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開会式の感想

開会式見ました。
競技には興味がないので、まったく見てませんし結果もよくわからないですが、とりあえず東京五輪開会式についてはフルで見たんで感想書きます。

ルームランナーで一人走るアスリートからのコンテンポラリーダンスなど、コンセプトとしては「コロナ渦とスポーツ」がテーマなのは明白で。
この1年で当初の演出からスタッフ入れ替えに伴い内容をガラッと変えたことがよくわかります。
その後も延々と地味な演目が続き、途中ドローンやコミカルなショーもあったものの、全体的には厳戒下の演出という印象でした。

内部で何があったのかはわかりません。
週刊誌報道による当初のクリエイター陣降板トラブルの内幕にはこの際目をつぶります。
またクリエイターの過去の放言、いじめ自慢だの差別発言だのにはあえて言及しません。
出てきたものの感想だけを書きますね。

私の率直な最初の感想は、「置きに行ったな」というもの。
ハッキリ言って、こうした内容の出し物って批判しにくいんですよ。
「コロナや震災を」「創作ダンスで表現しました」とか言われると、ああそうですかとしか言いようがない。
まるで派手でわかりやすい内容の物を求める客の側がわかってないような。
よく言えば優等生的、悪く言えば「小学生の読書感想文」みたいな悪目立ちしないタイプの創作。
熱狂させるよりも、ひたすら怒られないように、首をすくめながらみなの顔色をうかがいながら無難に何かを取り繕ったという、そういう印象の開会式でした。

まあ、仕方のない部分もあるんですよ。
こんなコロナ渦の時期に派手なことやれば「何やってんだ」と言われかねないし。

派手で華やかなリオ閉会式の演出のようなことはやめて、武骨に、真面目に今伝えるべきテーマだけに一点集中してやろう。
そのためならどんなに「つまらない」と言われても構わない、ぐらいの気概だったのかもしれません。
せいいっぱい擁護するとすれば。

ただ中学生ぐらいの時に、体育祭や文化祭の運営に携わったことがある方ならわかるかもしれませんが。
最初はやる気も才能もある子が一人で演出プランを書き上げて、みんなそれに共感して「それで行こう、面白い」となってたところに。
先生から理不尽な物言いがついて、結局才能のある子が降板させられて、無難な、当たり障りのない演出プランに変更させられる過程のような。
バッハの長い話も含めて、なんか中学時代の体育祭を思い出す光景でした。

ただまあ、これが日本の式典なんですよ。
長野五輪を覚えてる私らジジイからしたら、本来の日本らしさが帰ってきたな、と。
日常はただ平凡でつまらなく、みなでそれを批判しつつぼんやりと一体感を得るという。
昭和の日本の風景です。

ここ10年ほどのクールジャパンだのなんだのという風潮がおかしかったんです。
リオの閉会式演出で一時的に確変したからって、若い人は調子乗りすぎ。日本に期待しすぎ。
若者よ、これが日本だ。

さて、ネットの反応を見て思ったこと。

今回選手入場にゲームの音楽が使われてました。
そして吉本のピン芸人なだぎ武を始めとして、数人のお笑い芸人が出演してました。

ゲーム音楽に関しては大反響で「ついにゲームの音楽が世界的式典に使われた。誇らしい」てな調子でしたが。
芸人に関しては無反応。
「日本の芸人が世界の晴れ舞台に進出したで。どや」的な感想は見られませんでした。

普通に考えたらなだぎ武達の方が本人のキャリアを考えても大抜擢なはずです。
なだぎ武や劇団ひとりがそれなりに売れている人たちであることはわかります。
しかし伝統芸能の人ではなくテレビ的なお笑い芸人、しかもたけしやさんま、ダウンタウンにサンドにオードリーを差し置いての出演ですよ。
本来ならもっと反響があってもいいはず。

結局この国にはメインカルチャーもサブカルチャーも存在せず。
あるのは「テレビ、スポーツ世代」と「ネット、ゲーム世代」の相互無理解による冷戦なんだな、と。

お笑い芸人はテレビの世界の住人であるから、テレビ世代が好むスポーツの祭典に誰が出ても不思議じゃない。
しかしゲームは若者の好むものだから、スポーツの祭典に出てきたらビックリする。
たとえそれがどんなに世界を熱狂させたタイトルであろうとも。
みたいな話です。

ただまあ、五輪に限らずここ最近の表現物って「多様性と調和」なんて大層な題目を掲げるんだから。
人種だの国籍だのLBGTだのといった、政治的で批判しにくいものだけを俎上にあげるんじゃなく。
もっと身近な、テレビ世代とネット世代の文化的調和もこれからの創作物のテーマにしていいんじゃないかな。

なんかこう、80年代以降に勃興した文化に対してお墨付きを与えることに、及び腰になりすぎですよ、旧来文化は。
テレビなどの旧来メディアが若い文化を認めてくれないから、ネットに自分たちの楽園を求めて移住した、故にネットは老人からしたら理解できないものになった。
若者たちの現状がよくわからないから、政治もうまいこと対応できない。
そういう世代の分断が日本の諸問題を生んでる気がします。
もっとざっくばらんにいろんなものを認めてあげればいいんですよ。

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