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句を読む―決意を乗せて

夏霧の馬車はかなしみを乗せない

小川楓子『ことり』

夏の朝、霧が立ち込めるなかを馬車がことことと進む。

馬車だし、「とっとことっとこ」くらい軽快なリズムで表してもいいのかもしれない。けれど、この句はしっとりしている。
霧の水分量のせいだろうか?

「かなしみを乗せない」は決意のことば。
私は悲しまない、悲しまないと決めたから…「かなしみを乗せない」というワードがまとう、圧倒的な悲しさ。言葉って不思議だな、と思う。

ひとつの決意を乗せて、馬車はことこと進む。

(「霧」は単体では秋の季語なのだそうだ。山地や海辺、高原では夏に霧が立つことがある)

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現代俳句・短歌を好む私が、ひとつひとつの作品を読んで思ったことをぽつぽつお話ししています。
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