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(第9話) 迷った時ほど遠くを見よ 【サポーター目線】

こんにちは、「小瀧真理子(こたきまりこ)」といいます。洋服を作ったり、イラストやマンガを描いたり、レシピを作ったりしています。

今回の記事では、白血病になったパートナー「根本さん」の以下のストーリーと同じ時間を、サポーター視点で書いていこうと思います。

上記の体験記をご覧いただいたあと、こちらの記事を読みすすめてもらえたらうれしいです。

迷った時ほど遠くを見よ 【サポーター目線】

先生から大まかな治療方針を伺ったあと、根本さんはさらに言葉少なになりました。気やすく話しかけられない。何かをじっと考えている曇った表情。どんな気持ちなんだ…と、計り知れない彼の気持ちを想像して言葉が出ないわたし。

あぁ、なんてこった…なんで根本さんが…
これからってときなのに…涙

先生からの説明のあとは、とりあえず私にもできることがある!と思い、入院に必要なものリストをざっと確認し、「色々持ってくるね!」と言い残し病室を出ました。

幸い病院から自宅までは自転車で5〜6分ほど。往復するのも楽でよかった…と胸をなでおろし、急いでペダルを踏み込みました。

街頭が灯った川沿いの道を家へ向かって走っているとき、抑えていた感情が爆発しました。お昼あんなに泣いたのに、涙がまだまだ溢れてきてしまって、ついには前が見えない。光がぼやぁっ…とにじみすぎて、いつもの景色が知らない景色になりました。

あぶないなぁ…と思い自転車を降り、アイフォンを手に取り、母へ電話をしました。

すぐに明るい声が聞こえ、安心感でますます涙が溢れてくる…

わたしは「ちょっと聞いて!!」となりふり構わず子どもみたいに泣きじゃくって話すものだから、母はちゃんと聞き取れなくて、でもちゃんと聞いてくれて、わたしは「根本さんがこんな風になっちゃった…」ということ、その日に起きたことを、52分かけてぜんぶ聞いてもらいました。

川沿いの道、たくさんの人がジョギングやサイクリングをしていました。でも何も気にならない。誰の足音も聞こえなくて、世界の音が途絶えた瞬間でした。

ひたすら話したあとで地団駄を踏みながら「どうしたらいいんか分からんー!!!号泣」と言う私に、電話のむこうの母の言葉は強く優しく「あんたがしっかりせんと。一緒におるって決めたんじゃろ?大丈夫だから、しっかりしなさい。いまから歯磨き届けるんじゃろ?気をつけないさいよ。」と繰り返し説き伏せてくれて、落ち着いた頃に電話を切りました。

そうだ、いろんなものを届けなきゃいけないんだ。
根本さんは外に出られないから、わたしはいろんなものを届けないといけないんだ…

そうだ、根本さんは外に出られなぃ………涙

5、6分で着くはずの帰り道。
電話のあとも涙が止まらなくて、歩けなくて、立ち止まって泣いて、1匹で歩いているネコを見てまた悲しくなって泣いて、結局1時間半かけておうちに到着し、玄関に入ってからまた「根本さんはもうここに帰ってこれないーーーーーーーー涙」と思ってまた泣いて。

「ヒザから崩れ落ちる」という言葉を体感した、ひとりの帰宅でした。

つづく...

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