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ワイン用ブドウの台木を知る

ワイン用ブドウを栽培している畑を見渡すと様々な品種の樹が植わっています。シャルドネ、リースリング、メルロー、ピノノワール。耳にする機会の多い品種もあれば、聞きなれない品種に出くわすことも多々あります。

こうしたブドウの樹は、一方で樹1本、根の先から枝の先まで丸々1本が完全に1つの品種で構成されているわけではありません。

ワインの原料に使用されるブドウ品種はそのほとんどがヴィティス・ヴィニフェラ (Vitis vinifera) と呼ばれる品種群に属しています。このヴィティス・ヴィニフェラ種はヨーロッパブドウとも呼ばれます。

ヨーロッパブドウがあるのであればアメリカブドウやアジアブドウがあるのではないか、と思われるのではないでしょうか。あります。アメリカブドウやアジアブドウ。そして、現在栽培されているワイン用ブドウの樹は基本的にそのすべてがアメリカブドウの樹にヨーロッパブドウの樹を接ぎ木したものです。

つまり、ブドウ畑で見かけるブドウの樹は枝はヨーロッパブドウだけど根はアメリカブドウなのです。

なぜこんな面倒なことになっているのかといえば、その理由はフィロキセラという小さな虫の存在です。この豆粒よりも小さい虫によってかつて、ヨーロッパのワイン用ブドウ畑は全滅の危機に瀕しました。

その体長からは想像もできないほど大きな被害をもたらした虫に対抗するための手段として考案されたのが、アメリカブドウの樹にヨーロッパブドウの樹を接ぎ木する方法だったのです。

現在ではフィロキセラの被害を再発させないために、多くの国や地域で接ぎ木をしていないヨーロッパブドウの樹を直接植えることを法律で禁止しています。こうした経緯によりブドウの接ぎ木は一般的なものとなり、アメリカブドウの部分を台木、ヨーロッパブドウの部分を穂木と呼んでいます。

徹底解説 | フィロキセラ

台木ってなんだ?

ブドウ畑で栽培されている品種名として示されるのは、この穂木の部分に使用している品種名です。

穂木に様々な品種があるように、台木にも多くの異なる品種があります。台木の品種はワインの味というよりもブドウの生育状況、栽培面により大きな意味を持ちます。一方で台木の品種についてはあまり知られていません。

ここでは台木の品種について、品種ごとの性質をまとめていきます。

なお台木は交配の組み合わせによって複数のグループに分類されます。主なグループは以下の4つです。この記事ではもっとも頻繁に使用されている第1のグループに属する10品種と第3グループに属する6品種を取り扱います。

  1. Berlandieri x Riparia: 5 BB, SO 4, 125 AA, 5 C, 8 Bなど

  2. Berlandieri x Rupestris もしくは Riparia x Rupestris

  3. その他の組み合わせ: SORI, 1616 C など

  4. vinifera種を用いた組み合わせ

この記事はオンラインサークル「醸造家の視ているワインの世界を覗く部」でサークルメンバー向けに投稿した記事の内容の一部を再編集したものです。
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