見出し画像

マイクロノベル集/君はいったい何者だ? 007 『願いを叶えてやろう』 001

001(321)
「お前じゃ話にならん」悪魔は困惑した。人間が要求したのは悪魔召喚の魔導書。それを使ってさらに悪魔を召喚し、上役悪魔を召喚し、重役悪魔を召喚し、ついに大魔王様を召喚した。「お前じゃ話にならん」怖い。目的がわからない。


002(331)
「願いを叶えてやろう」悪魔は混乱した。召喚されたらペンギンたちに取り囲まれていた。ここは南極。オスのペンギンたちは氷の大地でたまごを抱えて、愛しい我が子のために吹きすさぶ風をじっとたえている。美しい。ああ、私にできることはなんなのか。


003(355)
きみの歌声が聴きたくて、ぼくらはコップに水を注ぐ。たくさん並べろ。体育館でもまだ広さが足りない。急げ急げ。コップを叩く悪魔も召喚。魂なんかくれてやる。Let's sing! 「賢い生贄が足りねぇ」きみに叱られて、ぼくらは机を並べて講義を開く。立派な生贄になるんだ。


004(420)
悪魔と契約成立。「500円って、ちょっと高くない?」格安ですよ。嫌ならよそに行けば? 「嫌ってわけじゃないけど」毎度あり! 支払いをするなら、自動販売機は悪魔相手でも売る。


005(457)
拾った『悪魔ノート』に「書かれた欲望が実現する」とあったので、「悪魔が現れてノートの原理を説明する」と書き込んだのにまだ実現しない。悪魔め、逃げやがったな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?