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ブドウの台木がワインの品質に与える影響

1860年代、ヨーロッパ各国のワイン用ブドウ栽培は壊滅的な被害を受けました。原因はフィロキセラという、体長数mmの小さな昆虫です。

フィロキセラ禍とも呼ばれるこの大災害を経て、ブドウ畑では大きな変化が起きました。ヨーロッパ産のブドウの木を直接植えるのではなく、フィロキセラに耐性を持ったアメリカ産のブドウの木に接ぎ木するようになったのです。台木利用の始まりです。

台木はフィロキセラへの対策として考案され使われ始めましたが、その一方で台木を使うことによるワインの味や香りへの影響が常に議論されてきました。台木を使うことは、本来とは別の根を使うということ。ブドウの生長やワインの味に変化が出ても不思議ではないと考えられたのです。

台木の違いによるワインへの影響は様々な視点から検証されています。そうしたうちの1つが、ワインのpHへの影響です。

ワイン造りにおいてpHは果汁の糖度や酸量とならんで大事な指標の1つです。pHの変化はワインに様々な影響を及ぼすことがわかっています。

台木が変わると、ワインのpHも変わるのでしょうか。いくつかの検証事例をもとに見ていきます。

この記事はオンラインサークル「醸造家の視ているワインの世界を覗く部」のメンバー向け記事の一部を再編集したものです
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