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【読書録】他者と生きる

はじめに

 今回は「他者と生きる」について紹介します。本書は予防医学者の著者が個人とは何かについて考察している本です。かなり哲学に近いのような内容だったので読むのに苦労しました。。。
 分からないながらに感想を書いたので読んでいただけると嬉しいです!

「健康第一」という論理を突き詰めると「人は病気になるし、人は死ぬ」ことと衝突する

 言われてみればその通りであると感じました。健康は豊かな人生に必要な要素の一つであると考えるのが一般的であるが、必ずしもそうではない可能性もあります。人生の長さと豊かさは比例するものではないと思います。体調を崩すことで見えてくるものもあるはずです。結局のところ、自分の人生の価値は自分で決めるしかないということだと解釈しました。

リスクは本質的にグラデーションであり、何をどのような形でリスクとして提示するかは専門家によって異なる

 おそらくほとんどの分野は知識が増えるほど、正しいと断言できることが減っていくと思います。知識があるということはそれだけ考えつく可能性が多いということです。従って専門家によってリスクをどのように提示するか異なるのはある程度は仕方が無いと思います。重要なのは専門家の意見を鵜呑みにするのではなく、自分で調べて考えることにあるのではないでしょうか。TVのワイドショーを見るたびにそう感じます。

「自分らしい」と認められるためには、その選択や行動に社会的承認が伴う必要がある

 非常に鋭い指摘であると感じました。自分らしさとは本来自分一人で決められるもののはずです。しかし、人から「〇〇らしいね」と言われて初めて気づくこともあります。そしてその言葉が以外にもずっと記憶に残り、自分を変えるきっかけになる経験がある方は少なくないのではないでしょうか。人から認められて初めて自分らしさを手に入れる、ここに何か矛盾があるような気がしてなりません。もしかしたら、noteのように完全に自分一人で発信できる場でこそ自分らしさを発揮できるのかもしれません。

平均より短い生の人たちの人生は、平均より長く生きた人たちより価値がないといえるのか

 人生の長さと価値が必ずしも比例しないというのは多くの人が納得することであると思います。しかし、一般的には長生きすることが尊いとされています。多くの人が寿命を全うできる現代においては人生は長さではなく、豊かさが重要視されてきているように感じます。私自身長生きがしたいと感じたことは一度もありません。価値のある人生とは何か?と自分に改めて問いたくなりました。

さいごに

 本書の序盤は予防医学の専門的な内容が多くかみ砕くのが難しかったですが、内容は納得感のある部分が多かったです。長生きすることが幸せであると信じていたわけではない一方で、若くして亡くなった方の話を聞くと残念であると感じていたことも事実でした。これからはその人の人生が豊かであったのかという視点を持って人の死について考えたいと思いました。
 また「豊かな人生」という大きなテーマについても考えさせられました。まだ自分の中でこれだという答えは見つけられていませんが、この問いに対して棋士の羽生善治氏が「豊かな人生とは後悔がたくさんあること」と答えていました。一見逆なのではないかと思いますが、後悔がたくさんあるということはそれだけ選択肢が多い人生であったと捉えられます。例えばスラム街の子供が犯罪を犯して生きてきたのを考えるとそれ以外に方法がないからではないかという答えが返ってくると思います。後悔というのはもっと良い方法があったのではないかと思ったときにするものです。たまに今までの人生を振り返るときに後悔の数だけ選択肢があり、豊かな人生だったと思えば少しは気が軽くなるのではないかと感じました。

参考文献

磯野真穂(2022) 「他者と生きる」 集英社

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