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優れた戦略を実現したければ人を育てよう!(アクションラーニングのすすめ)

以前、次世代の経営者の方から10年後の経営戦略のお話を聞く機会がありました。自社の課題もよく理解されていてしっかり考えられています。
今の事業からするとかなり幅広い分野での事業を想定されていますが、自社の技術力や世の中で求められている傾向などをしっかり分析されていて、あながち夢物語でもないなと思って聞いていました。

一通り話終わられたので質問しました。

私:「すごく夢が持てる戦略ですね。ところでこれ誰がやるのですか?」
次世代経営者:「え?」(絶句)
私:「社長がお一人でやるのですか?でもやるには御社の技術力は欠かせないですよね?」

何が言いたいかというと、この次世代経営者の方が話された戦略はビジョンとしては良かったのですが、現状の組織の状態や人材の視点がそっくり抜けていたのです。だから、10年後にこの状態は無理でしょ・・・と率直に思いました。

この経営者さんが未熟と言ってしまえばそれまでなんですが、戦略をきちんと示せば社員は勝手に動くと考えている経営者の方は意外と多いと聞きます。

より高い戦略を実現するためには

経営者は戦略を考え、社員に示すのは重要な役割です。ただここで忘れてほしくないのは、

より高い戦略を実現するためには
より高い戦術を実行できるようになる必要があります。
しかし、戦術は人材に縛られるのです。
だから人材育成が重要なんです。

ちなみにより高い戦術を実行できるチームになるためにはチームビルディングが必要だと思っています。

研修は効果があるのか?

人材育成と聞いて最初に思いつくのは「研修」です。
研修をやればすべて解決するのでしょうか。

恐らくほとんどの方はムリ!!!と感じているでしょう。

研修にできることは、知らない→知っている状態にすることです。気づくところまでです。インプットまではできますが、その先のアウトプットがなければ何の意味もありません。
アウトプットを繰り返すことで「できる」状態までたどり着き、この時初めて成果が出てきます。

アウトプットの場の設計

ですから、人を育てようと思ったらインプットの機会を与えて、それをアウトプットする場を意図的に設計する必要があります。

上の図はゴルブの「経験学習」という理論を元に編集してあります。

実践:学んだことを職場で活用してみる。
経験:実践したものから得られる具体的な体験
振返り:経験から何が得られたかを振返る。リフレクション、内省
概念化:リフレクション、内省から得られたものを更に応用するとどうなるか。

インプットした知識(研修)をやりっぱなしではなく、振返り→概念化を行い、それを更に現場で実践してみる。この繰り返しを行うことで、初めて人材の成長が進みます。

これをアクションラーニングと呼んでいます。これでインプットとアウトプットの両方をセットすることが重要だと理解できるかと思います。

外部のコンサルタントが関わる意味

私はこの「ラーニング」の部分をサポートすることをしていますが、これだけを見ると社内で十分できるのではないかと思います。

実際やろうと思ったらできます。私も会社員時代にやろうとしていました。現実的な話になってしまいますが、例えばこのアクションラーニングが部門横断で行うプロジェクトになると、社内の人間が仕切りを行うとどうしても甘えが出ます。いくら経営者の号令で始めたとしても、現場を預かっているリーダー層からすると、実務の時間を取られることを嫌がります。

業務に支障のない日程を組んでくれとか、その日はどうしても忙しいから出られないから後で教えてくれとか・・・。スケジュール調整だけで時間も気持ちもすり切れてしまいます。(経験から言っています)

外部の人間が関わるのであればコストもかけていますし、上位者命令でやらざるを得なくなります。言葉は悪いですが強制的に「場」をつくることができます。

更に、振返りの場を本当の意味で機能させるには外部の力を借りた方が早いのです。
社内の人間だけでやろうとすると、自分をよく見せたいとか、失敗したことをバカにされたくないとか、こんなことを言ったらあの人は気を悪くするだろうとか・・・様々な忖度が働いて、せっかくの「場」が無駄な時間になってしまい、成長するまでの時間がかかります。
よく無駄な会議が問題視されますが、それがこの状態に近いと言えます。

私たちのようなコンサルタントは、チームとしてその場が機能するように必要な知識を提供しながら、メンバーの対話を促進させ、話されている問題が表面的な話になっていないか?本当にその問題を引き起こしていることは何か?という視点で問いかけをします。

人は質問されたら、その問いに答えようと考えますので、その考えた上で出された答えから、新たな気づきを得ることになります。この問いかけは第三者だからできることで、社内の背景を知りすぎている内部の人材にはなかなか難しいことです。(もしかしたらできる人もいるかもしれませんが・・・私にはできませんでした)

人の成長は遅れてやってくる

このように、人材育成には手間と時間がかかります。もちろん外部から優秀な人材を採用するということもあるとは思いますが、これも難しいことであるということは理解していただけるのではないでしょうか。

優れた経営戦略の実現には、最終的には人材にひっぱられます。せっかくの戦略が絵に描いた餅にならないよう、戦略と人材育成はセットで考えていただけたらと思います。


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