お隣さんのママの朝

鳥の声、遠くを走る電車の音とセットになっている朝のサウンドは、隣の家のお母さんが子どもを起こす声だ。

「○○ー!起ーきーろーっ!」
「○○○遅刻してもしらないよー!」
「おーーーいっ!💢」

今朝もかっ飛ばしている。お隣の建物とは5メートルくらいの空間があるのだけど、あんまり毎朝怒鳴っているものだからお子さん3人の名前はとっくに憶えてしまった。


6世帯が入っているウチのアパートの隣に構える、立派な一軒家。
二階建ての鉄骨造りに、がっしりとした屋根。こちら側には出窓が向いている。簡素な門扉もあって中には子ども用の自転車だとか遊び道具が置いてある。裏には小さなお庭もある。

お父さんの姿を見たことはないけれど、お母さんとは挨拶くらいはしたことがある。声のイメージと違わず、染めた髪をひっ詰めてビーサンで近所をうろうろする「ヤンママ」という感じのお母さんだった。子どもたちは小学校から中学校くらいの女の子2人、男の子1人だ。


朝5時には(たぶん)お母さんの起きるアラームの音がする。ピロピロピロ、ピッピッピッ……と繰り返し、ときには20分ほども鳴りつづけることもある。

きっと5時台には洗濯をしたり朝ごはんをつくったり、子どもたちが起きてくる前の家事を片づけているんだろう。そして、6時を過ぎたら子どもたちを起こしに行く。

今は6時25分。お母さんの声は10分くらい前には止んでいる。子どもたちも準備を始めたのだろう。何時に家を出ているのか知らないけれど、地元の学校に通っているのならけっこう早起きなんじゃないかと思う。


私が引っ越してきたばかりのとき、朝の怒鳴り声を聞いて少しドキッとした。お母さんの声があまりにも強かったから、よく世間をざわざわさせる虐待事件のことが頭をよぎった。

けれどよく聞くと「起きろー!」「ご飯だよーー!」というようなものだったのでほっとした。怒鳴り方はともかく、きちんと学校に行って、ご飯を食べているということがむしろ筒抜けの家庭だった

世の中のお母さんたち、ほんとうに毎日お疲れ様です。

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