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300円雑記【水のような言葉】

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#ショートショート

寂しがりやのジーン

寂しがりやのジーン

「みんなと仲良くしよう。」

子供の頃ジーンはケンカのない世界を夢見た。
大人になるにつれてそれはずいぶんと難しいということに気づいたが、まわりとはそれなりに仲良く暮らしていた。

ジーンは朝から夕方まで仕事をして、夜はひっそりと絵を描いた。
月明かりで描く絵は誰からも評価されなかったがジーンはちっとも気にしなかった。それよりも絵は夜の寂しさから彼を守ってくれた。

身寄りの無かったジーンだったけ

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一粒の涙とクジラの海

一粒の涙とクジラの海

ある朝のこと、クジラのキューちゃんは泣いた。
ちっさなクジラの目からは一粒の涙があふれた。

「もしかしたらお友達は私のことなんて好きじゃないかもしれない」と言ってママクジラに泣きついた。

「そんなわけないじゃない」とママクジラはキューちゃんをなぐさめた。

でもキューちゃんの心は晴れなかった。
最近どうしてもお友達が自分を遠ざけてしまっているように感じてしまったから。

「わたし悪いことしてな

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吾輩は78円のトマトである【短編小説】

吾輩は78円のトマトである【短編小説】

吾輩はトマトの苗である。実はまだない。
4月に とある家庭の花壇に植えられた。この家の主が家庭菜園の真似ごとをすると言う。本当にこざかしい。

一本だと寂しいので三本植えられた。
「吾輩は孤高の苗であるから一本でも大丈夫だ」と言ったが、「にぎやかだから良いだろ」と返されてしまった。吾輩は決して寂しがり屋などではないのに本当におかしな事を言う奴だと思った。

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