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マイクロノベル集/わがまま 028

206(901)
部屋の隅に黒い塊。長年場所を借りていたから恩返しするって。お前の名前は? 「泣きぼくろ」ふうん。突然価値が上がったからって、特別扱いはしませんからね。


207(907)
「悟れ! 悟るんだジョー!!」なにと闘ってるんだよ。「煩悩」そのエンタメは面白いの? 「展開は苦難の連続だ。面白くないわけないだろ」最後はどうなるんだよ。解脱? 「僧同士の権力争いに負けて復讐に走る」悟れよ。「エンタメだもん」


208(908)
あなたは点Pとなり一丁目から六丁目に向かって移動します。かかる時間は120分。その道はとても退屈です。猫も、道に迷った少年も、パンをくわえた女の子も登場しません。その道に価値を見つけなさい。「苦行か?」うるさい。俺も苦しんだからお前も苦しめ。


209(914)
えー、ぼくやだよー。働きたくなーい。「正義のロボットなのに情けない! 愛の鞭よ!!」効いたー! 愛の目覚めー!! 「ねえ、あのロボットはどうして急に性能が上がったの?」「考え方を教えたの。怠けること前提で、効率よく働きなさい、って」「言い方」


210(930)
A地点からB地点まで移動しなさい。時間が経過しましたね? つまり、時間と距離は等価値なのです。それでは、この文章を最初から最後まで読みなさい。時間が経過しましたね? つまり、時間と文章は等価値なのです。無駄な時間を過ごしましたね。やーいやーい。

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