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民藝性と哲学における身体性について

身体性と民藝性の関係性は、メルロ=ポンティの世界内存在の概念において重要な要素となっています。人間が世界と関わり、自己を表現するためには、身体性と民藝性が欠かせません。また、身体性と民藝性は相互補完的な関係にあり、人間が世界を知覚し、表現するために必要な要素であると言えます。さらに、身体性と民藝性は可逆的な関係にあることから、人間が自己と世界との関係を深めるために、身体性と民藝性の両方を大切にすることが求められます。

こうした身体性と民藝性の関係性を深く理解することで、人間が自己と世界との関係をより深め、より豊かな人生を送ることができるかもしれません。では、身体性と民藝性の関係性について、さらに詳しく探っていきましょう。


1. メルロ=ポンティの世界内存在の概念における身体性と民藝性の関係性

メルロ=ポンティの思想において、身体性は人間存在において重要な役割を担っています。身体を通じて世界を知覚することで、人間は世界との関係性を形成することができます。メルロ=ポンティは、人間の身体が世界に適応するために調整されていると考えており、そのためには身体による知覚が必要不可欠だとしています。身体性は、人間が自己と世界をつなぐ架け橋の役割を果たしています。

一方、民藝性は、材料や道具を通じて自己を表現することができるとされます。民藝性は、手仕事や工芸などの技術的な能力と創造性を組み合わせたものであり、世界との関わりを深めるための手段の一つと言えます。メルロ=ポンティは、民藝性によって人間が世界との関係性を深めることができると考えており、民藝性を通じて世界内存在をより意識的に体験できるようになると主張しています。

例えば、身体性と民藝性が相互に関わり合う様子を、メルロ=ポンティは以下のように説明しています。

「彫刻家が彫刻を創る時、手に持ったノミを通じて、彫刻家の身体が材料に入り込み、材料もまた彫刻家の身体に入り込むことで、彫刻という作品が生まれる」というように、身体性と民藝性が相互に関わり合うことで、より深い世界内存在が可能になるのです。」

参考文献:

Merleau-Ponty, M. (1962). Phenomenology of Perception (C. Smith, Trans.). Routledge & Kegan Paul.

2.身体性と民藝性の相互補完性

身体性と民藝性は、相互に補完しあうことが指摘されています。身体性には、身体を介して直接的に世界を知覚する能力があります。一方、民藝性には、手に取ることで材料や道具を通じて自己と世界との関係を表現する能力があります。このように、身体性は外界からの情報を受け取り、民藝性は内から出る情報を発信するという役割分担が生まれます。

メルロ=ポンティも身体性と表現性の関係について、「身体性の本質は、表現性である」と述べています。彼は、身体が表現の源であると考え、表現は身体的な直観によって支えられると主張しています。また、身体性と言語性の関係についても言及し、「言語は、身体的な存在を基盤として成立するものである」と述べています。つまり、身体性と民藝性は、人間が自己を表現し、世界と関わり合うために必要な要素であり、相互に補完しあうことが重要であると言えます。

例えば、民藝においては、身体的な技術や動作が作品の完成度に大きく影響を与えます。また、身体性を用いた感覚的な制御が、作品の完成度や表現力につながるとも言われています。一方、身体性によって直感的に感じたことを、民藝的な技法を使って表現することができます。このように、身体性と民藝性は相互に依存し、補完しあっていると言えます。

3.身体性と民藝性の可逆性

メルロ=ポンティの身体性の理論において、身体は世界を知覚するための手段であり、自己の表現のためには身体が必要であると主張されています。しかし、身体だけでなく、材料や道具を通じて世界を知覚することもできます。このような民藝的な活動は、身体と世界との関係を拡張し、世界内存在を豊かにするための手段となることができます。

例えば、民藝家の田口左膳は、「物と自分との関係を修めながら作ると、一枚板であれがま口であれ、つくるのが楽しくてしょうがない。」と語りました。このように、田口の民藝的な活動は、身体を通じた自己表現としての喜びと、材料や道具を通じた世界との関わり合いとしての喜びをもたらすことができます。

また、身体と民藝性は相互補完的な関係にあると考えることもできます。身体を通じて世界を知覚することで、自己の表現をより正確かつ的確に行うことができます。一方、民藝的な活動は、材料や道具を通じて自己の表現をより豊かなものにし、身体を通じた世界の知覚を拡張することができます。これらの要素は、相互に補完し合っており、世界との接点としての人間の存在を豊かにすることができます。

このように、身体性と民藝性は、相互に可逆的な関係にあると考えることができます。身体性と民藝性は、世界との関わり合いを拡張するための手段として、必要不可欠な要素であると同時に、人間の世界内存在を形成するための重要な要素であると言えます。

4.まとめ

メルロ=ポンティの世界内存在における身体性と民藝性の関係性、相互補完性、可逆性について考えてきました。身体性は身体を通じて世界を知覚することができ、民藝性は材料や道具を通じて世界と関わり、自己を表現することができます。また、身体性と民藝性は相互に補完しあっており、人間が自己を表現し、世界と関わり合うために必要な要素であると考えることができます。更に、身体性と民藝性は、相互に可逆的な関係にあることが示されました。つまり、身体性を通じて世界を知覚することで、人は自分自身を含めた世界全体を把握することができ、民藝性によって自己を表現することで、世界全体を表現することができるのです

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