南雲マサキのマイクロノベル/ねむみ編001
001(060)
さあ、ねるか。そうつぶやいたとき、あなたは既に眠りの中にいるのです。そうとは気付かずに眠りの中で眠りに落ちたあなたは、一度の目覚めしか経験せず、だんだんと深い眠りに落ちて、やがて目覚められなくなってしまうのです。
002(065)
もし自分の眠気を他人に渡せる道具があったなら、あなたはどんなことをしますか? もちろんそんな道具はないので、バカなことは考えずにお休みなさい。はい、眠気をどうぞ。
003(066)
朝、気がついたらカバンの中に猫が入っていた。なにをしているの? 「ごらんのとおり、寝てるのさ。夜にはあんたのいい枕になるよ」ふうん。家に帰ると、いつもの場所に枕はなかった。あの猫は枕だったのか。
004(068)
宿題は済ませたの? 誰と一緒に? 7時には帰ってきなさいね。それじゃあ、お休みなさい。夢の中であまり遠くに行っては駄目よ。
005(071)
わたし、君の夢を見ているの。いま、わたしと君は海が見えるカフェで見つめ合っていて、指が触れたところ。このあと、なにをすればいいかわかるよね? はやくわたしの夢を見てね。
006(072)
「探さないで下さい」手紙を残して枕が失踪した。ぼくは幾日も眠れぬ夜を過ごしたが、ついに枕は帰ってきた。「こんなんになっちゃった」かまうものか。ぼくはブランケットになった枕を抱きしめて眠る。
007(074)
わははは。矢でも鉄砲でも持ってこい。こちとら無敵の戦車・三年寝太郎だ。食らえマクラ砲! 眠気が戦車でやってくる。勝ちたきゃブンブンうるさい戦闘ヘリでも持ってこい。
008(076)
今日のボクは眠たいんだよ。少しでもまぶたを閉じたら眠ってしまう。ボクはぬいぐるみのくまさん。まぶたはないから眠らないよ。きみは安心しておやすみ。
009(080)
ピンク色のお部屋でおやすみ。ぼくらがまだ目覚めているなんて幻想だよ。だって、さっきからなにも起きないじゃないか。まぶたの裏にピンク色のお部屋が見えたら、そこが幸せのある場所。
010(085)
おふとーん株式会社は、長年提携していたドリーム研究所と合併します。今後も人間を捕らえて逃さないよう努めて参ります。あー困りますお客様、夢の中への尿意の持ち込みは想定外の覚醒が――
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