南雲マサキのマイクロノベル/ねむみ編003
021(115)
これはマクラのぬいぐるみです。とってもふわふわです。かわいくて、だっこするとなんだかあんしんします。いいにおいもします。このまま寝ちゃおうかな。こらミケ! ミケはマクラなんだからじっとしてて!!
022(117)
知らんのか? ヤツは音もなく現れる。背後から忍び寄り、背中を登り、頭を押さえつける。それでもあんたは気づかない。ヤツは耳元で絶叫する。「ねむいいいいいい!」…とまあ、ここであんたはようやく目が覚める。さっさと布団に入ろうぜ。
023(118)
お母さんが言うには、ぼくの枕のそばにタヌキが出るんだって。夢の中から現れてポンポコ踊っていて、目覚めると夢の中に消えるから、ぼくはまだ見たことがない。でも、お母さんが寝ているときに出てくるキツネは見たことあるよ。
024(119)
「ご覧なさい。眠りというのは、実は連続していません。夢と夢の境目に断絶があるから、あなたは夢のような夢から目覚めてしまう。でも安心なさい。この枕を使えば、夢と夢を繋げられます」それ以来、ぼくの夢の切れ目に通販番組が流れる。
025(120)
「なんだこれ?」なんだお前、知らないのか? これは政府が作った眠気を取る機械だよ。近くに寄るだけで目が冴えて、余計なことを忘れるから頭もすっきりして……「なんだこれ?」
026(127)
風を感じて目が覚めた。窓が開いている。入ってきたのはピーターパン? 「お父さんです」こんな時間になにしてるの? 「鬼ごっこさ」今度はドアが開いてお母さんが入ってきた。「鬼さんです」外でやって。
027(128)
ぼくには夢がある。夢の中で宇宙旅行をすることだ。アポロ型のロケットで星の海を渡るよ。夢を叶えるために僕は努力を怠らない。ふかふかの布団に入り、ああ寝ちゃった。夢の中でのロケット作りは終わった。夢の宇宙旅行はすぐそこだ。
028(130)
眠る前にコップ一杯分の夜を飲みましょう。夜にはねむみが溶け込んでいます。ねむみは眠っている間に体内を巡り、朝となって体から出ていきます。
029(135)
夢で会いましょう。そう約束を交わしてから3年が過ぎた。なのに、どうしても会えない。電車が遅れる。姿が変わって見つけられない。待ち合わせ場所が夢ごと消える。夢はトラブルだらけだ。唯一会えるのは、月に3度の反省会。
030(136)
手を上げろ! そのまま動くんじゃねえぞ。よーし、いい子だ。いい子には寝物語を聞かせてやろう。昔々あるところに……なに? この話は昨日もした? しまった、同じ店に続けて入っちまった! やめろ、俺より先に結末を読むな!! ぐー、すやすやぁ。
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