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トラウマの解消方法? 書籍「心の傷は遺伝する」解説-07

このnoteはアメリカで心理療法の臨床をしているマーク・ウォリンさんという方が書いた「心の傷は遺伝する」という書籍について、阿含宗会員信徒ならではの視点で解説をする連載の第7回目となります。

他者への恨み、病苦、失敗した人生への後悔をトラウマ、心の傷として抱えて死ぬと、その想いは阿含宗用語で言うと「怨念」、マーク・ウォリンさんの言葉で言うと「苦悩の衝撃波」となり、世代を超えて継承されます。このトラウマを継承する現象を阿含宗用語で言うと「霊障」、マーク・ウォリンさんの言葉で言うと「トラウマの世代間連鎖」と呼びます。
これらのトラウマによって、人生において様々な問題が発生します。
ここまでは第5回までに説明をしましたので、そちらを参照ください。

この第7回はマーク・ウォリンさんたちが考案して実践しているらしい世代間連鎖したトラウマの解消方法について、ざっと説明します。
そしてこの解決方法について、先に結論を述べます。

阿含宗会員信徒視点では、この方法は危険すぎて推奨できません


ひたすらトラウマをほじくり返す

マーク・ウォリンの書籍の実に3/4以上のページを使ってトラウマの解消方法を述べています。

わたしたちの内部で暴れる過去のトラウマは、その根がどこにあるのかを示唆する手がかりを、感情的な言葉や文章の形で残すことが多い。これまで見てきたように、こうしたトラウマの多くは、本来、わたしたちに帰属するものではない。わたしはトラウマが言葉となって表出したものを「コア・ランゲージ(核となる言葉)」と呼ぶ。もっとも、コア・ランゲージは、言葉以外の形態を取ることもある。体の感覚、行動、感情、衝動、果ては病気の症状に至るまで。

心の傷は遺伝する P.63

マーク・ウォリンさんは、心理テストみたいな問題文をたくさん列挙し、心の反応を見ながら答えることで、コア・ランゲージ(核となる言葉)を分析、理解するための情報を収集することができると述べています。

心の奥に突き刺さるような質問を一生懸命考えることでトラウマが溢れてくるから、そのトラウマによって発生する感情や肉体に起きる反応を列挙せよ、さすれば自分や家族のトラウマがよくわかる、ということです。
潜在意識、深層意識に投げかけるように問いかけて、自分のトラウマの正体を探し出すよう求められます。

実際には、マーク・ウォリンさんたちが、患者の状況を見ながら臨機応変に誘導質問をしていくことで「これだ!」という核となる言葉や状況、情景が言葉として出てくる。そして核となる言葉に該当するような人生を送った親類縁者の有無を考えてみると「いた!あの人!」という発見がある。
それがわかると、そのトラウマの根源となる事件の内容によって、トラウマの解消方法がいくつか選択できる、ということのようです。

書籍には、色々な事例が書かれているのですが、無理やりにトラウマをほじくりかえして、別の何かで上書きすればトラウマは消滅する等々と、とにかく手法や事例がたくさん書かれています。興味がある方は実際の書籍を参照ください。ここでは、これらの手法について記述しません。

無茶なこと、この上ない

阿含宗会員信徒視点では、これらの方法は無理筋です。
阿含宗開祖が宗教家として活動を始めた頃は、似たようなトラウマ解消の手法を行っていたようなのですが、やってみると時間もかかる上に不確実であるし、人によっては発狂して暴れたりするので物理的にも危険を伴うので、遠い昔に捨てた手法です。

このnoteを読んでくれている方々の大半は、第二次大戦で出征した人たちの孫やひ孫世代の人が大半だと思います。第5回までのnoteで繰り返し説明していますが「霊障」「トラウマの世代間連鎖」の発生源のボリュームゾーンは祖父や曽祖父の代です。つまり第二次大戦で出征した人たちの孫、ひ孫世代の我々は、第二次大戦で莫大に発生した不幸、そこから発生したトラウマが直撃している世代です。この認識は非常に重要です。

あなたの祖父、曽祖父、その兄弟で中国戦線で戦っている人はいませんか?彼らが中国戦線で何をしてきたのか、詳細に知っていますか?
「お国のために立派に戦って戦死した」
本当にそうか?
大日本帝国陸軍の皆さんは、中国人の一般庶民の民家に集団で押し入り強盗をして、家族の目の前で若い娘さんを集団レイプして、口封じのために家族全員を皆殺しにしても、スパイを発見してやっつけてきました!と報告すれば正義です。
日本に帰国することなく戦死していたなら、そんな悪行は日本の家族に伝わらないし、仮に帰国しても、部隊の皆で集団レイプしてそのまま殺戮って楽しかったなぁなんて思い出話を家族に語る人は、そうそういないだろうから、単純にあなたの家族が誰も、祖父や曽祖父やその兄弟たちが犯した悪業を知らないだけの可能性もある。
でも、そうやって、惨たらしく殺害された人たちの怨念は「霊障」「トラウマの世代間連鎖」となって、あなたの魂に突き刺さっているから、今のあなたの苦境があるのかもしれない。
この悲惨なトラウマを解消するためには、どうすればよいのでしょうか?
マーク・ウォリンさんの手法だと、集団レイプされた上で惨たらしく殺害されたその時の屈辱、恐怖、苦しみ、悲しみを思い出して、追体験せよ、さすれば汝は救われるであろう!ってなことを言っているわけです。
これを読んでいる読者さんに問いかけたいのだが、あなたは、そんな追体験をしたいですか?
マーク・ウォリンさんよ、きみたち、本気でそんな事を言っているのか?
と、ボクは、彼らの手法に強く不信感を持ちます。

南方戦線で戦病死をした人は、病苦や望郷の念が非常に強い怨念を残します。阿含宗開祖の霊視では、戦場において「天皇陛下万歳!」と叫びながら突撃して戦死する人は死ぬ覚悟があって戦死するから、それほど怨念は強くないけれど(怨念が無いとは言ってない)、戦病死はとにかく怨念が強いと語っています。
南方戦線での戦病死というのは、長い間、それこそ、まだ生きているのに肉体にウジがわき、虫に体を食べられる感触を持ちながら苦しみ苦しみ、苦しみ抜いて死んでいきます。
その怨念が「霊障」「トラウマの世代間連鎖」となって、あなたの魂に突き刺さって、あなたは、これから、似たような苦しみの運命を送るという運命の反復現象に遭遇する可能性があるとしましょう。
マーク・ウォリンさんの方法で解決しようと思ったならば、肉体にウジがわき、ウジが体中をはいまわり、自分の肉や内臓が食べられる感触を思い出して、苦しみ、悲しみ、望郷の念、その他ありとあらゆる強烈なマイナスの感情を追体験するのです。さすれば汝は救われるでありましょう。
そんな追体験、あなたはしたいですか?

更に問題なのは、トラウマという精神状態を発症していないけれど、阿含宗でいう横変死おうへんしの「霊障」がしっかりある場合です。阿含宗で言う横変死おうへんしの「霊障」があると、事故死・自殺・他殺・災害死・流行り病による病死といった最期を迎える可能性が極めて高くなります。
たとえば交通法規上は全く問題ない場所で信号待ちをしているのに、他者が運転する自動車が突っ込んできて死亡する人がいます。阿含宗的には横変死おうへんしの「霊障」が大きな原因です。
しかしながら、そもそもこの人にトラウマと言える症状がなかった場合、この人はマーク・ウォリンさんたちの診察の範疇に入らない。自動車に突っ込まれて即死する人の中に、自分はいつか自動車に轢かれて死ぬ運命にあるというトラウマをかかえて生きている人が、どれだけいるだろうか?
だからマーク・ウォリンさんの方法で、これらの人たちの問題が浮上してくるかどうかは謎です。
それでも、仮に世代間連鎖したトラウマを思い出すとしましょう。
そうです。衝撃的な事故死の瞬間を思い出してください。はい、今、激しい痛みとともに、手足がちぎれて飛んでいったのを思い出しました。
さすれば・・・いやいや、他者の運転する自動車が突っ込んで来て自分が死ぬのであって、自分のトラウマ解消は他者の運転に関係ないですよね。
他責による事故死は、阿含宗の教義教学からすれば「霊障」による運命の反復現象で説明できます。でも心の病ではないのだからマーク・ウォリンさんたちの言うトラウマ論では説明できないとボクは考えています。

まあ、このような厳しいトラウマ追体験ではあるけれども、自分自身が救われる為ならば、どんなにつらくとも耐えて見せる、という人もいるかもしれません。怖いもの見たさでトラウマの追体験をしたいという猛者がいても良いと思います。それは個人の自由、自己責任です。

では、ここで、もうひとつ質問します。
まだ幼い我が子に上記のような厳しいトラウマの追体験をさせてでも、我が子の問題解決をしたい、と、あなたは願いますか?

人間が「霊障」「トラウマの世代間連鎖」の記憶、及び前世の記憶を持っていないのは神仏の慈悲だと思いなさい、というのが阿含宗開祖の教えです。思い出さなくても良いことを思い出せないでいることは、幸福なことなのです。
そして阿含宗では、マーク・ウォリンさんとは全く異なる方法で「霊障」を取り除いています。目的、目標は同じですが手法や視点が違うのです。ただこのnoteはマーク・ウォリンさんの書籍解説ですので、阿含宗での解決方法は、ここでは述べません。

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