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私をここから降ろしてください

気付いたら、私は山の頂にいる。
少しでも足を踏み外したら
崖から落ちてしまいそうなギリギリのところを歩いている。

このまま空へ上って雲も星も掴んでしまう?
そんなこと出来る訳ない。
だって、私の背中には羽など生えていないのだから。

誰か、ここから降りる方法を教えてください・・・
誰か、助けて・・・

絶対に手に入らないと思っていたものが
偶然が重なって、ある日突然自分の手元に転がり込んできた。

まさに人生の絶頂期。

「人生山あり谷あり。均せば平」

母がよく口にしていた言葉通りなら
登った山はいずれ降りなくてはならない。

誰かに突き落とされる前に自分から降りる方が良い。
でも、その山が高ければ高いほど降りるのは難しい。

「おーい、なぎ!降りておいでよ。今ならまだ大丈夫だから。
怪我をする前に降りておいで」

私を呼ぶ声が聞こえる。

転げ落ちないように手をついてゆっくりと降り始めた。

「なぎ・・・」

差し出された手を取った。
家族、義両親、友だち、仕事、世間体・・・色々な手を。

そうやって面倒臭いものに、再び巻き込まれて生きて行く。

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