 千年生きるエルフのフリーレンからみると、勇者たちと魔族退治の旅に出た10年間は、ほんのひと時。でも、人にとっての10年は長い旅です。

 そんな時間感覚のずれで、人の感情が理解できなかったフリーレンが再び人を知る旅に出ることで、人という存在を少しずつ理解していく、そんな情調あふれた不思議な時間の感覚で進むアニメ。名作になるでしょうね。

ゾルトラークの法則

 この『葬送のフリーレン』に、魔族クヴァールが登場します。クヴァールは、「ゾルトラーク」という人を殺す魔法を操り、人類の7割が、この魔法で死に追いやられます。

魔法を防ぐフリーレンの弟子フェルン

 10年前の勇者との旅でも、フリーレン達一行は、この恐怖な魔法である「ゾルトラーク」は防げず、代わりに魔族クヴァールを魔法で封印しました。

 ヴァール封印後に、フリーレンが中心となって人類が研究して、「ゾルトラーク」に対抗できる防御魔法や、逆にこれを応用し、魔族を殺す魔法を開発します。

 結果、「ゾルトラーク」は、「最強の魔法」から、ごく普通の「一般攻撃魔法」になったのです。

 その後、再び旅に出たフリーレンは、クヴァールの封印を解くや否や、「ゾルトラーク」を防ぎ、逆にクヴァールを、あっけなく抹殺しました。

ネット語「ゾルトラークの法則」

 この場面はとても印象的でした。

 ネット上の視聴者を中心に「出た当時は革新的だった物や手法が年月が進むにつれて一般化すること」をこの魔法の歴史になぞらえて「ゾルトラークの法則」と呼ばれ始めています。

 そうです。

 僕が、今回のChat-GPTの新機能発表に心躍らなかったのは、この「ゾルトラークの法則」を感じたからでした。

 つまり、僕にとっては、この1年間のAI開発をする中で、発表された当初は大きな衝撃を受けたChat-GPTを、今では「普通のこと」として捉えていたから、驚かなかったのです。

 1年前は、すごいと思われたChat-GPTの機能が、今では当たり前になり、今回のアップデートも、非常にすごいことでありながら、僕の中では想定内の進歩になっていた。

 なぜなら、今回のアップデート機能は、「AI中山」を開発する中で、同じことをできる機能を自分自身で開発済みだったから。

 Chat-GPTのアップデートは続くでしょう。時には驚くでしょうが、あっという間に、それは「当たり前のこと」となる。

 つまり「ゾルトラークの法則」が、AI開発プロセスに入ってくると感じています。

AIの進化に寄り添う、寄り添わないの差

 これからも、AIは進化していきます。進歩をリアルタイムでとらえ、体感し、使っている人にとっては、AIが進化するごとに「ゾルトラークの法則」を捉えるこになるでしょうし、その反対に、使うことをしない人は、何が驚きかすら、わからないでしょう。

 その差が5年後には、大きな差になるだろうな、と、今回の発表をみて、強く思った次第です。


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