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老人と海

 『老人と海』は書店で、かっこいい装丁に惹かれて購入した。正直に言うとかっこいい装丁に惹かれたが、お金を惜しんでブックオフで福田恆存訳を購入し、面白かったので、高見浩訳版を新品で購入した。坦々とした描写が続き、なかなかうんざりもしたが、中盤以降ぐっと物語に引き込まれた。


 老人が漁に出て、魚を釣って戻ってくる話である。たったそれだけのことをここまで人を引き込み、魅了するのは本当に素晴らしいと思う。ググればたくさん感想やら考察、論文まで様々なものが出ているので、内容についてはこれ以上特に触れない。

 福田恆存訳は1953年、70年も同じ訳で新潮文庫は続けていたわけである。それだけの長い間、福田恆存訳が優れており愛されてきたのだが、2020年の7月についに新訳を出したのである。新潮社もきっと力を入れており、装丁も非常にきれいで美しく、手触りも心地よく、おそらく他の文庫本とは違う紙を使っている。新潮社の思惑通りに、カバーを見てかっこいいだけで買ってしまったが後悔ない。

 中古で買った福田恆存訳のほうは古すぎて、一般的な現代の文庫本より文字が小さく、目が疲れた。高見浩訳のほうはもちろん一般的な大きさだった。

 翻訳を比べると、原著を読んでいないのでどちらが優れているかはわからないが、高見浩訳のほうがコンパクトで現代的な言い回しが多く読みやすかった。福田恆存訳では、ほとんどの文に主語が省略されることなく、「彼は」とついており、翻訳感満載といった感じだった。新しいほうでは適度に略されており日本語の文章として自然な気がしている。

 2020版は持っているだけで所有欲を満たせるので、本当におすすめだと思う。本マニアだけかもしれないけれど。

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