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連帯冷蔵庫 - 2020年11月24日のニュースレター

前回のニュースレターで紹介したTab for a Causeのサービスをたくさんの方が使い始めてくださったようで、本当にありがとうございます… !
ハートポイントが結構貯まりましたので、いくつかに分けて寄付したいと思います。

さて、大きな災害や流行病というのは、
地震や台風やウイルスといった目に見えないものが家屋や土地や肉体に代表される形のあるものを壊していくという構図になるので、
身体や物などの触れられるものの価値がより一層引き立つように感じます。

このパンデミックでは、リアルとバーチャルの両極端で
新しいサービスと価値観が登場して経済や感情、コミュニケーションをどうにかしようとしてきましたね。

バーチャルの方は「オンライン◯◯」と名付けられたもの全般のことで、
オンライン会議、オンライン飲み会、オンライン美術館、オンライン演劇などどの産業もバーチャルで楽しめないかと、
こんなことでもなければ実現しなかったであろう工夫を凝らした試みがたくさん実現しました。

リアルな方は、旅行はおろか、外出も気を使うようになった今年
リアルでできる唯一の事、「ご近所コミュニティ」に関する取り組みです。

私も、3月の緊急事態宣言以後、もともと仲の良かったお隣さんといっそう頻繁に連絡を取り合って、友人のレストランから届けてもらったお料理を分け合ったり、
日中の外出がしにくくなったので満月の夜に気晴らしの散歩に出かけたりと
近くに住んでいないとできなかった数々の助け合いをしてきました。

そんなご近所の交流があることで、
どれだけ気分的に救われたかわかりません。

Nextdoorという、ご近所交流ができるアメリカのSNSは、
4月末の時点で会員数が数週間で7倍に伸びたそうです。


今日ピックアップするのは、もともとはスペインで始まった食品廃棄物を削減するためのプロジェクト「連帯冷蔵庫」がフランスに伝わり、
パンデミック中に、利用者が大幅に増えたという記事です。


【本日のピックアップニュース】


パリの18区で、お腹が空いてお金がないなら、サクレ・クールの裏手にある
「La Cantine du 18」に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

ランチを買うためではなく、
このレストランの「連帯冷蔵庫」を利用するためです。

これはシンプルなシステムです。
企業や地域の人々が、使わずに廃棄されてしまうパッケージされた食品を冷蔵庫に入れ、食べ物を買う余裕がない人は、
そこから取り出して食べることが歓迎されています。

フランスは近年、食品廃棄物を削減しようと取り組んでおり、
スーパーマーケットで賞味期限切れの食品を捨てることを禁止した
最初の国になりました。

2017 年の時点で、フランスの人々は推定一人あたり233ポンド(33,000円程度)の食品を無駄にします。
米国では、一人当たり612ポンドです。

「近所の人や企業が食品を寄付してくれます」
と説明するのは、
レストラン「La Cantine du 18」を経営し、最初のフランスでの連帯冷蔵庫を始めたDounia Mebtoulさんです。

毎日何十人もの人がこの冷蔵庫を訪れてそのほとんどが地元の人々です。
(※この記事は2019年9月に書かれています)

この冷蔵庫には、家庭で調理したもの、期限が切れているもの、肉や魚を入れないといったいくつかの基本的なルールがあります。

しかし全ての人が、この“コミュニティ冷蔵庫”を支持しているわけではありません。

ドイツでも同様の取り組みが行われていましたが、反対派が
「冷蔵庫は一般に公開されているから食品関連ビジネスであり、それに伴う規制を遵守しなければならない」と主張したため、
政府の弾圧の犠牲になったという実績があります。

Mebtoulさんは、フランス各地のレストランのパートナーと協力して
新しい冷蔵庫を設置する場所を探し、飢えた人々のために変化をもたらすチャンスを作り出したいレストランのオーナーを探しているのですが、
ドイツの前例があるにもかかわらず
パリ市はこの取り組みのために新しい冷蔵庫を15台も購入するための助成金を提供してくれました。

2017年にフランスで初めて連帯冷蔵庫が設置されて以来、
現在パリで15台、フランスで53台の冷蔵庫が稼働しています。

ロックダウン中は3台のみ連帯冷蔵庫を使い続けることができましたが
1日あたり80名程度の失業者やホームレスの方々が訪れて
ロックダウン前に比べて2倍の人々に繋がりをもたらしました。

「私たちは人々の間にある社会的つながりを再現したかったのです。

皆を歓迎するLaCantine du18でやっていることと同じです」と
Mebtoulさんは話しています。

***

この連帯冷蔵庫、もともとは食品ロスを削減するという目的で始まっていますが、ロックダウンが始まると互助的な意味合いが強くなりました。

冷蔵庫を通じて、人々は誰かの役に立っていると実感でき
受け取る人も、近所の誰かとの繋がりを一緒に受け取っています。


冒頭に出てきたNextdoorというサービスは
今年3月以降、近隣住民の助け合いをサポートする新機能を追加したり


中小企業向けに、地域社会に向けてマーケティングできる機能を提供したりしています。


今年10月には、Facebookは近所の人とつながるための専用スペース
「Neighborhoods」の限定テストをカナダで展開していると公表しました。


ユーザーは地域を選択して、地元の人々や企業の投稿、グループ、マーケットプレイスのアイテムを閲覧することができるそうです。


日本でも「マチマチ」というSNSが同じように、近所の方と地域の様々な情報を交換することができるサービスを提供してくれています。

このように、ご近所コミュニティ系は
これからもっと流行ってくるかもしれません。

インターネットは、
今いる場所を超えてあっという間に世界の裏側まで届くその力を評価されることの方が多いですが、
肉体を持っているからこそ絶対に存在する位置情報を活かして、
誰かと繋がることができるそのツールになってくれるのも嬉しいです。


土地というのは、1本違うだけで全然違う空気になって、
居心地が良い所とそうではない所が結構はっきりと分かれるものだと思います。

ご近所、というのはもともとそこを選んだというその感覚の近さが、
生物としての近さにも通じるものがあります。

都会に住んでいると、
隣にどんな人が住んでいるのかすら知らないことも多いですが
遠くに行けない今だからこそ
新たなアプローチで新しい友人と出会うことのできる、
良いタイミングかもしれませんね。

***

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