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土壌とブドウ、そしてワイン

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こちらの記事は現時点ではまだ未完です。内容をより深く理解していただくため、段階的に内容を追記していきます。記事購入後に追記される内容については追加費用なくお読みいただけます

ワイン、もしくはワイン用のブドウ栽培ほど「土壌」という単語が頻繁に話題にされる農作物というものも他にはないのではないでしょうか?

なぜ、ワインにおいてこれほど「土壌」というものが重要視されているのでしょうか。
「ワインと土壌の関係はなにか」という質問をすれば多くの方が「土壌の性質がワインの味に影響を与える、その最たるものがミネラリティである」という回答を寄せてくださるのではないかと思います。
「土壌とはワインの個性そのものである」という回答もありそうです。

このような回答はもちろん間違いでありません。
実際に土壌の異なる畑のワインを飲み比べてみると同じ造りをしているはずなのにその味は千差万別です。確かにミネラル感らしきものを感じる場合もあります。ある一定の味の方向性を抽出して、この味はこのような土壌の特徴だ、という表現をすることもできなくはなさそうに思えます。

では土壌=ワインの個性という回答でこの話は終わってしまっていいのでしょうか。
実はこの関係はそれほど簡単なものではありません。複数の要素が複雑に絡み合った結果、それ全体がまるでまっすぐな一本の枝であるかのように見えるようになってしまった、そんなお話です。

このNoteではそんな太く長い枝を構成する要素を解きほぐし、相互の関係を整理していきます。
一見単純でいて実は複雑怪奇な長話に、どうぞお付き合いください。

ミネラリティは土壌の産物か

ワインで土壌といえば、まずはミネラル
そんな意識を知らず知らずのうちに植え付けてしまっていることはないでしょうか。

実際にここしばらくはワインの話をする際に「ミネラル」とか「ミネラル感」という単語を使わず、聞かずに会話を完結することの方が難しいのではないかと思うくらい、頻繁に耳にする単語です。そんな会話の中でも特によく使われるのが、ブドウは育った畑の土壌からそこに含まれるミネラルを吸収しており、そうして吸収されたミネラルがブドウの実の中に蓄積されるからこのような味になるのだ、というコンテクストです。

このコンテクストの中で土壌という「単語」と「ミネラル」という単語が知らず知らずのうちに強く結びつけられてしまい、本来的な「土壌」というものの理解を困難にしているように感じられます。

筆者自身はこの「ミネラル」という単語が一体どういう経緯で、いつからこれほど頻繁にワイン業界で使われるようになったのかは知りません。その一方で、この単語が非常に大きな揺らぎを含んだ表現であり、これほど多くの人にこれほど頻繁に使われていながら未だに明確な定義づけが行われていないものであることは知っています。

筆者がワインの勉強をしていたドイツのガイゼンハイム大学ではテイスティングを学ぶ講義の際に「ミネラル」という単語を使うことは避けるように指導されました。固定された定義がないため、万人共通の評価軸にならないからです。

またこの単語は定期的にいわゆるワイン業界内の識者によっても話題にされています。
最近では世界でも最も著名なワインジャーナリストの一人であるであろうジャンシス・ロビンソン女史が彼女の記事の中でこの話題に触れています。

2020年1月25日に公開されたその記事、「続・ミネラリティ」ではワインに感じられるとされるミネラル感について以下のようなことが書かれています。

他の多くのワイン用語と同様、この言葉はほとんど正確な定義なしに特に今世紀に入って使われている。だが我々ワインのプロは少なくともそれが特定のものでないと言う点では合意する傾向にある。その性質はフルーティな、野菜っぽい、オークが効いた、花のような、スパイシーな、といった表現とは一切関係がない
この性質はしばしばテクスチャに関連付けられ、一定のざらつきや、我々のテイスティング・チームの一人、アリスター・クーパーMWが言及するように「噛み応えのある(bitey)」ような感覚と結び付けられる。実際Hallgarten Novumがワインを提供する相手にミネラリティの定義について説明する際には、その若手の一人でアルゼンチン在住のフアン・パブロ・ミケリーニ(Juan Pablo Michelini)はアロマではなくテクスチャだと断言した
ミネラリティの価値は科学的な用語としてではなく、比喩として、である。我々はワインに文字通りミネラルが入っていると思っているわけではない。石や、岩、金属、そしてミネラルを想起させる詩的な特徴について言及しているだけだ


この記事で注目しておきたい点が、「ミネラル感」については様々な議論があるものの、誰一人としてそれが実際にワインに含まれる、「ミネラル」に分類される物質に直接由来しているとは言っていない、ということです。上記引用の通り、ミネラル感とは詩的表現の一つである、という発言までなされています。

つまり少なくともこの記事で取り上げられた識者たちの中では、冒頭にあげたよく聞くコンテクストである、「ブドウが成長過程において土壌から吸収した結果である」というような認識は一切されていないということです。
研究の世界でも現時点においてはワインの味と土壌中のミネラルに直接的な相関関係はないとする見解が定説とされています。

土壌中に含まれるミネラルとワインの中に感じる「ミネラル感」は全くの別物なのです。

土壌とはなんなのか

土壌=ミネラル、というワイン業界に蔓延する定説を見直したところから、今回の本題に入っていきます。ここからのお話は複雑です。
土壌というものがどのような方法でブドウやワインに関わっていくのか、土壌の持つ性質や機能別に解説を出来るだけ分かりやすいように行っていきます。しかし時としてこれらは順番が入れ替わったり、話が進んでからまた戻ったりします。専門用語も出てきます。
とはいっても構える必要はありません。分からないことや理解しにくいことは一度読み流してください。大事なことは基本をきちんと押さえておくことです。

以前の記事と内容が重複することもありますが、確認・復習のためと思ってお付き合いください。

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土壌とブドウ、そしてワイン

Nagi@ドイツでワイン醸造家

2,640円

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ガイゼンハイム大卒/エノログ/醸造用葡萄の栽培醸造エンジニア/元ワイン無関係の会社員/現ドイツのワイナリー勤務とワイン醸造やブドウ栽培関連フリーランスの二足の草鞋。お仕事のご依頼はいつでも大歓迎。メインはhttps://nagiswine.com/
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