臨床心理士と可愛い絵本①

『臨床心理士と可愛い絵本』と題して、
シリーズでお送りします(更新は気ままです)。

幼い頃に好きだった絵本を
大人になった今あらためて手にした時、
そこには深くて広くて大きなメッセージがあるように感じました。

"大人になったから" だけでなく
"臨床心理士として" の視点も増えた私が、
一冊の可愛い絵本に想いを寄せて、語ります。

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第一回目にご紹介するのは
【ぐるんぱのようちえん】
(西内みなみ:作・堀内誠一:絵 福音館書店)

〈あらすじ〉
"ぐるんぱ" は、大きくて汚い一人ぼっちのゾウです。
時々、「寂しいなぁ」と大粒の涙を流していました。

ある時ジャングルのゾウたちが会議をして、
ぐるんぱの身なりを整え、仕事に出すことが決まりました。

ビスケット屋さん、お皿屋さん、靴屋さん・・・
ぐるんぱは複数のお店で働きます。
でも、いつも、ぐるんぱの作るものは
「大きすぎる」「誰も買わない」と言われ、
しょんぼり、しょんぼり、次の職場を探します。

これまでに作った大きすぎるビスケット、お皿、靴などを抱えて、
ぐるんぱはまた一人ぼっちで仕事探し・・・。

涙が出そうになっていたある日、
ぐるんぱは12人の子どもとそのお母さんに出会います。
お母さんから依頼された子守りを引き受けたぐるんぱ。
ぐるんぱが歌うと、たくさんの子どもたちが集まってきました。
これまでに作った大きすぎるビスケット、お皿、靴などが大活躍。
そこで、ぐるんぱは幼稚園を開きます。

たくさんの子どもたちに囲まれ、
ぐるんぱは、もう寂しくありません。


ぱぉ〜ん

この可愛い絵本を読んで、
臨床心理士Tは、こんなことを考えました。

(1)適性を知って就活することを勧めたい

ぐるんぱは、複数の職場で何度もつらい経験してしまいましたが、
これは、自分の適性をあまり考えずに就職し、
転職の際にも立ち止まらずとりあえず仕事に就いたことに一因があります。

身体の大きいぐるんぱにとって、細かい仕事をするのはなかなか難しい。
身体が大きいという長所を活かした仕事を見つける方が、得策です。

人間で例えるなら、
数学が苦手なのに経理の仕事につくのは苦労が多い。
手先の器用さを活かして技術職につく方が、
気持ちよく仕事を続けることができ、
やりがいを感じる場面も多いかもしれない。
・・・など考えることができます。

ぐるんぱのように悲しい経験を何度も重ねると、
「自分なんてどうせ無理だ」
「何をどう頑張っても誰も認めてくれない」など
自分に対する否定的な感情・周囲に対する被害的な解釈
を募らせてしまう可能性があります。

それを未然に防ぐためにも、
自分の適性を知った上で仕事探しをすることが大事なのです。
適性を知る方法として、
心理検査・知能検査・職業適性検査があります。

ぐるんぱの姿に自分自身が重なるなぁと感じた方は、
一度少し立ち止まって、検査を受け、結果をみて、
臨床心理士と一緒に考える時間を持つと良いかもしれません。

(2)涙も汗も、いつか糧となる

ぐるんぱは、大きなビスケット・大きなお皿・大きな靴など、
今まで誰も必要としてくれなかった“大きな〇〇”を持ってさまよいます。
そしてついに、“大きな〇〇”が大きいがゆえに喜ばれる時が来て、大活躍。

もし、ぐるんぱが過去に作ってきた大きな〇〇を処分していたら、
ぐるんぱはずっとずっと、
何も持たずに一人で泣きながら歩いていたかもしれません。

これを人間に例えるなら、
失敗した経験、あまりに辛くて思い出すのも苦痛なあの日のこと、
たくさん泣いた出来事、腹が立ちすぎて今でも頭がカーッとすること、
あなたの涙も、汗も、いつか何かに活かせる時が来る
ということに読み替えることができます。

一見むだに思えたり、
当時はほとんど意義が見出せなかったり、
つらい出来事として記憶に残っていたりすることも、
あなたの大事な"経験"のひとつなのです。

今、すごくしんどいあなたも、
いつか、いつの日か、
「あの経験のおかげかもしれない」
「あの時の涙が、今につながっている」
と思える瞬間が来ることでしょう。

(3)やっぱり、人に喜んでもらえることは幸せ

ぐるんぱの表情、ページ全体の色合いに注目すると、
ページをめくるごとに華やいでいきます。

ぐるんぱは、大きな〇〇のおかげで、
子どもたちの笑顔があふれる幼稚園を作ることができました。
そんな様子の描かれた最後の1ページは
「誰かに喜んでもらえるって幸せなことだなぁ」と感動させられます。

大人になると、
誰かに喜んでもらえる場面の多くを
仕事の中で見出そうとしがちかもしれません。
でも、仕事以外の場面でも、
あなたの何気ない一言が誰かの喜びにつながっていることは
実はたくさんあるかもしれないとも思います。

あなたが生きていることが、
家族や友人、あなたを大事に思う人の喜びになり、
その喜びを原動力にしてその人も生きている。
そしてその人が生きている喜びを原動力に、
また生かされている人がいる。そしてその人の・・・
と、私たちの喜びはゆっくりと循環しているのではないかと思うのです。

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『臨床心理士と可愛い絵本』いかがでしたか?
第一回目 お付き合いいただき ありがとうございます。

同じ絵本であっても、感じ方は多様です。
同じ人が同じ絵本を読んでも、
その時の体調や気分によって
感じ方や気になるところが変わることもあります。

あなたが【ぐるんぱのようちえん】を読んだ時
どう感じ、どんなことを考え、
どんなメッセージを受けとったか、
きかせていただけましたら嬉しく思います♪

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