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句を読む―まだ、たどり着かない

林檎剥くときは優しい顔をする

佐藤文香 編『天の川銀河発電所』より
「相沢文子」

この句は「林檎」じゃないと成り立たないなぁ、と思う。みかんやバナナ、あけびなどではだめだ。「優しい顔」にならない(異論は認めます)。
幼いころ風邪をひいて、母に作ってもらったすりりんごの記憶があるからだろう。やさしく、ほのかな甘酸っぱさ。
あと「林檎を剥く」というのは結構手間のかかる行為でもある。それこそみかんやバナナはすぐに剝けるけど、りんごは果物ナイフをもって、皮だけをできるだけ薄く剝かなければならない。
私はこれがとても下手だ。あまりうまくできずに皮ごと食べるときもある(それも美味しい)。あぁ、私はまだ優しい顔にたどり着かないなぁ。

(夏目漱石の『坊ちゃん』は、相沢さんが所属している「ホトトギス」で連載されていたそう。明治39年ごろのこと。)

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現代俳句・短歌を好む私が、ひとつひとつの作品を読んで思ったことをぽつぽつお話ししています。
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