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大企業ではできないことを経験できているのは視野を広げたおかげ|株式会社オフテクス 澤村 里沙さん

奈良先端科学技術大学院大学(以下、奈良先端大)では研究や勉強をとにかく頑張ったことが、今の仕事にとても活かされている印象を強く受けました。理系=研究職と考えている学生にとって、視野が広がる話をしていただいています。就職活動のポイント、そのおかげで自分に合った企業で働けていること、学生時代に経験しておいた方が良いことを含めて、詳しくお話を伺いました。

澤村 里沙
奈良先端科学技術大学院大学では、自己免疫疾患のメカニズムを利用し、腸炎モデルマウスの作製に取り組む。博士前期課程修了後、株式会社オフテクスに入社。入社後は大学でコンタクトレンズのケアに関する授業や社内研修を含む学術全般の業務を担当。現在は新規事業における学術業務に携わっている。

就活の始まりと学内での対策

就活はM1の夏頃から、比較的、早めの時期から活動していました。 学部卒で先に就活を経験している友人からのアドバイスで、「早めにインターンがある」、「それを逃したら、説明会に行けないところもある」という情報を聞いて、早くから気になる会社は調べていましたね。説明会もインターンも面接も、色々と行った方だと思います。研究室で同期と情報交換はしていましたし、大学のキャリア支援室にも、頻繁に予約を取って行っていましたね。

理系は研究職だけでない、企業選びのポイント

最初は製薬、化粧品、食品業界のメーカーを中心に研究職を見ていました。そもそも、理系大学院なら研究職という固定概念があったので、その周辺しか知らなかったです。ただ、様々な分野の説明会に参加して、人々の日々の生活に必要なものを作っているようなメーカーを軸に、日用品メーカーや弊社のようなコンタクトレンズ系のメーカーなど、そういう企業に絞って受けていきました。

正直、企業の研究所は田舎に多いイメージでしたが、弊社は神戸に研究所があり、三宮にも近いので、場所も企業選びの軸でしたね。他にはどのように物を作っているのかという点。今のままだと、面接で話せないと思い、就活中は日経新聞もよく読んでいましたが、大手の企業であれば、研究は外注、マーケティングは外注、営業は外注など、全部1社の中で行っていないという印象がありました。製造から販売するところまで、すべてを行っている会社が良いと思っていたところ、今の会社が研究開発、製造、マーケティング、営業まで全部一環で行っていました。しっかりと責任を持って製品を出している会社が良いと思い、会社を選ぶポイントにはなりましたね。

また、弊社は論文数や学会発表数は同業種では一番で、本当にエビデンスを大事にしています。コンタクトレンズ装用時の不快感をどうすれば改善できるかを追求し、新商品も常に出している状態のため、眼科医からも支持されているメーカーです。研究職を志望する人にとっては魅力的なはずです。

若手でも任せてもらえる大企業ではできないこと

入社してからは開発部に配属されました。 開発部では、研究の部署で出たデータをまとめたり、学会に参加したり、文献の執筆や新入社員研修や中途社員研修など、学術全般の業務を担当しています。他には、大学で授業をすることもあります。コンタクトレンズのケア用品は、主にドラッグストアや眼科で販売しており、眼科では視能訓練士という国家資格を持ったスタッフがコンタクトレンズやケア用品の説明や販売を行っています。その視能訓練士の国家資格を取得できる大学に赴き、コンタクトレンズケアの重要性や成分に関する授業を全国で20校ほどで行っていました。 大企業であれば、なかなかできないと思いますが、1年目からそういったことも任せてもらえました。また、案内チラシや講演資料を作成して、眼科の先生に講演を依頼、実際に会場を準備して、1から全部を含めて、セミナーを開催するなど、本当に中小企業ならではの経験ができています。そして、現在は昨年から新規事業の部署に異動しましたが、そこでも、学術担当として、業務を行っています。

やりがいを持って仕事ができる社内の雰囲気

若手の時から海外の学会にも行かせてもらえることは面白いですね。それから、言われたことをするのではなくて、自分で考えて意見が通ったり、それを実際に自分で実行できたりすることは、なかなか他の会社ではできないのかなと思います。その辺りは働いているという実感が持てるので、やりがいがあります。

また、社内はみんな仲が良くて、横の繋がりもあって、雰囲気は良いですね。それに借上げ社宅などの福利厚生も充実していて、毎年ほぼ全社員で社員旅行にも行きます。昨年は北海道でした。

すべて受け入れて視野を広く持つことの大切さ

視野を広く持つことを働く上で大切にしています。ただ、最初は苦手で、大学も大学院も似たようなバックグラウンドの人とずっと過ごしていたので、そういう理系的な凝り固まった考えしかできなかったです。 文系の方、先輩や後輩、様々な方の意見を聞いて、それも一理あると受け入れる。否定せずに、受け入れて参考にしたり、視野を広く見ることを心がけたりしていると、理系職ですが、 営業的な目線やマーケティング的な目線で捉えることもできるようになり、会社が良くなることを考えられるようになると思っています。そのように視野が狭くならないようにすることは意識しています。具体的には、営業の部署とは、一緒に営業に同行したり、他にも、研究やマーケティングの部署など、開発部の時には色々な部署との関わりがありました。その中で話をする時に、「相手が何でこう考えているのか」を考え、全ての意見を受け入れるようにしていました。

「学術のことなら、この人」と呼ばれるようになる夢

夢は、やはり学術として、社外にも知られるような人になりたいです。同業者で見ると、メーカーによって学術の人は固定されていて、眼科の先生にも、「この会社の学術の人は⚪︎⚪︎さん」と認識されます。「この会社なら、この人に聞けば分かる」というような、社外の人にも知られるほどの成果を出したい。特に新規事業の部署では、会社の中で、その分野について、一番知っているのは私、という知識レベルになりたいですね。

現役の奈良先端大生へのメッセージ

就活に関して、私の周囲も研究職に絞っている人が最初は多かった気はしますが、私が配属された開発系の仕事の他にも、品質管理や薬事関係等、理系職にも様々な種類があるので、業種や研究職に絞らずに見た方が良いです。入社してから気付きましたが、採用されなかった会社は自分には合っていない、採用された会社(今の会社)は自分に合っていたんだと、後になって思うので、選考結果が良くなくても、そこまで落ち込まなくて大丈夫です。自分に合っている企業に出会えます。性格など、その会社の人事の方は会社に合う人を分かっていると思うので、採用されなかった会社に入っていれば、苦労していたという風に考えるようにしてください。学生生活に関しては、正直、私も奈良先端大時代、結構、辛かったですが、今の経験は絶対に会社で役に立つので、自分に厳しく突っ走ってほしいです。大学時代に遊んだ方が良いと思うかもしれないですが、会社員になっても遊ぶことはできます。今しか、こんなに苦しい思いはできないと思うので、存分に苦しんでほしいですね。あんなに頑張って良かったなと、絶対に思います。

奈良先端大を目指す学生へのメッセージ

奈良先端大は機器が揃っていたり、授業が充実していることが魅力的です。また、大学院大学(学部がない)なので教授陣が学部の授業に多大な時間を割かれることなく、研究室でのサポートが厚いことも奈良先端大に行って良かったと思えるポイントです。色々なバックグラウンドの人にも会えますし、視野を広げることは私も意識していることですが、そういう意味でも、奈良先端大に来るのは良いと思います。

奈良先端大の研究生活で印象に残っていること

課題や授業がとにかく多かったイメージです。私の研究室は比較的コアタイムもしっかりしており、頻繁に報告会も行っていました。9時に来て、終電で帰って…。本当に奈良先端大時代は勉強したという印象しかないです。ただ、大学院の2年間だけであれば、我慢はできますね。悪い思い出ではなくて、良い思い出。こんなに勉強することはないという良い経験になりました。

奈良先端大で経験して、今も仕事で役に立っていること

理系職は入社後に英語が必要になることも多いと思いますが、研究室の3分の1くらいが留学生だったので、外国の方と話したり、論文もたくさん読んでいました。そのおかげで、英語を話すことへの抵抗がなくなって、とても役に立っています。他には、大学院時代が非常にしんどかったので、会社では困難な状況でも乗り越えることができることから、奈良先端大では頑張ることも学びましたね。

また、奈良先端大の時に研究室で毎週、報告していたおかげで、大勢の前で話すことも苦ではなくなりました。何人もの教授の前で行った修士論文発表会の経験も、今の論文報告会や大学での授業に役立っています。

※この記事に記載した内容は取材当時の情報になり、会社名や役職名等は現在と異なる場合があります。