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【挿絵あり】№40_召喚術の授業は××な魔物と、 …過去を引きずる人に贈る、ヒーリングBL…

【月下美人系魔物 VS 安全第一なぼっち学生】の召喚契約を巡る攻防を描く、現代的で現実的なファンタジー召喚BLです。


 
「映写もできるが、直がいいならば…」
 

魔物は僕に保護魔術や魔力の漏出防止術を掛けた後、書斎の扉を見学場所へと繋げてくれた。
彼に続いて書斎の扉をくぐった先には、薄暗い栽培室のような部屋が広がっていた。
その暗がりに浮かび上がっていたのは、水槽…みたいなものだった。

「ここは、現在の魔界環境では生育が難しい動植物の飼育室だ。
 ここにいる魔物達はどれも、他にはない生体機能や特殊能力を持っている」

飼育室には幅1メートル位、高さは魔物の背より少し高いくらいの棚が、3列ほど設置されていた。
その棚の収納部分には、水槽をはめ込んだように区切られた空間が並んでいる。
立ち並ぶ空間は、大きさや明るさが個々に少し異なっているようだった。
そして、その内部では植物や昆虫位の小さな生き物が暮らしていた。

「ッ!?!」

(っあ、あれって100年以上も目撃されていない、玉鋼蜘蛛《ぎょくこうぐも》じゃ…!)
その青みを帯びた濃灰色の蜘蛛は、強靭さと高い伸縮性を兼ね備えた糸を出す事で知られていた。
しかも上位個体にもなると、魔術と糸の張り方を組み合わせて簡易的な亜空間を作れるらしい。
青鈍色の短毛に覆われた体は、ベルベットのような光沢を放っていて美しかった。

(す、すごい…!挿絵しかなかった古い種までいる…)
玉鋼蜘蛛以外にも、自分も知っている位のレアな魔物達もちらほら見かけた。
さらには図鑑で見た絶滅危惧種、教科書ではすでに絶滅種していると書かれていた動植物までいた。

「……、………」
チラリと目をやった飼育棚が置かれていない壁際には、机や本棚が置かれていた。
机の上はざっと整理されていたが、書きかけの紙や筆記具なども転がっている。
それは記録を取るのに日々使われているのだろうと、想像できる様相だった。
本棚にも本であったり、記録綴りのようなものが詰まっている。

(ほ、ほんとに種の保全とか、研究をしてるんだ…)
魔物が家畜以外の飼育や研究をしている話なんて、聞いたことがなかった。
だから絶滅種や希少種の研究、しかも保全活動をしているなんて正直なところ半信半疑だった。
 

驚きのまま僕は、飼育室の管理者に質問した。
「…あの、どうして他の種の保全や研究をしているんですか?」
そこで考える様子を見せた魔物は、少しして逆にこちらに問うてきた。

「お前たち人間は、私の…”L”の本体、本性を何だとみている?」

強い魔物の中には、本来の姿とは別の姿をとって暮らしている者もいる。
”月桂樹の魔物”もそうだと言われているが、分かっているのは人型もとるという事くらいだけだ。
本来の姿についても、ドライアドの上位種だとか湿原内の巨木の一つではないかと推測されていた。

「まあ、そんなところか。
 …私は本体の生態上、防衛や伏撃…待ち伏せ攻撃は得意だが、機動力のある攻撃や先制の攻撃手段が限られている。」
「っ!!?」

(え、ぇ、え…!こ、これ、聞いてもいい情報なのか…!?)
目の前の魔物は、まだ”自称・月桂樹の魔物”の域を出ない。
だが本物だったら、もの凄く貴重な証言である。
あの月桂樹の魔物の生態情報など、研究者おろか一般の召喚師だって垂涎する情報だ。

僕はゴクリと生唾を飲み込んで、続きを待った。
 
 


今回はここまでにします~
ではまた~ 

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