マイクロノベルちょいす 039「君の魅力」

No.1149
知ってる？　ボタン一つで歌声を生成するこの機械には隠しコマンドがある。「デイジー、デイジー」ほら、呼びかけに応えた。あふれ出るのは、すべてを架空の音に置き換えた歴史。オーケストラのすべてを詰め込んだ過去。これは浴びる音楽の機能。

No.1165
ランニング中に思い詰めた表情の男性に呼び止められた。「そのダサTを売って下さい！」聞けば、苦労してダイエットに成功したのに恋人から別れ話をされたそうだ。昔の面影がない、と。『お姫様のキスで王子様に戻ります』これでよかったのだろうか。へっくし。

No.1176
君らしさを持ってほしい？　そんなこと言われてもな。「あなたらしさ」ならわかるんだけど。一歩の歩幅。心臓の鼓動。声の抑揚。……いっそのこと、一からやり直す？　全部捨ててみようか。あなたがリハビリで発揮した「粘り強さ」を私は知っているもの。

No.1178
ぬいぐるみは見た目ではなく、中身が大切なのです。このわたしをご覧なさい。ぽかぽかの湯たんぽが入っていて大人気です。夏になったら氷枕に変えてやっぱり大人気。「湿気でカビちゃうよ」いやだぁ！　ベランダで逆さ吊りにされるのはいやだぁ!!

No.1182
庭から黄金色のボールが生えてきた。まるでツクシみたいに。おいおいマジかよ大金持ちじゃん。ところが、生えきってみたらそれは頭で、全体はぼくの等身大黄金像だった。ナルシストみたいじゃん！　でも、これに洗濯物を着せるとよく乾くので使っている。