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新しい生活の始まり〜離島で暮らす〜

2週間前、初めて買ったスーツケースをガラガラさせて、この島に上陸した。

引っ越し代をなるべく安く済ませるために、リュックを背負い、トートバックを持ち、スーツケースにビニール傘をぶっ刺して、さらに100均の大きめエコバックをぶら下げるという見た目、夜逃げ感満載の出立ちで。

(何も、何も、ないじゃないか)

恋人は仕事の都合で上陸早々別行動となり、私は何もない見知らぬ土地を一人で歩くことになった。
シーズンオフだし、コロナ禍だしで人っ子ひとりいない浜を眺めて涙がこぼれた。

島暮らしは、憧れだった。
人ごみは苦手だし、忙しなく生きていたくなくて島で海を眺める生活を送りたいと、本気で、思っていた。
だから、島で暮らすことが決まって嬉しかった。

住まいは、仕事で用意されていたので、トボトボとガラガラと新居に向かった。
なんと新居に着くまで、誰とも会わなかった。
第一村人発見!!とはならず。
それがまた寂しさを増長させた。

新居に着いたらまず虫対策をせよ!と
恋人から◯ース◯ッドを焚く仕事を任されていたので、早速取り掛かる。
2時間、海で時間を潰した。
説明書には2時間以上経ってから部屋に入るーと書かれているが
夕方の海が寒すぎて、2時間きっかりでドアを開けた。
心配になる程に煙っていて、喉が痛くなって、涙が出た。

いろんな意味の涙だった。

窓を全て開け放ち、空気を入れ替えている間に夕食の買い出しに行った。

見知らぬ土地で道に迷うこともなく、あっさりスーパーに辿り着き
とりあえずのお弁当を買って帰った。

みんなが「どこの人かしら」「見ない顔ね」と言っているような気がした。

シンとした知らない部屋で一人、恋人の帰りを待つのが怖かった。

退職日に大好きだった上司からもらった手紙を読み返して、号泣した。
(この手紙を、読んでは泣く・・・という日々を3〜4日過ごした)

家から出ると海が見える。
うるさいほどに波の音が聞こえる。
苦手だったたくさんの音から解放されて、過ごしやすい環境にきたはずなのに
なかなか心は落ち着かなかった。

海を見るたび「来てしまった」と思った。
「やっと来れた」ではなく。

私がどんな気持ちでいても、時間は流れるし
ここに来たことは変わらないし。
大切な恋人は、隣にいるし。
怖いけど、不安だけど、やっていくしかないんだと。

近隣の皆さんには、とてもよくしてもらっている。
私の不安をよそに、皆さん想像以上にウェルカム態勢で迎えてくれている。
ありがたい。

「頑張ろう」と「帰りたいな」と「海はいいよなあ」のチグハグな気持ちで過ごした2週間だった。

それから、この2週間で自分の特性を思い知らされた。
自分で自分のことをわかっているつもりだったけど、
今まででは感じなかったほど、見知らぬ土地で特性が全開になった。
特性との戦いが始まった。

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