見出し画像

ジェラシックパーク

初めてバテレンからアダムとイヴの話を聞いたのはいつのコトだったか。
りんごを食べた事で人類は楽園から追い出され、原罪を背負うことになったそうだ。食べさせたのはルシファーという天使で、奴もまた罰を受け天から追い出された。

問いたいのは人間を庇護する役目の天使ルシファーが何故りんごを食べさせたのか、だ。
それは神に最も愛される存在だった天使が神が人間を作ってからその愛を奪われたと思ったからだそうだ。いわゆる「嫉妬」ってやつだ。
この嫉妬のせいで人間は最後の審判まで苦難の日々を送る羽目になったという。この感情のもつれが引き起こした出来事を起点に旧約聖書の世界観の中にいる人々は今日を生きている。

皆のモノ、のぶのぶである。少し暑くなってきた。
もう分かっていると思うが今回のテーマは「嫉妬/ジェラシー」。3人で考察してゆくターンだ。
「嫉妬/ジェラシー」とは何か。まずはこんなところから考えてみたい。
わしの記憶の中で幾つか体験した人の嫉妬心があるが、その一つから紐解いてみるとする。

北アフリカのある町に3ヶ月ほど滞在していた事があり、いつも決まった店で食事をしていた。
そこには決まった顔の乞食がいつも出入りしてて、少し媚びた微笑みにワシも大した金額ではないが彼に小銭を渡していた。
ある時、思わぬトラブルがあり手持ちのお金を使い果たしてしまった。新たに日本からの送金を待つことになったワシは10日間ほど極貧生活を余儀なくされ、食事もいつものケバブ(串肉)から一杯15円ほどのスープに切り替え、急場を凌ぐことになった。
その時だ、いつもの乞食が貯めたお金でワシの前に座りケバブを食べ始めた。その時のワシを見つめながら肉に食らいつく彼の瞳・表情には恍惚とした「優越感」が満ちていた。

少し複雑な心境と共に彼に対しワシは色々考えを巡らせた。
いつもの媚びた笑顔の下には大きな嫉妬心があったであろう事。そしてお金を渡すワシにも彼に対し優越感的なものがきっとあり、それが彼に伝わっていたであろう事。そしてこの日それが逆転した。彼にとっては千載一遇のチャンスだったろう。己の優越感を味わう数少ない機会として。
あの時の勝ち誇った奴の顔は忘れられない。それほどまで鬱屈したエネルギーを溜めていたのだ。そしてワシ自身の内側に宿っているモノにも同じものが流れているのを感じたのも貴重な体験だった。

この嫉妬心と優越感の関係は我々みんな幼少期の頃より日々触れ続けていて、知らずうちにインストールされた「ものさし」によって明滅している。
男子で言えば、小学生の頃は足の速い男子がモテた。
中学になると不良やスポーツが得意なのが良くなり、高校生になると頭の良さや大人っぽさセットになってくる。
大学生になるとスタイルやセンスの良さ、あと有名大学かがフォーカスポイントとなり、社会人になるとそれが就職している企業に変わってゆく。
30代・40代になると起業する者も増え、俄然お金を持っているモノがモテるようになってくる。
そこにSNSのフォロアーやいいねの数も評価の対象でそこでの一喜一憂はバカに出来ないほど強い影響力になっているのも昨今の流れだ。

この嫉妬心と優越感、全て自分の外側で繰り広げられている出来事や数字によって心が揺れ動かされていて、厄介なのは人間の「幸福感」はこの「優越感」にとても似た感覚でもあり、脳の報酬系や快楽中枢も活発にさせる働きがあり、このコントロールはなかなか難しく、人はこの優越感の奴隷であり、またジェラシックパークの住人だと言っても良いだろう。
 
これに立ち向かったのが釈迦の色即是空の世界観であり、老荘思想であり達磨の禅の世界で、現代だと精神科学の心理学やアート思考などのメソッドがそれにあたる。
外の世界の刺激に身体の内世界ではどんな感覚的テロップが流れているか。そこには更に深いレイヤーが広がっていて、自我を超えた領域で世の中を眺める事が出来るようになる可能性が昨今様々なところで示されている。

今内側で流れているのは幸福感なのか優越感なのか。
今内側で吹き荒れているのは向上心なのか嫉妬心なのか。
アンパンマンの歌にある様に自分は何をして喜ぶのか、時々は見つめる必要がある。

そしてもし皆がそれを出来る様になったとしたら、恐らく資本主義は形態を変え、民主主義は溶け、世界の仕組み自体大きく変わってゆくのだろう。
もし昔にそれが出来ていればカインはアベルを殺すことなく、トヨヒデは利休と、サリエリはモーツアルトと仲良くやれたし、ヒトラーはナチ党で世界を壊さなくても良かったし、広島・長崎に原爆は落ちてなかっただろう。

とまあ、今回はマイナス面を挙げ、強めに述べたが人類の歩みは勿論それだけではない。
現代の文明と文化は間違いなくこの嫉妬心と優越感のエネルギーによって生み出されたものだ。
今、我々はその運転の仕方を以前よりより手軽で確実に学べる時代に入ろうとしている。
そしてワシも自分の運転技術を磨きたいと思う。ホトトギスも殺さない。

どんな時代を作れるか楽しみなところじゃ!
では今回は以上にて。皆のモノ、また会おう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?