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マイクロノベル集/吾輩はミケである 001

001(115)
これはマクラのぬいぐるみです。とってもふわふわです。かわいくて、だっこするとなんだかあんしんします。いいにおいもします。このまま寝ちゃおうかな。こらミケ! ミケはマクラなんだからじっとしてて!!



002(154)
ひたひたと何かがついてくる。おばけ? こわい。こういうときはなんて言うんだっけ? 先においき? ポマード? たち別れ いなばの山の 峰に生ふる まつとし聞かば 今帰り来む? 「にゃーん」あ、ミケだ! ずっと探してたんだよ。なに食べてるの?


003(187)
まず、ミケを箱に入れます。つぎにちゅーるを入れます。最後にしゅれでぃんがーさんを入れたら、ふたを閉じます。すると、中でしゅれでぃんがーさんがミケにちゅーるをあげます。あれ? 空のちゅーると新品のちゅーるがある。2本入れたんだっけ?


004(201)
猫は行方不明の間、なにをしてるかって? 猫嶽山で修行してるんだよ。二本足で歩けるように。化けられるように。「おかあさーん、ミケがまたムニャムニャ喋ってるー」うーん、まだ言葉は通じないかあ。


005(210)
動画投稿番組で賞とちゅーるをもらった。「ミケが歌います。さんはい」にゃおーん。楽勝。「次は5秒間に10回、にゃんと鳴きます」えっ、それムリ! にゃにゃにゃと叫びながら、二本足で直立して脱兎のごとく逃げた。ウケたのは無茶ブリに慌てた顔だってさ。


006(336)
箱の中で遊んでいたらすっかり遅くなってしまった。不自然に置かれた箱に触ってはいけないよ。宇宙に繋がっているからね。今日は宇宙に逃げたネズミを捕まえてきたぞ。えっへん。「ミケ、おかえり。なにくわえてるの? あっ、なくしたぬいぐるみ!」


007(359)
いいですか、今日からあなたはうちの子です。お腹が空いたとき、遊びたいとき、寂しいとき、必ず一緒です。でも、鬼ばばあには気をつけて。「それは誰のこと?」ううん、なんでもないよ、おかあさん。ね、ミケ? 気をつけないと食べられちゃうよ。


008(413)
猫ってなにを考えているのかわからない。近づいたら逃げるし、放っておいたら遊びに来るし。なくした物を見つけるのも上手い。にゃおーん。うわあ、ミケ、お母さんがなくしたポイントカード見つけたの? こっそり山分けしよう。


009(430)
猫の化石が発掘された。庭を掘っていたら出てきた。どうしよう、ニュースになっちゃうかな。かしこすぎて大学に入れちゃうかも? あっ。でももし、この化石がミケだったらどうしよう。にゃーん。なんだ、よかった。ミケは生きてた。


010(444)
あさ目覚めると箱になっていた。真実の愛を箱に入れないと人間に戻れないらしい。愛なんて見たことないのに。たすけておかあさん。にゃーん。あ、ミケだ。おはよう。なんだか変な夢を見たよ。


011(453)
座布団を積み上げて遊んでたら天井まで届いちゃった。もう積めない。どうしよう。「ぼくにおまかせ!」わあ、マジカル・ミケちゃん! 「使わない座布団を捨てればいいんだよ!」……って、ミケが下の方の座布団におしっこしたの。本当だよ。こぼした牛乳じゃないよ。


012(473)
うとうとしてたら、おかあさんのスマホにさわって文字を打ってた。眠るたびにどんどん文章が書き込まれる。むつかしい言葉ばっかり。これはあたしが書いたことになるのかな? にゃーん。なんだ、ミケが犯人か。


013(481)
「エサを出せ! 無能な人類め、30分で食い尽くしたぞ。これ以上作れないなら、我々にも考えがある。お前たちにエサを与えるのだ。どうだ恐ろしいだろう。遊んで暮らしたくなければエサを出せ!」おかあさーん! ミケが『AIの反乱』ってお話を書いてるよ!!


014(483)
あさ目覚めたらミケがとけていた。体が柔らかいのは知っていたけど、これほどとは思わなかった。まるでおかあさんのシャンプーみたい。にゃーん!! 切ない声で鳴いてもムダだよ。このままお風呂でシャワーしようね。


015(491)
人間とコミュニケーションを取りたいのに上手くいかない。修行が足りないな。人類の英知を結集したという流行りのAIに相談してみようかな? 「ミケ、おとうさんのパソコンで寝ちゃダメ。あっ、ご飯食べて眠くなったんでしょー」やっぱり上手くいかないな。

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