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【挿絵あり】№39_召喚術の授業は××な魔物と、 …過去を引きずる人に贈る、ヒーリングBL…


【月下美人系魔物 VS 安全第一なぼっち学生】の召喚契約を巡る攻防を描く、現代的で現実的なファンタジー召喚BLです。


 
(ということは………)
僕の安全を最優先して設計されたこの亜空間。
魔界の魔力が遮断されているだけでなく、入ってきた魔力も僕の…人の魔力に同質化される。
つまり亜空間そのものが、人間の魔力の保管兼増幅装置。
何気なく過ごしていたこの空間自体が、一番危険な代物だったのだ。

(…あ、あはは、はは……)
もう、乾いた笑いしか出てこない。何と言うかもう、卒倒しそうだった。

魔物が言ったことの真偽は分からないだろ!
幻術説だってまだ捨てるべきじゃない!
それにこの危険過ぎる想定への対策を考えるべきだ!

理性から叱咤の声が続々と上がってくる。
でも僕はもう、何も考えられなかった。
「…………」

(こんなのむしろ、幻術であった方が救いがあるんじゃないか…?)

真っ暗な夜の断崖絶壁。
先細る道も足元さえも定かではないそこに、取り残されてしまった気分だった。
留まっても、進んでも絶望が待っている…
本当に、どうしたらいいか分からなくなってしまった。

「…お前は自分の魔力によって、魔物が人間の世界へ行き、危害を加えることを恐れているようだな。
 だが、私は他世界へ行くつもりもないし、他の魔物にもそれをさせる気はないぞ。」
「!?!ッ」

ふいに、魔物がそう言い放った。
それはまるで、闇を照らす月光のような言葉だった。
あぁ、そのままその言葉を信じてしまいたい……
そう心がグラリと揺れた。

「…っ………、……ッ…」
ダメだ…、感情に流されるな……

”火の海と化した国、魔物が跋扈する都市、一飲みに食われていく人間、魔力や精魂を根こそぎ奪われた屍の山…”

(思い出せ…!自分が引き起こす可能性がある地獄を……!)
拳を握りしめて、僕はなんとか理性にしがみつこうとした。

「しかしそうは言っても、その根拠もそれを証明できるものも無い。
 私の言葉をどう捉えるかは、結局お前が考え判断するしかない。」
そんな僕の葛藤などつゆ知らずといった様子で、魔物は淡々と事実を述べた。

「!、っ、そうですね…」
意外なところからやって来た思わぬ助け舟。
僕はそそくさとそれに乗り込み、なんとか冷静さを取り戻そうと呼吸を深くした。
その様子を少し不思議そうに見てから、魔物は思い出したように呟いた。

「……だが判断材料なら、もう少し与えてやれるかもしれない」

 

 

「ちょっ、ちょっと待って、待ってください!ナチュラルに人の神経いじらないで!怖いです!!」

魔物が言った判断材料とは、僕の魔力の主な使用目的である希少種の保全や研究についてだった。
「見てみるか?」と問われ、頷いた僕の目元になぜか白い手が触れてくる。

「?見学に行くんじゃないんですか?」
「違う場所にいる私の分身体の研究室を見せようかと思ってな。視覚を共有するためにお前の視神経と私の…」
さも当たり前のように魔力を込め始めた手から、僕は慌てて逃れた。

「ちょっ、ちょっと待って、待ってください!ナチュラルに人の神経いじらないで!怖いです!!」
この魔物には、下々の意思など存在しないかのような行動を取るところがあった。
僕へはだいぶ気をつけているようだが、それでもふとした拍子に出るようなので油断は禁物だ。

(耳の時もそうだったけど、普通に怖いから止めてほしい)
神経をいじる技量の方はあまり心配していないが、気軽にいじられるのは生理的に受け付けられない。
「そ、そうか…」
本気で怖がった僕に、魔物は気まずげに答えてから少し思案する様子を見せた。

「映写もできるが、直がいいならば…」
 
 


今回はここまでにします~
ではまた~ 

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