『マイノリティデザイン』の感想文
澤田智洋/ライツ社
「弱さを生かせる社会をつくろう」がコンセプト。
次のような方にぜひ読んでいただきたい本です。
・誰のために働いているのかわからない
・自分の仕事は世の中の役に立っているのか?と不安になる
・今の社会に閉塞感を感じる
以下、私の感想です。
「誰のため」に働くのか?
作者の澤田さんは息子さんが視覚障害であることをきっかけに、障害者でも楽しめる社会を作るようになりました。
また、運動が苦手な自分のために「ゆるスポーツ」なるものを作りました。
あなたは今、誰のために仕事をしていますか?
そして、私は誰のために仕事をしているのだろうか?
コピーライターの澤田さんは、マーケティングの世界についてこう書いています。
”F1層(トレンドに敏感な20~34歳の女性)とかM3層(50代以上は子育てが一段落して購買意欲も高い)…なんて、そんな人実在するんでしょうか”
たしかに年齢や性別でなんとなく平均的な人物像を想像することはできても、本当にそんな「平均的な人」がいるのかどうかと言われると難しい気がしますよね。
先日、テレビの街頭インタビューで20代の女性が「ブラックフライデーは、自分へのご褒美に20万円のバッグを買う」と言っていました。
この年代の女性ならそうなのかな、というイメージ。
でも、実際私のまわりでブラックフライデーだから何か買おうという人は聞いたことがありません。
ブランドのバッグを持っている人もごく少数です。
もちろん私はブランドものを否定しているわけではありません。
このような偏ったニュースやイメージだけでニーズを決めつけて、宣伝の対象にしたりモノを作るのは何か違うんじゃないか、と思ったのです。
自分が働いた先に、喜んでいる人が本当にいるのかは、マスコミや通説ではわからない。
もし喜んでいる人がいたとしても、それが実感として湧かないと仕事の意欲も湧きません。
日本の正社員は世界26ヵ国でもっとも「やりがいを感じていない」という調査結果があります。
これはとっても悲しいことですが、これはある意味「日本ののびしろ」と捉えることができます。
みんながもっとやりがいを感じて働けば、良い仕事に繋がるし、自分も幸せを感じることができて、精神的にももっと豊かな国になれるのではないでしょうか。
この本を読んで、以前テレビで紹介されていたある女性を思い出したので少し書かせていただきます。
その女性は伝統工芸品を作っているのですが、工場での力仕事が多く、決して楽な環境とは言えません。
この方はその仕事が好きでやっているのですが、自分が作ったものがお客様の手に渡るところを見たことがありませんでした。
ある時、デパートの特設会場でその商品が販売されることになり、その女性は初めてその現場に着いていくことになりました。
お客様と話をするのは初めて。「素敵ですね」と言って自分の作品が買われていく様子を見たその女性は、強いやりがいを感じました。
次の日からは、また過酷な工場で商品を作る日々に戻ったわけですが、女性は一昨日までとはまったく違う気持ちで仕事に向かっていました。仕事の内容は同じでも彼女の幸福感は増しています。
お客様も、実際に作っている人と話をすることでより商品に対する思い入れは強まったはずです。
まさにWin-winの関係。
これは農業に関しても広まればいいなぁと思っています。
生産者の消費者を結ぶ。
フードロスにも繋がって環境にも良い仕組みになるはずです。
どの「情熱」で働くのか?
「誰のために」の他にも、「情熱を持てる分野か」というのも働く動機の一つになります。
澤田さんはユナイテッドアローズの方と一緒に障害者のための服を作ったのですが、その時の担当者の方の言葉に情熱があふれていました。
「当事者から要望を聞けたっていうのは燃えますよね、やっぱり」
「服を作るプロとして『おもしろいじゃん!』という気持ちがあった」
この方は心底服が大好きなんだろうなと伝わってきますよね。そして絶対にいい仕事をするんだろうなというのがわかります。
自分が情熱を注げる分野で世の中に貢献するというのも大切なことですね。
この社会に何を求めるのか?
誰もが楽しめる「ゆるスポーツ」、高知県のPRのために結成された「爺-POP」などの話を読んでいると、社会はもっとユーモアや寛容さがあってもいいんだな、と思いました。
”遊びがないと、忙しい現代人はなかなか振り向いてくれない”
と書かれていますが、これはつまり「遊びに餓えている」とも言えるのではないでしょうか?
大人だって、子どものように、はしゃいだり、一見意味のないようなことに熱中したり、大爆笑したりしていい。なのになぜかそれを恥ずかしがったりバカにしたりする風潮がある気がします。
私は会社の飲み会で幹事をした時に、席決めのくじをクイズ形式にしたことがあります。ひいたくじにクイズが書かれていて、その答えが書いてある席を探して座る、というもの。
クイズは仕事に関する内容で、他の人と相談したらわかるようなレベルにしました。
すると自然とコミュニケーションが生まれ、飲み会が始まる前から賑やかな雰囲気に包まれました。
これはほんとに些細な例ですが、会社の人と一緒にクイズで盛り上がるなんてなかなかないですよね。ユーモアは大人にこそ響くものなのではないかと思います。
私は○○弱者
本の帯に「弱さを生かせる社会をつくろう」と書かれているので、私の弱さを考えてみました。
①スポーツ弱者
澤田さんと同じく、小さい頃から体育が嫌いでした。「成功/失敗」「勝ち/負け」というハードルが私には高かった。でも体を動かすのは嫌いじゃない。だから澤田さんが発明した「ゆるスポーツ」は私にぴったりだと思いました。「勝ったらうれしい。負けても楽しい」。もう最高過ぎです!
②機械弱者
スマホやパソコンが苦手。おかげでなかなかスマホを買い換えられない…。手数料を払ってでもいいから誰かやってくれないかな、と思うほど。もっと分かりやすくならないかな。
③ドライヤー弱者
髪を乾かすのがいつも億劫。私は髪がけっこう長いのですが、「じゃあ髪を切ればいいじゃないか」という意見は受け付けません。もっと楽に、もっと楽しく髪を乾かせる方法はないかなぁ。というか、乾かさなくてもいい洗い方があればもっといいなぁ。
④ライブ弱者
好きなアーティストのライブに行きたいけど、みんなで立ったり振り付けするのが苦手。私は座ってじっくり聴きたい派。そういう人用の席を用意してもらえると有難い。
私の弱さ、何かに生かせるだろうか…。
澤田智洋様へ
素敵な本をこの世に送り出してくださってありがとうございます。読みやすく(さすがコピーライターさん!)、面白くて、わくわくしながらページをめくっていました。
この本を読んでいて、一人でニヤッと笑ってしまうところがいくつもありました。それをどうしても作者本人にお伝えしたく、ここに書かせていただこうと思います(届くといいな!)。前後の文章は書いていませんので「これのどこが面白いのだろう?」と思った方は、ぜひ本をお手にとっていただけたら幸いです。
ニヤッ!ランキング
【第3位】
「いや、アイドルだから」(p125)
【第2位】
「いったいなにをやってるんだ」(p233)
【第1位】
「こんなにハンドソープの話をするつもりはなかったんですが、もう止まりません。」(p177)
たくさんの希望と笑いがあふれる1冊でした。ありがとうございました!
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