温泉は「効能」と言ってはいけない⁉~バブ15個分!隠れた実力編~
今回も、温泉の魅力について引き続き深掘りしたいと思います♨️
前回は、温泉の定義と泉質が10種類あることをご紹介しました。その泉質名はどのようにしてつけられているのでしょうか。そもそも、泉質名をつけるルールを知ることの必要はあるのでしょうか。
①温泉の「濃さ・刺激」を知り、それに合わせた入浴の仕方をする。
②温泉の「隠れた効果」を知る。
濃い温泉は、長湯したり何度も複数回入浴をすると「湯あたり」という症状を起こしたりします。これは、急に体質が改善され血行が良くなったりすることで逆に体がだるくなってしまったりすることです。温泉によって入浴方法に違いがあることを知る必要があります。また、泉質名からは分からない成分を見つけることで、その温泉の隠れた実力を見極めることもできるのです。
「泉質名」のつき方には3つのルールがあります。
①単純温泉:『温度のルール』ー源泉温度が25℃以上。
源泉温度が25℃を超えていて②③の条件に該当しない場合は「単純温泉」。また、pHが8.5以上のアルカリ性の場合は「アルカリ性単純温泉」となります。
②塩類泉:『合計のルール』ー溶存物質が1,000㎎/㎏以上
「陽イオン」と「陰イオン」ミリバル(mval)という単位で一番含有量が高いものを記載し、(ナトリウムー塩化物泉、 カルシウムー炭酸水素泉)などとなります。
③特殊成分を含む療養泉:『個別のルール』ー「二酸化炭素泉」「含鉄泉」「硫黄泉」「酸性泉」「放射能泉」「含よう素泉」の規定値に達したもの
・水素イオンが1mg以上⇒酸性泉
・総硫黄が2㎎以上⇒硫黄泉
・遊離二酸化炭素が1000mg以上⇒二酸化炭素泉
・ラドンが8.25マッヘ以上⇒放射能泉
・総鉄イオンが20mg以上⇒含鉄泉
などと分類されます。例としては、①②③の上記の条件をすべて満たすと「含硫黄ーナトリウム・カルシウムー硫酸塩・塩化物温泉」などと長~い記載になるのです。
『温泉分析書の見方』
皆さんは、温泉に行かれた際に、大浴場の入り口などに「温泉分析書」が掲示されているのを見たことがありますか。こちらのポイントを押さえて、見てみると温泉の隠れた実力がわかり、入浴もさらに楽しいものとなります。
①泉質名の温度と順番 ~温泉のオリジナリティ~
「○○温泉」となっていたら、源泉温度が「25℃以上」あると分かります。「25℃未満」だと「○○冷鉱泉」と表記されます。泉質名の後に「水素イオン濃度pH値」「温度分類」が併記されます。源泉温度が55℃以上だと成分の濃い傾向にありますが、その分加水率が高まる可能性があるので、温泉が薄まる場合があります。逆に、25℃未満の冷鉱泉の場合は、肌に優しい温泉の傾向がありますが、加温するとガスの成分が失われやすく、消毒の為に塩素が入っている場合があります。
泉質名は、より前に書いてあるものほど濃い、またはその温泉のオリジナリティが高いと考えてください。例えば、(カルシウム・ナトリウム・マグネシウムー硫酸泉・炭酸水素塩泉)と記載があれば、陽イオンでは、カルシウム・ナトリウム・マグネシウムの順番で濃いということです。陰イオンは泉質名そのもので、「硫酸泉」「炭酸水素塩泉」としての効果があり、そのうち「硫酸泉」の効果がより高いと考えられます。
②湧出量 ~新鮮な温泉~
「1分間あたりに温泉が湧出するリットル数」で表示されています。この数字は源泉かけ流しで温泉を提供したば場合に、1日で何名のお客様を衛生的に対応できるかの目安になります。つまり「100リットル/分」なら、1日に100名のお客様に対応できるという目安になり、大変鮮度のよい温泉ということになります。利用客1名当たりで1分間に1リットルの湧出量というのが目安となるでしょう。
③水素イオン濃度(pH値) ~美肌効果と殺菌効果~
pH7.5の弱アルカリ性以上では、美肌効果が見込まれます。古い角質を分解して、肌をつるつるにしてくれます。逆に、pH6.0未満の弱酸性以上は、ピリピリとした感じがします。これは殺菌効果が見込まれる温泉です。皮膚病などによいとされています。
④試料1㎏中の成分~隠れた実力を探せ~
左側に陽イオン・右側に陰イオンが表記されています。溶存物質が多い場合は、2番手、3番手に多く含まれる隠れたスター選手を見つけてみましょう。規定値までは含まれていないので泉質名に表れないが、あと少しで基準を満たすまで含まれている成分は、充分に効果が期待される成分ということができるからです。
ナトリウムの次に基準値未満のカルシウムが多く含まれていれば、筋肉をほぐしリラックス効果や肌をつるつるにしてくれるクレンジング効果の他に、血流を良くして不整脈の改善や肌のはりを回復してくれる蘇生効果も見込めるんだなという考察ができるのです。
温泉の「適応症」とは?
さて、いよいよ本題の「温泉は効能といってはいけない」の解説になります。温泉分析書には、浴用の適応症との記載があります。平成26年(2014)に温泉法が改定され、温泉分析書は10年以内に分析したものを掲示することが求められています。見直し前の適応症は、言い伝えなど「経験による見地」によるもの。改定後は、「科学的(医学的)見地」によるものと考えてください。
温泉は、自然に地下から湧出するもので種々の成分や未検出の成分が含まれ、その成分を特定して決定することは困難です。このような疾患、症状に良い効果が期待される可能性があるとしたものを、適応症といいます。
温泉の適応症は、温泉の含有成分や、温熱作用、温泉地の気候などにより心理的反応を含めた生体反応とし、特定の疾患を治癒させるより、療養を行う人の症状を軽減し、健康増進を図ることを目的としています。さらに充分な効果が見込められるのは2~3週間の療養期間が必要であり、その療養には温泉に詳しい医師の指示のもとに行うことが望ましいとしています。
つまり、温泉は、科学的見地により証明された薬ではないので、「効能」と言ってはいけないのです!ちなみに、入浴剤は科学的根拠に基づき開発された医薬部外品なので「効能」といっていいのです。しかしながら、炭酸ガスの入浴剤でも一般的に浴槽に入れる1個の成分は、「二酸化炭素泉」の成分に換算すると、なんと約15個程度も入れないと含有成分に追いつけないのです。いかに、自然からの恵みの温泉のパワーがすごいかと改めて感じますね。
ちなみに、温泉分析書では、「この温泉特有の適応症」という記載事項に注目してください!動脈硬化症、切り傷、やけど、慢性皮膚病などとその温泉のパワーを記載してあります。ぜひ、入浴前にチェックしてくださいね。
温泉法改定により、寂しいニュースも。
「恋の病以外は効かない病はない」と人気の草津温泉ですが、この言葉を使って温泉を宣伝すると薬事法に触れる可能性があるとの声があがったのです。科学的見地に基づき温泉の成分の解明を進めていく方向ですが、少し歴史風情もなくなり悲しい感じがしますね。また、江戸時代から続くとされる独自の入浴法「時間湯」の指導役「湯長」も廃止になるとのことです。湯治客に症状や体調を尋ねることなどが医療行為の疑いがあり、医師法違反の疑念があるとの指摘によります。「草津良いとこ一度はおいで~♪」硫黄の匂いと湯気が立ち上る浴場で、湯長の指導により1回3分の入浴を1日3~4回などの入浴をする。木の板で源泉の温度を下げる「湯もみ」のシーンをイメージする方も多いのではないでしょうか。
科学的見地の推進により温泉の実力や、隠れた魅力を発見することも期待したいのですが、昔ながらの言い伝えや、伝統風景が薄れていくのは大変寂しく思います。ぜひ、皆さんにも旅行の際には温泉地の伝統文化や、地元産業のお酒や食材の魅力を再発見していただきたいと思います。
今回は、少し難しい内容になってしまいましたが、温泉のパワーを少しイメージしていただけましたでしょうか。次回は、お友達にも話したくなるような「入浴なるほど話」を中心に、温泉あるあるをご紹介したいと思います。
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