人は「違い」を感じ、喜び、そして豊かになる。 『まゆ先生のカラフル音楽教室』
子育て期、テレビや教材から流れる子ども向け音楽を我が子と聴きながら、ずっと考えていました。
ベートベンの交響曲にしても、大好きなバンドの演奏にしても、自分がどうしてその楽曲に魅力を感じたのかを“追求”できる人であってほしい。そして、自分の中から湧き上がる感情を音にのせ、表現する喜びを味わってもらいたい……。
ふと胸が熱くなる音楽を耳にしたとき、なぜ胸が熱くなるのかに気づけたら、そして、作曲者や演奏者が伝えようとする機微に共鳴できたら、やっぱりちょっと素敵じゃありませんか?
かつて、我が子の手を引きながら、“音楽教室難民”をしていた私が、「もっと早く出会いたかった!」と心底思った、まゆ先生こと下村真有美さん。
カラフル音楽家 まゆ先生(下村真有美さん)
プロフィール
国立音楽大学応用演奏学科卒。在学中よりイベント演奏で幅広く活動、チームラボの映像作品(若沖幻想)への楽曲提供(銀座資生堂ビル、フランス・パリ資生堂ラボーテ等にて展示)。ヤマハ関連イベントへの出演。長男出産後は、児童館、図書館、幼稚園、保育園、小学校、音楽祭、アートイベント、0歳から参加できる子育てイベントなどを中心に出演。『けいこ先生とまゆ先生シリーズ』が人気を集めている。現在、バイリンガルスクール(2歳〜6歳)の音楽講師も務める。
今秋から、赤ちゃん向けの音楽教室を始めると聞きつけ、満を持して取材させていただくことにしました。
じつは私もまゆ先生と同じ音楽大学出身です。同窓生でもある共通の友人が、まゆ先生が代表を務める「イタイのイタイのとんでゆけ!プロジェクト」の音楽性に惚れ込みコンサートを企画。そこに足を運んだ私もまんまと虜になった次第です。
そんなわけで、いってきました、
おじゃましたのは、移動教室として定期開催する、1-2歳クラスの初回です。(会場の紹介は記事の最後に。)
到着してしばらくの間、ママのお膝の中で、じっとまゆ先生を観察する赤ちゃんたち。初めての場所に初めて会う人。「うちの子、楽しんでくれるかな」と、ママもちょっと緊張気味です。
だからまゆ先生、おもしろエピソードを混じえたトークで、まずはママたちのピンと張った空気をほぐします。ふっ…とママの力が抜けると、不思議と赤ちゃんの顔が開いてきます。
はじめは、まゆ先生のオリジナル曲「おはよう」のうたから。 “おはよう”とやさしくかけあうメロディは、2種の音階で表現。ニュアンスの異なる響きをみんなが“感じる”よう、まゆ先生は丁寧に奏でます。
「音楽が本格的!」と定評のまゆ先生のレッスンやコンサート。メロディはすぐに口ずさめる簡単なものなのに、なぜ? その秘密は、伴奏の和音表現の幅広さにあるのかも。
曲を形づくる大切な要素となる和音。その和音をどう連ねるか(これを「和声」と言います)で、曲が醸す美しさが左右されます。幾重にも色を重ねて、美しい絵を仕上げるように。
和声はまさに作曲家の腕の見せどころ。まゆ先生の音楽は、この和声がとっても粋で、子ども向けの曲で大人のハートを射抜いちゃうんです。
おっと、レッスンのレポートに戻ります。
声を出して、なんとなく「わ」ができたと思いきや……
みんな電子ピアノの隣に鎮座する、大きな絵本が気になってしかたがない様子。興味を持ったことにまっしぐらな赤ちゃんたちです。
そこで、次は絵本を読むことにしたまゆ先生。急遽プログラムの順番を変えた模様です。
「予定は未定!100%予定通りにはいきませんから^_^」
というまゆ先生。パートナーのけいこ先生とコンサートを開くときは、子どもの様子に合わせてアイコンタクトで曲順を変えられるほど、臨機応変の達人です。
ママのお膝と絵本を行ったり来たりする赤ちゃんたち。自分の意思で動けても、まだまだママと一心同体。楽しさを共有する、この年齢ならではの仕草がたまりません。
絵本の世界を広げて、まゆ先生が太鼓やピアノを鳴らします。体いっぱい使いながら“音”を表現。
体の動きと音色がリンクした瞬間、みんなニッコリ。
「頼んでないのにママたちがパンパンパンって言ってくれたー!」
まゆ先生、ママの小さな反応も見逃しません。親子の様子を見ながら場のトーンをチューニング。安心感に満たされて、自然と体が動いちゃう!
大きいと小さい。高いと低い。月齢で動きも反応もそれぞれですが、「赤ちゃんたちは、“違い”をしっかりキャッチしてくれる」とまゆ先生は言います。
もうここまできたら、抜群の連帯感です。
まゆ先生、唯一無二のキャラクターっぷりを発揮中。
「お片づけするときにこれは使えますよ〜」なんて、レッスンの合間に子育てアドバイスも飛び出します。お家でのイライラを思い浮かべたママたち、思わずクスッ。
トークも秀逸ながら、ポーズも秀逸なまゆ先生です。
魔法にかかったようにみんなが釘付けになった瞬間。鳴り響くのは、トーンチャイム。
「ママもしっかり楽しめるレッスン」がモットーのまゆ先生。手渡された初めての楽器に、ママたちの目はキラキラ。
とてもやわらかな音が空間をただようように響くので、鳴らしたあと、思わず空中をながめちゃいます。
いつも様々な楽器をつかって、音楽のカラフルさを伝えるのがまゆ先生のスタイル。
腹八分目で次に進んでいくテンポ感が絶妙です。
圧倒するような賑やかさで赤ちゃんの心をわしづかみ!ではなく、ほどよく寄り添う、この感じはなんだろう……。
「いつも子どもが何をしようとしているのかを拾うようにしています^_^」
そのスタンスは、レッスンに織り交ぜる軽やかなトークにのって、ママたちにも伝播します。
大学時代、本家本元のリトミックのメソッドを学んだまゆ先生。ここまで読んでくださった方はお気づきの通り、当教室も年齢に応じたリトミックを核としていますが、あえて教室名に「リトミック」の文字を入れませんでした。それは、今の時代、この言葉がずいぶんと広義に使われ、「歌ったり踊ったりすること=リトミック」になっていることへの、ささやかな抵抗なのだそう。
そんなまゆ先生、もはや魔法使いに見えてきました。こちら、見た目は鍵盤ハーモニカでも、その音色は笛のよう。まさに、ピタ○ラスイッチの、あの音なんです。
最後はしっかりスキンシップ。
「さようなら」のうたのときには、みんなノリノリでした♪
「レッスンもコンサートのように」がまゆ先生流。音とリズムのエッセンスが散りばめられた約1時間のレッスンはこれでおしまい。
「暑いなか、がんばって来てよかったです」「子どもと楽しめて、幸せな時間でした」と、ママたちの清々しい笑顔が印象的でした。
今回、取材にご協力くださったみなさん。本当にありがとうございました!
最後になりましたが、教室の概要について。
会場は、「とっても素敵な場所に出会えたんです!」とまゆ先生大絶賛のCAFE & GALLERY たまねヒュッテ。善福寺川にほど近い、杉並区堀ノ内の閑静な住宅街にあります。
うっかり通り過ぎてしまいそうな路地に佇むので、近くにきたらキョロキョロすることをお勧めします。
自身も子育て中という夫妻が営むアットホームなカフェで、地元ファミリーに愛されながら、今夏2周年を迎えたそうですよ。
楽しい経験を重ねて、子どもたちの心がカラフルに(豊かに)なりますように──。カラフルなファッションに身を包むまゆ先生の想いが込められた教室は、キャンセル待ちも出るほどの人気ぶり。今回の「1-2歳クラス」のほかに、「0歳クラス」も開かれています。
予約開始時期など、詳しくはまゆ先生のカラフル音楽教室 Facebookページをチェックしてくださいね。
杉並区を中心に、様々な場所で活動を展開中のまゆ先生。
動画も投稿されているので、ぜひのぞいてみてくださいね。
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あとがき
まゆ先生の音楽に初めてふれたのは3年ほど前。
『優しい原色と、心の琴線にふれるメロディ、クスッと笑えて目頭が熱くなる“子育てあるある”をのせた歌詞が、ゆりかごのように親子を包む』
『なにか、届けたい大切なメッセージを、丁寧にほんの少しだけ手渡す感じ(あとはあなたの心で育ててね、という意味で)』
当時、まゆ先生が奏でる世界を表現しようと駆使した文章です。
音楽を言葉で伝えようとすると、どうしたって野暮になる。そんな持論を持ちつつ、あえて挑戦したいと思っていたところの、今回の取材。
音色の変化にハッとしたり、空気がゆるみ安堵感に包まれたり。変化に敏感で、とびきりピュアな赤ちゃんの眼差しに、音楽の原点を教えてもらった気がします。
そういえば、このレッスンの様子や感想をまゆ先生がFacebookページに投稿しておられます。そこにはチラッと私も登場。どんな取材だったかなんて、あんまり取り上げてもらうことがなかったので、ちょっと嬉しい。。。
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