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教養ある遊び|ブラインドテイスティングのすゝめ

ブラインドテイスティングができるお店の情報も募集中&掲載中。日々のワインライフにお役立てください。


教養ある遊び|ブラインドテイスティングのすゝめ

ワインの勉強をはじめたり、ワインを好きになって日常的にワインを飲むようになってしばらくすると、ワインを飲むことに対して少し刺激が欲しくなることはないでしょうか。自分が学んできた知識を試してみたい、積んできた経験を試してみたい、そう思うことはごく自然なことだと思います。そう思った時に、自然と挑戦してみたくなるのがブラインドテイスティングです。

ブラインドテイスティングでは、情報を伏せられたワインを飲んで、そのワインを判断します。ワイン会の余興で行われる場合もあれば、試験科目の1つとして行われる場合もありますので、実際に挑戦した経験がある人は少なくないのではないでしょうか。
このワインを使って行われる競技では、生産年、生産国や地域、使われているブドウの品種といった基本情報以外にも、アルコール度数や残糖量、総酸量などのより細かい情報を答えることを求められる場合もあれば、テイスティングコメントの正確さを求められる場合もあります。こうしたスタイルで行われるブラインドテイスティングの目的は正答することで、同時に正答率に対する優劣や順位付けがなされます。

ところでこのブラインドテイスティング、我々造り手も日常的に行っています。とはいえ、それは同じブラインドテイスティングでありながら競技のような性質を持たない、全くの別物です。我々が判断するのはワインの情報ではなく、ワインそのものです。

醸造所内で行われるブラインドテイスティングは、その多くがボトリングの前の時期に集中しています。醸造所内に存在する数種類、時には数十種類のワインを対象に行い、選別し、最良の組み合わせを検討し、混ぜ合わせ、そうして作られた新しいワインをさらにブラインドで選別していきます。造り手の手元にはそのワインに関するあらゆる情報が揃っていますが、そうした情報には基本的にはこだわりません。ただただ、そのワインが良いか悪いか、気にいるか気に入らないかだけに集中して選別をしていきます。造り手の行うブラインドテイスティングは評価のための手法というよりも、選別のための手法としての色合いが濃くなります。なにしろ造り手はタンクの1つ1つ、樽の1つ1つに強い愛着を持っています。最終的なワインの品質を決める重要な場であったとしても、その素性がわかってしまうと正しい評価ができなくなりがちです。そこで造り手自身の目を塞ぎ、情報を与えないまま冷静に評価させることで、そのワインの本来の姿を冷静に見極めさせる必要が出てきます。ブラインドテイスティングの結果が、タンクの目の前で直接試飲して感じていた結果と大きく変わることは、決して珍しくありません。

造り手にとってのブラインドテイスティングが自身の記憶や想いとワインを繋げないための手段である一方で、飲み手にとってのブラインドテイスティングは正反対の行為です。トランプの神経衰弱をワインでやっているといっても良いかもしれません。神経衰弱で勝つためには過去に捲られたカードの内容を覚えておくことが絶対に必要であるように、ブラインドテイスティングという競技で勝つためにも過去に積み上げた情報が絶対に必要です。飲んだワイン、学んだ知識を目の前のグラスに結びつけることでしか正解を引き出すことはできないからです。

トランプの神経衰弱では最大でも13種類の数字と52種類の位置情報の組み合わせで済みますが、ワインではそれを遥かに上回る量の情報の組み合わせが存在します。現実問題として、これを組み合わせとして処理するのは対象が膨大すぎて不可能です。そこで必要になるのが、検討する要素をまず絞り込む行為です。ブラインドテイスティングは感性に頼るもののように思われていることもありますが、間違いです。この競技で勝てるようになりたければ、候補となる対象を効率よく減らせる条件設定をできようになる必要があります。

例えばインターネット上で情報を検索するときにも、どういう条件で絞り込むのかはとても重要です。最近はジェネレーティブAIを利用する場合に効率的なプロンプトの構築が求められるようになってきていますが、これも同じことです。検索条件の設定にしろプロンプトの構築にしろ、求められるのは単なる知識量だけではなく、それを柔軟に処理する思考であり、ロジックです。こうした思考は教養から生まれてきます。ワインのブラインドテイスティングは、教養を求められるゲームだといえます。

ワインを趣味として楽しみながらブラインドテイスティングに挑戦し続けると、その裏では知らないままに論理思考能力が訓練されます。生成AIが台頭し、ますますロジカルシンキングの重要性がいわれる現代、ワイン遊びはそうした世情を生き抜いていくための力を鍛える、ちょうどよい機会になるかもしれません。
自分で何度も複数のワインを準備することは金銭的にも大変ですが、最近はブラインドテイスティングを手頃な価格で提供してくれるワインショップや飲食店も増えてきています。またそうした場を利用すると、自分以外にも挑戦者がいることを実感でき、よりゲームとしての色合いを強めてもくれます。

ワインを知ること、学ぶことの次には、ワインと教養を使って遊んでみるのはどうでしょうか。ブラインドテイスティングがワイン以外のどこかにあなたを連れて行ってくれるかも知れません。


ブラインドテイスティングのできるお店

掲載内容から変更が生じている場合もあります。事前に直接ご確認いただけますようお願いします。

ワインマーケット・パーティ
住所/東京都渋谷区恵比寿4-20-7 恵比寿ガーデンプレイスB1F
営業時間/11:00〜19:30
Tel/03-5424-2580
ブラインドテイスティング/毎週月曜日、火曜日

wine@EBISU
住所/東京都渋谷区恵比寿南1-4-12 3F
Tel/03-6303-3164
ブラインドテイスティング/毎週月曜日、火曜日


ブラインドテイスティングができるお店様の情報を募集中

日本全国津々浦々でウチのお店でもブラインドテイスティングやっているよ、というお店様からの情報を募集中です。お店のお名前、ご住所、ご連絡先、ブラインドテイスティングの実施日などお知らせいただければこちらの記事に掲載させていただきます。
ご希望のお店様はぜひお気軽にご連絡ください。

なお、記事執筆者からお店への掲載許可を取ることはしませんので、お店様ご自身からのご連絡をお願いします。ご連絡いただきました時点で掲載許可をいただいたものとさせていただきますことを予めご了承ください。
ご連絡はXのDMもしくはサイト上のお問い合わせフォーム (https://nagiswine.com/contact/) からお願いします。

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